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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

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2-37.子爵の罪

 水路の途中で、やはり檻を見つけた。サハギンが入っていたのかな。こちらは壊されたとかではなく、檻の扉が開け放たれていた。


「鍵を閉め忘れて放置したとか、開けた途端に襲われたとかかしらね」

「これが子爵の罪か」

「ええ。地下水路を保管場所として使えなくなった後も、魔物の斡旋はしてるはず。新しい保管場所がどこかは知らないわ。屋敷の中に置いておこうとする性格はしてなさそうだし、港の施設のどこかだと思うけど。男爵が死んだって知らせは子爵にも届いてるでしょうから、処分に困っているところでしょうね」

「それも罪だな。後で港を捜査させよう。それから子爵にも事情聴取をする」

「ええ。でも待って。早まった真似はしないでほしい。公爵の孫娘がいるから、彼女を人質に取るかもしれない。対応は慎重にね」

「善処はする。が、犯罪者を見過ごせはしない」

「立派な心がけね。じゃあ、子爵の罪をもうひとつ教えてあげる」

「もうひとつ……?」


 隊長は首をかしげたけど、僕も同じ気持ちだ。

 子爵が他に罪を犯した? なんだろう。


 シャルロットとの結婚話を強引に進めたり、エイナートが嫌な奴だったりするのとは別みたいだし。


「なあティナ。ゾーラって頭良すぎるよな。話についていくのがやっとだ」

「はい。魔物の檻がここにあることを予測していたみたいですし」

「アタシ、そんなこと考えもしなかった。ただゴブリンがあそこの真下に暮らしてるだけかと思ってた」

「わたしもです。それで、子爵の悪事をもうひとつ見抜いてるって。なんなんでしょう。アンリさんはわかりますか?」

「わからないわよ。わかるはずないでしょ。むしろわかっちゃうゾーラが変よ」

「アタシもそう思う」

「胸だけじゃなくて頭にも栄養が行ってるとか、ずるいですよ。巨乳なだけでも腹立たしいのに」

「そういうのじゃないと思うんだよ」

「でも、ゾーラさんだけに格好いい思いはさせません! ヨナ様もきっと予想が出来ていると思います!」

「僕に話を振らないで。僕にもさっぱりだから」


 ティナにキラキラした目を向けられても、わからないものはわからない。


 だからみんなの視線はゾーラに向く。なんとなく、尊敬の念が籠もった目だ。

 兵士たちも同様で、さすが学者先生。頭がいい。しかも顔もいいし体つきがエロい。みたいなことを小声で話している。


「な、なによ。胸は関係ないから。……とにかく続きを話すわね」


 と、ゾーラは照れた様子で咳払いをした。


 ボートはもと来た水路を戻り、まだ探索していない方向へと進んでいく。

 魔物がいなくなった地下水路は静かだ。そこにゾーラの声だけが響く。


「魔物なんて恐ろしくて需要が狭いものを使って商売していた子爵が、それだけで満足するとは思えないの。もっと違法なものを扱っていたんじゃないかしら。それを世間の好事家に売って儲けていた」

「違法なものって?」

「あそこに扉があるわね」


 確かに地下水路の壁に木製の扉がついていた。厳重に守られているとかではない、昔からそこにあったという感じの佇まい。


 ただし扉は大きく破損していて、開け締めしなくても出入りできるようになっていた。


「元は、地下水路の整備なんかに使う道具入れだったんでしょう。この地下水路にいくつもあるはずよ。そこに、今は違うものを入れているとしたら?」


 ボートから降りたゾーラが扉の中にはいる。カビ臭い空気に、みんな咳き込んでしまう。

 中の空間をランプで照らせば、そこにあったのは。


「動物の毛皮? でもこんな動物見たことない」

「海外にだけ生息する希少な獣よ。宗教的にも神聖な動物とされていて、その国では殺すことは禁じられている。もちろん毛皮を取るなんて重罪よ。……故に、欲しがる人がいる」

「この国では禁輸品、ご禁制の品だ。港で見つかれば摘発されて、運んでいた船員は重罪にかけられる」


 隊長が愕然とした口調で話しながら、他の中身を見ていく。


「カメの甲羅、鼈甲(べっこう)の装飾品。こっちは象牙か。それからサンゴを加工した装飾具……禁輸品ばかりだ。そうか、管理者の権限を使って密かに手に入れて、国内の金持ちに売りつけていたんだ」


 魔物だけではなく、それも保管する場所として地下水路を使っていたというわけか。


「持ち込んでいたのは、動物性のものだけではなさそうね」


 ゾーラはしゃがんで、床を撫でる。細かい粉のようなものが散らばっていた。


 元は、いくつもの麻袋の中に入れられていたものらしい。ちょうど小麦粉なんかを入れて運んだりするみたいに。

 もちろん、これは小麦粉なんかじゃない。しっかりと違法なものなんだろう。


「あたしも詳しくないけどね、海外の希少なスパイスや、薬物なんかも持ち込んでいるのでしょう」


 スパイスか。それはわかる。さっきティナが屋台で買った肉にも、異国のスパイスが使われていた。


「それは違法なの?」

「違法じゃないけど、儲かるから自分の所で買って売りさばいているのね。それは悪くないけど、薬物は駄目」

「薬物?」

「摂取すると、お酒なんかよりもずっと激しい酩酊状態になったり、逆に興奮したりする物質。植物の葉っぱとか種子を乾燥させて粉末にすると、そういうものができる。人を廃人にしてしまう危険があるから、国によっては違法な物質とされている」

「この国でも禁じられている薬物はある。それを扱っていたのか……」


 隊長が説明の補足をしながら、愕然とした声を上げる。

 彼の目には、ここは違法行為の巣窟に見えている。


「そうね。そして問題なのは、サハギンが薬物とスパイスを摂取してしまったこと。どういう組み合わせかは知らないけど、それが大変なことになってしまった」


 象牙やら亀の甲羅やらの装飾具は、サハギンは興味を持たなかったらしい。綺麗な品々が手つかずのまま残っていた。


 けれどスパイスと薬物が入っていたはずの麻袋は破れて、あちこちに散らばっていた。ゾーラが床を撫でたのも、粉末が撒き散らされていたからだ。

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