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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

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2-31.子爵が隠したいこと

 エイリスがゾーラの言うことを聞く義理がないのも事実。

 隊長と子爵は、別に協力関係にあるわけじゃないってのもわかった。


 が、貴族がキレればそれはそれで問題で。


「お前たち! 中にいるカルラを引きずり出せ!」


 エイリスの命令に、彼女の配下の兵士たちは槍を構えた。その数、十数人。


 慌てて、治安管理部隊も槍を子爵の兵士に向ける。彼らは十人にも満たない数だった。


「やめろ! 大通りで戦闘するつもりか!? しかもこんな大規模な」

「元からお前は邪魔でしかなかった。我らは本気だ。お前たちを蹴散らしてでも、公爵家の人間を連れて帰る。引っ込んでいろ!」

「それを許すと思うか?」

「貴族の争いに関わらないのも、賢いやり方だぞ。偉い人間のやりとりに手を出せなかったというのは、職務を放棄する言い訳になる。それでも我らを止めるか? そのせいで部下が死傷したとして、その責任を取る方がいいか?」

「それは……」


 エイリス自身も抜剣して放った問いかけに、隊長は明らかに及び腰になっていた。


 こんな状況で子爵の兵士に襲われたら、数的不利もあって突破されるだろう。となれば次は、この幽霊屋敷に奴らが突入してくる。

 こっちはそれに勝てる? 


 さすがに無理だとアンリにもわかる。


「あなた、随分と強引ねえ。必死、とも言えるかしら。そんなにして、公爵家と話したいのかしら。カルラから公爵の本家に連絡を入れさせて、なんとか落としどころを探りたい」


 けれど、ゾーラは余裕そうだった。


「確かに大事なことよね。お金持ちの喧嘩は早く解決しないと。けどそれって、自分たちの管理する範囲内に、魔物がいるかもしれないってことより優先することなのかしら?」


 ゾーラはこっちからは背中しか見えない。けど、意地の悪い笑顔をしてるんだろうな。

 そのまま、野次馬にも聞こえるように朗々と声を上げる。


「それとも逆かしら。魔物よりも貴族同士の諍いの方に世間の注目を集めたいとか? 現に魔物退治には人手が割かれず、こうして金持ちの激突を避けるために部隊がひとつ動員されている」

「貴様……何が言いたい」

「さあね。あなたが地下水路の中に何を隠しているかは知らない。興味はあるけどね。世間の目をそこから遠ざけるために、こんなふうに派手に兵士を動員して、対立を盛り上げているのじゃないかしら?」

「事実無根だ」

「じゃあ、あたしや隊長さんと一緒に地下水路の中を調べて魔物退治をしない? あなたの息子とその部下たちじゃ失敗したみたいだから、人手は多い方がいいわよね? ああ、自分たちで解決したいって、さっき言ってたわね。よほど隠したいものがあるのねー」

「ゾーラの奴、楽しそうだな。めちゃくちゃ煽りやがる」


 隠れているキアが、ナイフを握ったまま呆れていた。


 兵士が突っ込んできたら死ぬ状況なのに。


「そういえば聞いた話によれば、地下水路にいたサハギンは人の腕を掴んで握力だけで折ったそうじゃない。サハギンは普通そんなことできない。ねえ、地下水路の中にはなにがあるの?」

「かかれ!」



 子爵が号令を放てば、彼女の兵士たちが一斉に動く。もちろんエイリスとエイナートも馬を動かして突っ込んできた。


「待て! 落ち着け! 子爵家の兵を止めろ!」


 隊長も部下たちに、止めるよう指示を出す。戦闘行為は許さないという、職務を全うする判断をしたらしい。

 かくして、同じ街に住む兵士同士が槍を交えることになった。


 ほぼ同時に、ゾーラは子爵家親子の馬を見ながら杖を振った。地面から闇の蔓が伸びて馬の足に絡まる。駆け出していた馬は大きくバランスを崩して転倒。それも味方である子爵家の兵士たちを巻き込みながら。

 エイリスもエイナートも落馬して地面に投げ出される。エイリスはなんとか受け身をとったが、エイナートは普通に倒れ込んでしまった。


 馬は大怪我をしていることだろう。足が折れたら、もう使い道はない。殺されるだけ。


 ゾーラの闇の蔓は馬の足からは消え、他の子爵家の兵士に絡みつくようになった。既に街の兵士たちとの戦闘が始まっていて、槍での叩き合いになっている。

 子爵家の兵士がゾーラの闇魔法で満足に動けない者もいることで、なんとか数的な不利を埋めようとしていた。それはいいのだけど、彼らの戦闘は本気で、このままでは死者が出そうな雰囲気。


 野次馬たちも、こちらにも危険が及ぶのではと危機感を持ち始めたのか、どよめきが起こっていて。彼らが一斉に逃げ出せば、その混乱で怪我する者も出てきそうで。


「やめなさい!」


 その時、鋭い声が辺りに響いた。兵士たちの動きが止まる。

 堂々とした声だった。子供のものだったけど。


 野次馬たちをかき分けて、シャルロットが出てきた。


「双方、武器を下ろしなさい。エイリス、お望みどおり公爵家のわたしが来ました。ブロン・ガリエルからは、両家の諍いの仲裁を任されています」


 出かけさせていたはずのシャルロットが出てきて、兵士たちの方へと向かっていった。


「シャルロット、様。どう、して……」


 今まで、沈黙して事態を見守っていたカルラが、初めて動揺した声を出した。



――――



 幽霊屋敷の近くに来た僕たちは、人だかりができているのを見た。


 なにかまずいことになっている。野次馬たちの中に身を隠しながら様子を伺うと、ゾーラは子爵と呼ばれている女を煽っているところだった。


 あれがエイリスか。公爵家との間に起こった対立を盛り上げて、優先して対処すべき魔物から目を逸らそうとしているのは、ゾーラが野次馬たちに説明していた。

 やがて戦闘が起こった。兵士同士が本気でぶつかっている。


 それを見たシャルロットが、急に飛び出して声を上げた。止める暇もなかった。

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