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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

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2-36.幽霊退治

 決して外に出ないというわけではない。檻の中には魚やサハギンのものと思われる死体がいくつもあって、ゴブリンはそれに食らいついていた。食料にしているのか。

 魔物同士が敵対することが頻繁にあるのかは知らない。でもこういう環境では食料に限りがあるから、喰らい合う関係になったらしい。


 この檻はゴブリンの家みたいなもの。サハギン自体は出入りできそうにない穴の大きさで、ゴブリンにとっての安全地帯。


 サハギンが侵入しようとしていた形跡はある。鉄の棒は出入り口以外にもあちこちがひしゃげて曲がっていた。魔物同士で争うこともあるのだろうな。


 さすがに腕力があるサハギンも、鉄を完全に曲げるのは苦労する。それでも試みている途中に、小さなゴブリンに仕留められた。


 その後ゴブリンは檻から出ては、魚やサハギンを狩っては食べる生活を送った。それも長期間。

 交配や世代交代があったのかとかは知らない。ゴブリンの寿命も知識がない。けど、幽霊屋敷がそう呼ばれてきた期間、ゴブリンはずっとここにいた。


「これが声の正体ですね」

「うん。殺そう」


 ゴブリンは既にこちらに気づいていて、警戒の目を向けていた。そして彼らの戦い方の基本である、檻の中に立てこもるという方針を取った。

 サハギン相手ならそれで勝てるだろうな。


「ゾーラ」

「ええ」


 檻の真横につけたボートからゾーラが魔法を使い、ゴブリンの足元に蔓が巻き付き、動けなくする。

 その間に僕は檻に接近。持っている棒で檻の鉄棒をスパスパと断ち切っていった。


 安全な家があっさりと崩壊していく様子に、ゴブリンたちは驚愕の表情を見せた。反撃しようにも、闇により拘束されて動けなくなっているから、なにもできない。

 抵抗できないゴブリンの首を、鉄棒と同じように断ち切り、殺していく。数匹分、一気に首を切り落とすのも難しくないし、時間はかからなかった。


「幽霊屋敷って言われて大騒ぎしてた割には、あっさりした終わり方だな」

「そうだね。これで、あの家で声が聞こえることはない。もちろん、それで全部解決ではないけれど」


 幽霊屋敷は解決。けど、それ以外の問題が大きくなりすぎた。


「こんな所に魔物の檻がある。おかしいわよねえ。隊長さんもそう思うでしょう?」

「……ああ」

「ここに出入りできるのは子爵家の人間だけ。あのエイリスって女子爵が関わっているのは間違いない。そうよね?」

「問いただす理由にはなるな。あの女、部外者が立ち入ることを避けてたのは、こういうことだったか……」


 見られたくない物がある。それがこれだ。


「これだけで済めばいいのだけどね」

「どういうことだ?」

「もう少し、この地下水路の調査をしましょう」


 そもそもゴブリンの檻が何を意味しているかも、隊長はわかっていないらしい。


 ゴブリンが入った人工物が鎮座していること自体は問題だし、子爵が意図的に置いたのなら罪になることは、理解してるようだ。

 けれど他の問題に発展しかねないことを説明しないとね。



「先日のことよ。王都の近くにあるヴェッカルという街で魔物が暴れる騒ぎが起きたの。クリビースという男爵が、密かに魔物を飼うっていう特殊な趣味を持っていてね。ご存知?」

「いいや……」


 十字に分かれていた水路で、ゴブリンがいた直進ルートとは別方向にボートを進ませる。その途中で、ゾーラは隊長に説明をしていた。


 ヴェッカルの街の出来事は、まだこの街には伝わっていないらしい。事件から日が経っていないし、貴族ならそういう噂話も流れてくるだろうけど、隊長みたいな一兵士は知らないこと。


「彼は各地から魔物を集めていたそうなの。で、あたしはふと考えたのよ。魔物を輸送するのに一番安全なルートは何かって。あ、ここで言う安全は、周りにバレる心配がないってことね」


 途中で魔物が暴れて逃げ出す危険のことではない。あの男爵は、その安全対策を怠った結果、十五年前に人食い狼を森に解き放ってしまった。


「ヴェッカルの街は内陸部にあるから、陸路があるのは仕方ない。けど、陸路は人目に付きやすいものよね。だから少しでもその時間を短くするには……途中まで海路を使って運ぶのがいいと思うのよ」

「船は身内である船員以外の目が無いからか?」

「そういうこと。で、この港で下ろした魔物を陸路でヴェッカルまで運ぶ。本当にそれをやったかは、わからないけどね」


 実際、魔物が入った檻はあった。


「それに男爵の屋敷にはサハギンも飼われていたわ。海の魔物ね。それは明確に海辺の街から運ばれてきたんだと思うわ。つまり、ここね」

「そして、子爵が管理している地下水路の中にサハギンがいた。しかも大量に」

「これは推測だけどね。ヴェッカルのクリビース男爵はここの子爵と繋がってたのよ。子爵に海路で魔物を運ばせたり、海の魔物を捕まえたりさせて、お金を払ってた。もちろん、男爵の魔物購入ルートは他にもあったと思うけど」


 今となっては詳細は誰にもわからない。男爵は死んだから。


「魔物の一時保管場所として、この地下水路を使ったんじゃないかしら。誰にも見られないし、中の魔物も外に出られない。隠し場所としては完璧ね。けど、どこかの段階でトラブルが起こって、長らく放置されることになった」


 だから中でサハギンが自由に泳ぎ回っているし、ゴブリンもその場で暮らしながら幽霊屋敷の噂を作った。


「トラブルとは?」


 隊長に尋ねられて、ゾーラが返事する。


「さあ。檻に入れたはずのサハギンが、鍵のかけ忘れで逃げたとかでしょ。それで水路の中で繁殖して、手がつけられなくなった。仕方がないから地下水路の出入り口を封印して、忘れることにした」


 世間的には使われていない地下水路だから、閉めっぱなしでも問題はない。放置して、中の魔物が勝手に死ぬまで忘れる。それがやり方としては賢いのかも。


 放置しすぎて、入口の鉄格子は錆びて壊れてしまい、サハギンは外に出られるようになってしまった。これは管理者としても失格だけど。

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