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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

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2-20.公爵代理

 コリングの街から届いた手紙をゾーラたちが読んだのは、翌日の朝のことだった。

 キアはまた前日の夕飯で出された酒を飲みすぎて、二日酔いになっていた。ゾーラがなんとか止めさせたから、昨日のよりはマシだったけど。


「うえー。気持ち悪い。もう酒なんか飲まねぇ」

「昨日も同じこと言ってたわ」

「今度の今度こそ、もう飲まねぇ」

「酒飲みはみんなそう言って、同じこと繰り返すのよ。それよりもはい、ヨナくんから手紙」

「代わりに読んでくれ。アタシ、字が読めねぇんだよ」

「今度教えてあげるわ。……コリングの街に魔物がいる可能性が高いから、手を貸してくれ、ですって」

「魔物!? なんでそんな」

「港町だから、海からの魔物が来ることは多いわ。今回は地下水路にゴブリンがいるかもしれないから、特殊なケースだけど」

「意味がわからねぇ」

「そうね。閉鎖された空間にゴブリンがいるのは、たしかに謎だわ」

「地下水路ってなんだ……」

「あ、わからないのはそっちか。実際に見てもらった方がわかりやすいから、とにかくコリングの街に急ぎましょう」

「急ぐって。馬に揺られるのか?」

「そうなるわね」

「うげっ。吐きそう」

「とりあえず水を飲んでからにしましょうか。公爵家と話してくるわね」

「ゾーラはなんで乗り気なんだよ」

「コリングの街って、他民族が集まっているのよね。いろんな民族の、年頃の男の子が見れるって考えると楽しみで」

「気持ち悪ぃ……」


 今のは、二日酔いの感想よね? あたしの言葉に対してじゃないわよね?


 とにかく、部屋を出て公爵のところへ行く。話してる間に、キアも少しは元気になっていることだろう。

 手紙は公爵家にも送られていた。今頃公爵かその息子が読んで、対処を検討しているはず。こっちに命じるとかの形で。


 カルラという公爵家の人間が子爵家と喧嘩したんだ。公爵家としても無視はできない。


 こっちから公爵を探して、さっさと行きたいと伝えようかと部屋の扉を開けたところ。

 シャルロットが立っていた。


「あら。お嬢さん、どうしたの?」

「おじいさま。いえ、ブロン・ガリエル公爵からあなたがたへのお願いを伝えに参りました」

「聞きましょう」


 指示ではなく、お願いか。たしかにヨナは公爵家の客人で臣下ではない。ヨナの連れているゾーラたちもまた、公爵にとっては客人。

 命令を下せる立場じゃない。だからお願い。


 その内容は、ゾーラも予想していなかったものだった。


「わたし、シャルロット・ガリエルを連れてコリングの街へ行き、魔物関連の疑惑を解決した上で、ポロソバル子爵家との諍いを解決してほしい、とのことです」

「……なるほど」


 どっちも大事なこと。公爵の言った順番からして、子爵家とのいざこざよりも、魔物の対処の方が優先らしい。

 それも奇妙なことだけど。コリングの街で起こったことなら、魔物の対処はコリングの人間がやるべきこと。水路で起こったなら、それこそ管理している子爵の仕事になる。


 公爵の城に住んでいる"ただのヨナ"の仕事ではありえない。


 だからこのお願いは本当なら、公爵家の代理人として子爵家と和解し、協力して魔物の件を解決しろ、であるべきだ。

 しかも、それ以上にわからないのが。


「どうしてあなたが同行するの?」

「公爵の代理として、家の者が行くべきだと言われました」


 それは正しい。子爵家と諍いがあったなら、和解のために公爵家の誰かが行くべき。

 けれどシャルロットは幼すぎる。政治的なやり取りなどできないだろう。それに彼女は子爵家と特殊な繋がりがある。


 手紙には、子爵の息子とシャルロットが婚約関係にあると書かれていた。こんな小さな子供を婚約者とすること自体どうかと思うけど、まあそれは家同士の話だから仕方ない。

 けれどシャルロットを使者にするのは危険すぎる。


 他に公爵家の者がいないということは、交渉ごとでは幼いシャルロットの言葉が公爵の言葉にされてしまう。例えばエイナートなる人物が、両家の和解の条件にシャルロットとの婚姻を早く進めるなどの提案をして、シャルロットが押し切られれば決定事項になってしまう。


 避けるべきだ。シャルロットに交渉ごとは無理だろうし。


「ガリエル公爵が、あなたにそう命令したのね?」

「はい」

「あなたのご両親も同意しているの?」

「はい。父と母も同席した場で、お願いされました」

「あなた自身はどう考えているの?」

「それは……公爵から命じられた命令に従うだけです」

「震えてるわよ」

「あ……」


 普段着にしているらしい室内用ドレスのスカートを、シャルロットぎゅっと握っていた。表情もさっきかは不安そうだ。

 とはいえ、シャルロットに下されたのは命令だ。お願いならば突っぱねてもいい。けどシャルロットは逆らえない。


「まったく。公爵は何を考えているのかしら」

「そんなの簡単だろ? あの爺さんは、孫のこと信じてるんだよ」


 頭を片手で押さえながら、キアがやってきた。


 わかりやすい解釈だな。けど。


「そんなはずないでしょ。まだ子供よ。本人も会いたがってない。あのね、この子が公爵の代理として話を主導して、子爵側の人間と会った場合、取り返しのつかないことになるのは目に見えてるのよ」

「だったら、この子を子爵って奴らに会わせなければいい。簡単だ」

「会わせずに、どうやって子爵と和解を……あ」


 公爵は、和解よりも魔物の解決を先にお願いしていた。それに和解しろとも言ってない。諍いを解決しろ、だ。


「いやでも、それだったらなんで、この子を連れて行くのよ」

「信じてるんだろ。孫を。というか、孫になる男を。ヨナが守ってくれるって」

「いやいやいや。待ちなさいよ。キア、あなたに政治の話はわからないでしょ」

「おう。わからない。アタシが言ってるのは、じいちゃんが孫娘の幸せを心から考える、家族愛の話だ。シャルロット、ヨナに会いに行くか?」

「はい!」


 不安げだったシャルロットが笑顔になった。

 いやいやいや。


 とにかく、ヨナたちの所には行かないと。


 公爵家は早馬を手配してくれている。けど、向こうに着くのは明日になりそうだな。

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