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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

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2-41.子爵の屋敷

 屋敷が見えてきた。大都市だから、それを統治する貴族の数も多い。そんな彼らの邸宅が並ぶ一角に、ひときわ大きな屋敷があった。これが子爵の家。


 街の主要産業である港の管理をしているのだから、エイリスは城塞都市コリングの支配者である城主の次に重要な人物と言っていい。城主はその名の通り、街の中心にある城に住んでいるから、屋敷に住んでいる貴族の中では一番偉いし、それだけ屋敷も立派だ。

 しかも屋敷は真新しい。子爵家は昔からこの権力を持っていたわけではない。港の管理をするようになって金が稼げた頃に、屋敷を新築したのだろうな。


 重厚な門が開けられて中に招き入れられる。大きな家だけあって、働いている使用人の数も多い。それから雇っている私兵の数も。


「カルラ……」

「ご安心、ください」


 身を寄り添わせて不安げな表情を見せるシャルロットに、優しく声をかける。


 カルラ自身、自分を会話が得意な人間だとは考えていない。誰かを慰めるのも、交渉ごとも苦手だ。

 けど、やらなければならない状況なら、やる。それだけだ。


「シャルロット嬢。早速だが両家の今後のことを話し合いたい。我が執務室に来てくれるか?」

「待って。シャルロット様は、疲れている。歩き、続けた。休ませて」

「カルラ。お前の意見は聞いていない」


 エイリスはこちらをギロリと睨んで言う。カルラは邪魔な存在。いること自体が許せないのだろう。

 しかしカルラも引かない。


「これは、シャルロット様の、ご意思。それとも、子爵家は、客人にそういう扱いを、するのか?」

「はい。わたし、とても疲れています。部屋を用意してください。休みたいです」

「ふんっ」


 シャルロット本人に言われれば、聞く余地ができてしまう。気に入らないのだろうな。


「部屋へ案内しろ」


 兵士に命令した。使用人ではなく兵士に行かせるのは、非戦闘員ではカルラに制圧されるからだ。そのまま逃げられるのを恐れている。

 それが、この結婚の空虚さを端的に表していた。



 兵士三人に取り囲まれるようにして屋敷を歩き、階段を上って通されたのは、屋敷にいくつもある部屋のひとつ。調度品なんかは金がかかっている。趣味は悪いけれど。


「シャルロット様を、休ませたい。音を、立てるな」


 案内した兵士に釘を刺す。どうせ彼らは部屋の外でずっと見張っているのだろう。


 部屋の中を見る。ここは屋敷の三階。窓から外に出るのは困難だ。カーテンを外して繋ぎ合わせてロープにするのは不可能ではないだろうが、シャルロットをその方法で下ろすのは不安だ。

 それに外を見ればそこにも見張りがいる。庭園に立って、窓を監視していた。しかも、ふたりいる。


「そんなに、逃げられるのが、怖いか」

「カルラ……」

「大丈夫、です。なにが、あっても。シャルロット様を、お守りします」

「はい、頼りにしていますよ、カルラ」



――――



 大通りから屋敷まで歩いて帰って、疲れているのはエイリスも同じだった。大通りとは、つまり市民が行き交う場所。そこから屋敷がある区画まではそれなりの距離がある。

 港や大通りの喧騒から離れて、静かな環境に住むためだ。庶民がいない場所に住めるのは金持ちの特権。が、馬を壊されるとは思わなかった。


 とにかく、少し待ってからシャルロットと話さなければ。すぐに結婚をすることと、それを公爵に知らせる手紙を書かせる。


 それに、地下水路だ。あそこには見られてはいけないものが多すぎる。早急に片付けなければ。魔物はどうせ外には出ないから、放置しておけばいずれ朽ち果てると思ったのに。なぜ生きながらえて、外に音を漏らしたのだ。

 やることが多く、そして急がなければならない。なのに。


「これれ、シャルロットは手に入れはも同じでふね」


 エイナートは呑気そうに言う。頬の傷のおかげで言葉がうまく話せないのも、布を当てた顔で笑っているのも、すべてがエイリスの癪に触る。


 こんなものを跡継ぎとは認めたくない。何も知らず、シャルロットとの結婚が間近に迫っているとしか現状を認識せずに浮かれているだけ。

 シャルロットのおまけとしてカルラが付いてきたことを、喜んですらいるようだった。


 まったく。使えない子供を持ってしまった。


 元より、彼に貴族として人の上に立つ素質など無かった。


 鍛えるために冒険者をさせたが、女を侍らせるばかりで成長は見られない。むしろ身勝手な意識を増長させただけ。

 ゴブリンくらいなら倒せると思ったが、期待外れだった。たしかにサハギンがボートを襲うことは予想できなかったが、これくらい退けられないようでは先が思いやられる。


 どうしたものかと頭を悩ませていると、ノックの音がした。


 使用人が外から声をかける。良い知らせであることを願いながら入るよう言った。

 残念ながら悪い知らせだった。兵士が水路に入っていったらしい。無関係の者が入らないように、施錠した上で子爵家の兵士に守らせていたのだが、なぜか突然現れたサハギンにやられてしまったとのこと。


 兵士が地下水路に入っていく様子は既に、街の中で噂になっていた。それを買い出し中に聞きつけた使用人が報告してきたわけだ。


 終わりだ。奴らは今頃、すべてを見つけていることだろう。


 すぐさま城主の元に報告が行く。そしてエイリスは出頭の命令が下されることになる。

 弁明の機会は与えられるが、言い逃れできる状況ではない。


「母上。いかがなはれました? すぐに、治安管理部隊に抗議をするへきです。我が子爵家の権限を犯したのらから!」


 相変わらず、所々うまく話せないエイナートが、何も知らない故に無責任なことを言う。家の危機だとわかっているのか?

 打ち明けたら、彼は気を引き締めるだろうか。家を救うためになんとか策を考えるだろうか。


 いや。無理だろうな。狼狽えて、なんとかならないかと母に泣きつくだけだろう。


「はあ……屋敷の守りを固めろ。誰一人として屋敷に入れてはならない」


 使用人に指示を出す。こんなことをしても時間稼ぎにしかならない。だから切り抜ける手をすぐに打たないと。


「シャルロット嬢と話をしたい。公爵家と親密な仲になれば、城主も手を出しにくくなるはずだ」


 もちろん、あの公爵は不正を許さないだろう。根本的な解決にはならない。どうすればいい?

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