表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/114

2-24.船の上の戦い

 地下水路の入口のあたりにつけたボートの上から、僕は中の様子を伺う。

 エイナートたちの姿は見えない。けれど声は聞こえた。女の悲鳴と男の怒声。それから水音。


 何が起きている? 明らかに良くないことらしいけど。

 ぼんやりと、エイナートの船が見えてきた。


「離れてください」


 たぶん向こうからは、こちらの姿がよりはっきり見えているだろう。既に気づかれたかも。けれど一応は隠れておきたい。

 が、ボートの上の女が助けを求めるように手を伸ばした。同時に水面からサハギンが現れて、女を引きずり下ろした。


「あれは!?」

「おじいさん、はやくここから離脱して! 魔物がいるわ!」

「わ、わかった!」


 なんでサハギンが? 中にいた魔物はゴブリンだけじゃないのか?

 こちらの船は全員が武器を取り、辺りを警戒する。


「おい! お前ら! 助けろ! 俺を助けてくれ!」

「早く地下水路から出て!」

「動かせないんだ!」


 ボートの上でひとり大声を出すエイナート。必死で壁に手をついて押している。オールはないのか。

 船の上に死体が転がっているのも見えた。なにがあった?


 エイナートのボートが地下水路から出る。それと同時に、彼は手を引っ込めてボートの真ん中に立った。置いていた剣を構えて周りを見る。

 水路の上を漂流するボートの上で、キョロキョロと周りを見回して。


 突如として水柱が上がり、一体のサハギンがエイナートに襲いかかった。彼は勇敢にも剣を向けたけれど、腰が引けている。


 が、サハギンに殺されることはなかった。一本の矢がサハギンの脇腹に刺さったからだ。


「やった! 当たった!」


 隣でアンリが歓喜の声を上げている。王都で練習してたって聞いたけど、ちゃんと成果が出てるんだ。

 サハギンはエイナートのボートの上に力なく倒れ込む。彼は剣でサハギンの体を滅多刺しにして、なんとか息の根を止めた。


「ど、どうだ! 勝ったぞ! サハギンがなんだ! 俺は強い!」

「ちょっと!? わたしが最初に当てたんだけど!? わたしのおかげなんだけど!?」

「平民は黙ってろ! ……カルラ。またお前か」


 ボートの上のカルラを見て、エイナートは忌々しげに顔を歪めた。カルラもまた、敵を睨む。状況が許せば殺しそうな勢いだ。


「落ち着いて、カルラ。サハギンが一体だけとは限らない」

「……は、い」


 少し落ち着いた様子のカルラ。こちらのボートは水路を通って、だんだん海の方に近づいている。

 が。


「なんだ!?」


 船底に何かがぶつかったのか、ボートが大きく揺れた。


 直後、さっきと同じような水柱が、こちらのボートの側面に上がった。それもふたつ。

 水の膜が自重で水面に戻るに連れて、中のサハギンが姿を現した。


 すかさず持っていた木の棒を振る。魚の口から脳天にかけて棒が貫通し、そのまま捻れば上に切り裂かれる。

 隣で、カルラもまた剣を振り、サハギンの顔にばっさりと傷をつけた。


「こいつら、何体いるんだ?」

「わから、ない。群れ、かも……」

「警戒を怠らないで。おじいさん、船を壁際に寄せてください」

「わ、わかった!」

「ははっ! サハギンの相手はお前らに任せたぞ!」

「あ! 待て!」


 エイナートが、仲間の持っていたと思しき槍をオールの代わりにして、なんとかボートを動かして逃げようとしている。

 もちろん、代わりになるものでないから、動きはゆっくりだけど。いやそれよりも。


「鍵を閉めろ!」


 サハギンは地下水路の中で、エイナートの仲間の女を殺した。元々地下水路の中にいたのかどうかは知らないけれど、可能性はある。


 中にゴブリンは確実にいたんだ。サハギンも潜んでいたというのはありえること。

 それが鍵を開けた結果、解き放たれた可能性が高い。


 このサハギンが海から来たとしても、地下水路なんて人目につかない場所にこれから入り込み、大都市の地下を安住の地として繁殖するようなことがあれば、それはまずい。

 エイナートが何しに来たかは知らないけれど、あの鉄格子は閉じられてなければいけない。


「知るか! こんな場所にいてたまるか!」


 なのに奴は逃げることしか考えず、槍が使えないと知るとさっさと放り投げて、船尾の外に手を出してパチャパチャと水をかいて動かそうとする。

 こちらはといえば。


「ひえっ! ヨナ様! またサハギンです! こっちに来ます!」

「迎撃して!」

「は、はい! 頑張ります! サハギンでもデスピラニアでも! 何体でも来てください! ああでも! 出来れば少数でお願いします!」

「どっちなのよ!?」


 水面から顔を出した魚が、側面から生えている手を動かしながらこちらに近づいくる。しかも複数。全部サハギンだ。

 ボートが水路の壁に接したから、四方すべてを警戒する必要がなくなったことだけは良かった。


 アンリがそれらを弓で狙う。練習の成果はしっかり出ていたけれど、まだ慣れてないのも事実。当たったり当たらなかったりだ。当たっても急所を外して、近づくのを止められていない。

 それでも、機動力の下がったサハギンは敵ではない。ボートの縁を掴んだサハギンの手に枝を振り下ろす。腕を切断すれば、魚のくせに悲鳴を上げてから、サハギンが逃げていった。


 ティナも怯えているだけではなく、ちゃんと剣を振って迎撃している。


 サハギンは今度は、数に任せて一気に攻め込もうとした。僕は枝に力を込めた。

 魔物を怯ませる力。サハギンの動きが一瞬だけ止まる。そこに、すかさず攻撃をかけた。枝を振って切り裂く。矢が貫き、ナイフが刺さる。


 何体も殺せば、襲撃は落ち着いた。討ち取ったサハギンは、船の周りに力なく浮かんでいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ