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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

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2-35.水路の中

 ゾーラがガラス玉を再び解放したから、サハギンはこの船に重点的に迫ってくる。

 僕も一体を突き殺し、急いで刺さった剣を引き抜く。


 次はすぐに来た。掴みかかってくるそれを回避して、奴の腕を剣で両断。魚の口から悲鳴が上がり、奴は沈んでいった。


「ヨナ! 隊長さんの船が!」

「こっちから向かうことはできない。アンリが援護して!」

「ええ! わかったわ!」


 ガラス玉を無視して他のボートに襲いかかるのもいた。特殊な個体なのか、このボートの周りに浮かぶ同族の死体を忌避しているのか。


 僕は既にサハギンを五体ほど倒している。キアとティナも、協力して同じくらい討ち取ったことだろう。


 また新手が来た。下からボートを突き上げるように突進してきた上で、揺れる船体の縁に手をかけて乗り込もうとしてくる奴。

 船上で転ばないようになんとか踏みとどまり、縁を掴む手を僕の方から掴み返して引っ張り上げる。そして出てきたサハギンの頭を両断した。六体目。


 サハギンの頭の途中で剣が止まってしまった。斬撃が甘かったか。船が揺れてたせいだ。


 次はすぐに来るだろう。ボートの底や縁にサハギンの体を引っ掛けて、全力で引っ張りなんとか引き抜いた。


「ねえ、これさすがに多すぎじゃないかしら!?」

「僕もそう思う!」

「どう考えてもこれ、地下水路の中にサハギンの繁殖地があったとした思えないのだけど!」

「それが、子爵の隠したかったことなのかな!?」

「わからない! そんな気はするけれどね!」


 ゾーラと話し合いながら、なんとかサハギンを撃退し続けた。斬っては蹴飛ばして、誰かが危なくなっていたら助けに行くの繰り返し。

 攻撃の波が収まった時には、兵士たちが倒したのも含めて三十体あまりのサハギンの死体が水路に浮いていた。


「とんでもない数」

「兵士にも犠牲が出てる」


 ボートに乗っていた子爵の部下は、みんな鎧を着たまま沈んでしまったらしく、姿が見えなかった。彼らの死を、エイリスはまだ知らないだろう。

 街の兵士も、数人がやられたらしい。


 それでも、市民たちに被害が出ていないだけ幸いだ。水路を埋めるほどの魔物の死体に、市民たちが見物に集まっている。


「学者先生。これはどういうことだ」

「この地下水路は危険ってこと。中にはもっとサハギンがいる可能性があるわ」

「早急に調査しないとな……おい、本部に行って野次馬をどかせろ。ここら一体を市民は立ち入り禁止にするんだ。……学者先生。あんたたちは頼りになりそうだ。公爵の客人でもある。俺たちは地下水路に入るが、ついてきてくれるか?」

「ええ。もちろん。でも鍵は?」

「……子爵が持ち帰ったか、沈んだ奴らが持ってたんだろうさ」


 水路に潜って、あるかもわからない鍵を探す時間はないな。サハギンがまだ水中にいる可能性もあり、危険すぎる。


「あの鉄格子を無理にでも破壊するしかない。どうせサハギン相手には無意味な扉だ。壊しても文句は言わせないさ」

「じゃあ、僕がやります」


 錆びてても鉄格子。壊すのは手間だ。隊長に声をかける。


 ちょうど、ボートの近くに木の棒が流れてきた。サハギンが握っただけで折れてしまった槍の残骸だ。

 拾えば、ちゃんと聖剣になることを確認。


「えいっ!」


 と、気の抜けるような掛け声と共に振れば、鉄格子はあっさり両断されて、入口から切り離された。


 何が起こったのかわからない隊長たちが驚きの声を上げた。今はもっと優先すべきことがあるから、異能の説明を求めはしなかった。

 無事なボートに乗った兵士が鉄格子を持ち上げて陸に運ぶ。その際、水面下にあった部分が見事に朽ち果てて穴が出来ているのが見えた。


「行きましょう。慎重にね」


 不用意に敵を呼び寄せる意味も薄いから、ガラス玉は再び隠して、ボートを中に入れる。先導するのはアンリが動かす僕たちのボート。その後ろに、隊長のボートが続く。他のボートは外で野次馬の解散を命じられていた。


「壁際に沿って進んでね。周りの警戒を怠らないで」


 ボートはすぐに、分岐した場所へとたどり着いた。水路の両側に人が歩ける通路が走っている。


「兵士の誰か。出口はあっちって目印をつけておいて。さて、ゴブリンがいるのは、もう少し奥ね」


 左右にも水路は続いているけれど、ボートはまっすぐ進む。


「ゾーラ。僕は通路を歩くよ。ゴブリンもここにいるはずだから」

「あ、ではわたしも!」


 というわけで、僕とティナでボートを降りる。ボートもすぐ横についているから、別行動ではないな。とはいえ、足場が揺れないのは良い。

 すぐに、ギャッギャと声が聞こえた。ちょうど幽霊屋敷の真下あたりだろうか。


 ランプを掲げると、そこにあったのは。


「檻?」

「はい。ですが微妙に壊されているというか……歪んでいます」


 その中に、ゴブリンが全部で五体いた。


 檻はそれこそ、男爵の屋敷で見たようなのと似ている。魔物を中に閉じ込めるための檻だ。ちょうど水路内の通路の幅と同じサイズの立方体。

 鉄の柵の一部が曲がっていた。経年劣化による錆もあるけれど、それだけじゃないらしい。鉄の棒がひしゃげて、ゴブリンが外に出られるようになっていた。


 けれど、そこを安住の地としているように、ゴブリンは檻の中にいた。だから、ずっと幽霊屋敷の床に声が聞こえていたのだろう。

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