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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

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2-43.屋敷に突入

 貴族が住むエリアに入ると、子爵の家はあっさりと判明した。


 街の兵士が既に子爵邸に到着しており、子爵の私兵と睨み合いをしていた。兵士は数人で、屋敷の門の前にいる。中に入れろ、武装を解けと呼びかけているが、人数が少ないから強行突破には踏み切れないでいるらしい。

 なにしろ門の向こう側にいる子爵の私兵は、十人もいるわけだから。みんな槍を構えて、治安管理部隊の動きに目を光らせている。

 おそらくは屋敷の中にも、それなりの数がいるのだろう。そこに攻め込むには人が少なすぎる。


 事態がもう少し上に知らされて大事件になれば、増援は来るだろうけどね。


「なあヨナ。シャルロットたちを見つけた」

「え? どこ?」

「あそこ。三階の窓際」

「見えない」


 屋敷の敷地を囲うように木が植えられていて、葉も生い茂っているから、外から中の様子を見ることはできない。けれどキアは木の上にスルスルと登っていった。

 みんな門での押し問答に目が行ってるから、屋敷の人間ですらキアに気づく様子もない。


「カルラもいるな。窓際でカーテンをいじくってる」

「……なんで?」

「アタシに訊くなよ。けど焦ってるように見えるな」

「じゃあ急いで助けないと」

「おう。じゃ、屋敷に入るか」

「そうね。正面から堂々と」

「でも、敵の数が多いですよ」

「なんとかなるでしょ」


 ゾーラが乗り気なのは、子爵に侮辱された恨みからか。杖を振りながら睨み合う兵士たちの方へ行く。


「こんばんは。お仕事ご苦労さま。ちょっと入らせてもらうわねー。あたしたちは公爵家の使い。公爵家のお嬢さんが危ないって時に、呑気に街の対処を待ってられないのよ」


 そう言いながら、視線は門の向こうの子爵の兵士に向いていた。


 彼らは睨み合いに夢中で、自分の足元を見ていなかった、闇のように真っ黒な蔓がいつの間にか生えていて足に絡みついていると知ったのは、話しかけられた直後。


「ヨナくん。この門を破って」

「わかった」


 門には錠がしっかりと掛けられていた。これを串で切り裂く。

 鉄製のそれはあっさりと切り裂かれた。


「もふもふ! 行くわよ!」


 次いで、荷台を切り離したもふもふと、それに乗ったアンリがやってきた。大きな馬に兵士たちは戸惑った様子を見せる。


 もふもふが門を蹴れば、勢いよく開いた。兵士たちにぶつかりそうになり、彼らは逃げようとした。しかし足には闇の蔓。

 鉄柵の様な作りの門に当たって倒れる者が何人かいた。足が固定されているから、その場から動けず、門がぶつかって完全には開かない。

 侵入には問題ない。


「このっ!? 何者だ!?」


 無事だった兵士が槍を突きつけてきた。とはいえ、動けない彼らの槍の穂先を見極めて回避するなんて、簡単なこと。

 槍に向けて串を振れば、刃が落ちて単なる棒になった。


 他の兵士の槍も回避する。相手が動けない以上、接近してしまえば取り回しの悪い槍は不便だ。恐れず踏み込んだ。

 兵士の懐に潜って槍の柄を断ち切り、刃がある方が落ちれば蹴飛ばして遠くにやる。別の兵士が横に薙ぐように振ったから、しゃがんで回避。上に串を振れば、刃先が遠心力で飛んでいった。

 すかさず、その兵士に向かって駆け出し、体当たり。衝撃で彼は倒れてしまう。


「こいつ! ふざけるな!」

「僕は大真面目だよ」

「がはっ!?」


 押し倒されながらも悪態をついた兵士の顔面を殴って黙らせる。


 別の兵士がふたり、同時に槍でついてきた。彼らもやはり動けないから、距離があった僕に対して的確な攻撃が出来たとは言えない。容易に回避して、彼らの方に一歩近づいた。


「く、来るな! 化け物め!」

「ひどいな」


 槍をめちゃくちゃに振って接近を拒む彼ら。こちらは短い串しか持ってないから、普通にやれば勝てない。

 でも、動きを見極めて串を振れば、槍の穂先だけが綺麗に落ちた。


「え……」

「がおー!」


 兵士たちが呆気にとられている内に、僕は駆け出してふたりを殴り倒した。

 他に、立っている兵士の姿は無かった。他の兵もみんなが倒してくれたらしい。


「さすがですヨナ様! すごい動きでしたね!」

「そうかな」

「ええ。よく、あんな涼しい顔で槍を避けられるわねー。見てるこっちは怖かったんだけど!」

「ゾーラが足止めしてくれてたからだよ。それに、僕に武術を教えたのは誰だと思う? あのブロン・ガリエル公爵だよ?」

「その公爵の凄さを、アタシらよくわかってないんだよ」

「王族の剣術指導役だから、すごいのはわかるけどねー」

「そもそも王族で、ここまで武術に力を入れてるのもどうかと思うけど。今の動き、正直あたしも見てて冷や冷やしたというか」

「怯えなくても、僕は完全に見切ってたから。師匠の教えのおかげ」

「王族という立場でも研鑽を欠かさないのは、さすがヨナ様です!」

「ティナの全肯定ぶりも、アタシにはわからない。いや、そんなこと話してる場合じゃないな」


 兵士は門の前だけではなく、建物のそばにもいた。異変を見た彼らが剣を抜いてこっちに駆け寄ってくる。


「ちょうどシャルロットたちがいる部屋の真下だな」

「なるほど、見張りか。ヨナ、あれは倒せるか?」

「倒せるけど、僕をなんだと思ってるの?」

「引きつけといてくれ。アタシは先にシャルロットたちの所に行くから!」

「わかった」


 キアに言われて前に出る。木の串は捨てて自分の剣を抜いた。敵が槍ではなく剣だと、こっちの方が安全だ。相手の武器を切り裂いた時に刃がこっちに飛んでくるか落ちてくるかする危険があるから。

 こういうのは使い分けなきゃね。

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