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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

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2-38.ヤバい薬物

 麻袋の容積を考えれば、残された粉末は少なすぎる。つまり、摂取した者がいる。


「疑問だったのよね。サハギンは、握っただけで人の腕や槍の柄を折るほど腕力の強い魔物じゃない。人間と同程度よ。もちろん、檻の鉄棒をひしゃげさせるのも無理。けど、ここのサハギンはやった。原因が、これ」


 立ち上がったゾーラが、床の粉末を足でトントンと叩く。


「お酒を飲んで酔っ払った人が、手がつけられないほど凶暴になって暴れること、あるでしょ? あれは、理性を吹き飛ばす作用があるからなの」


 ゾーラはさっき、薬物を酒に例えた。


「キアみたいにね」

「アタシは暴れてないだろ!?」

「でも、もっとお酒を持ってこいって言って、際限無く飲み続けた。それはがお酒の怖いところ」

「わかった。わかったから。これからは程々にするから……」

「そうしなさい。で、人によっては凶暴性を増す方向に作用する。魔族なんて元から凶暴なものだから、その性質が強化されるの。魔族の脳を破壊して、暴力行為以外何も考えられない頭にする。その瞬間の破壊に全力を出し、後先は考えない。それが、サハギンの状態」

「そんなことが……」

「もしかしたら脳だけじゃなくて、体の方も影響が出てるかもね。薬物と、珍しいスパイス。同時に摂取すれば何か未知の作用が出てくるかも。……学者としては、確認できないことを推論で話すことはできないけれど」


 地下水路にこんな物があることを推測で当てて見せたゾーラは、最後にそう締めくくった。



 エイリス・ポロソバル子爵は、地下水路に都合の悪いものを隠して私腹を肥やしていた。港の管理者の権限を悪用した密輸だ。

 しかしサハギンが脱走して、薬物とスパイスを摂取した結果、手がつけられなくなってしまう。サハギンが凶暴化したことまで、子爵は把握しているはずだ。だから封じ込めた。鉄格子に穴が空いたから、意味はなかったけど。思えばあの穴も、凶暴がしたサハギンが開けたのかも。


 地下水路を封印した際、鼈甲なんかの品々も放棄したことになる。大損と言えるだろう。だから子爵は損を取り戻すために、今も違法物品の密輸は続けているはず。


「子爵の屋敷に人を向かわせろ。本部と城主にも報告だ。子爵の重大な背任の証拠が見つかった。違法物品の取り扱い、及び管理責任の範囲に魔物を住まわせていた。さらに扉の管理を怠って魔物が水路から市街地に出る危険を放置していた。急げ」


 隊長が部下に指示を出す。これが明るみに出れば、子爵の失脚は間違いない。

 シャルロットも、あの男と結婚する話はなくなるな。



 ボートで帰ろうとする隊長たち。僕たちもそれに続こうとして。

 水路の奥から、声がするのが聞こえた。


「オオオォォォォォォ」


 閉鎖環境の中で反響した声だけれど、人間のものとは思えない。一体なんなんだ。


「……魔物かしら」

「たぶんね。行く?」

「一応、見ておきましょう」


 ここまで来たんだ。魔物退治の続きをしよう。

 水路を進みながら、ランプで行く手を照らす。


 ゾーラが、ガラス玉を再度出した。魔物をこちらにおびき寄せるために。


「オオオオオオォォォォォォ!」

「反応してるわね。声も大きくなっている」

「こっちに近づいている?」

「足音みたいなのは聞こえないな」


 ボートから横の足場に移ったキアが、地面に耳をつけて様子を伺う。この通路を走って接近する敵がいれば、たしかに足音がするはず。となれば。


「サハギンが泳いで接近している?」

「それもおかしいわ。泳いでいるなら、奴の声は聞こえない」


 たしかに。水中にいるもんね。


「それに、近づく速度が遅い。向こうからも接近してるなら、もう接触してるはず。あと、声が大きすぎる」

「つまり?」

「おい! 足音は聞こえないけど、なんかヤバそうな音は聞こえる!」


 走っては床に耳をつけてを繰り返していたキアが、焦った声をあげる。


「ヤバそうな音?」

「これが砕ける音だ!」


 と、壁を叩きながら叫ぶ。


 水路の壁は硬い石で出来ている。それが砕ける?


 たしかに、スパイスと薬物の影響でサハギンの腕力は向上している。それが壁を破壊している? それにさっきゾーラは、未知の影響によってサハギンの体自体が変化する可能性もあると推測していた。


「みなさん! 前! 前!」


 ティナの悲鳴に似た声に、前方に目を向ける。

 サハギンの顔があった。顔だけ見えて、他は見えなかった。


 つまり、狭い水路の幅いっぱいに巨大なサハギンの顔が広がっていて、手足は見えなかった。


「おい! あれなんなんだ!?」

「見ての通りよ。大きいサハギン。あの水路の向こうには、ちょっと広い空間があるのね。あのサハギンはそこにいて、持ち込んだスパイスと薬や、あとは流れ着いた魚なんかを食べて成長した。この空間から出られないほどにね」

「そんなのありえるのか!?」

「見ての通りよ。キアだって、森の中で馬鹿みたいに大きい動物の個体とか見たことあるでしょ? 偶然、栄養価の高い木の実の群生地を見つけた野生動物がそうなってしまった、みたいな」

「いやいや! ないから! でかい動物とか、あの狼が初めてだから! 木の実が成ってる所は知ってるけど!」

「そういう所の動物は、大きくなる傾向にあるのよ。あれはその極端なパターン」

「信じられねぇ……」

「スパイスに、そこまで栄養があったのかしら。あ、スパイスを海にぶちまけて、その匂いに魚が集まってきたのかしら。それを、薬物の影響で凶暴になったサハギンが際限なく食べると、ああなる……面白いわ。研究の価値がありそう」

「冷静に分析してる場合じゃねえだろ!」

「ふたりとも! 今はあいつを殺すことに集中しないと!」


 ゾーラの考えていることも興味深いけど、それどころじゃない。さっきキアが聞いたという、壁が壊れる音が僕にも聞こえた。


 パキパキと、確かに硬い建材が壊れる音だ。

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