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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第5章 魔女の師

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5-28.どっちを助ける?

 スレンディル家の屋敷の前で急にゾンビが出現した。しかも明らかに、ここを狙って搬入されている。

 貴族たちが情けない声を上げて逃げ回る。


 僕の周りにいた娘たちもだ。年齢詐称していた五歳児はわんわん泣きながら母親を探し求めているし、明らかに成人してた女も余裕な態度は一瞬で消えて、僕を放置して駆け出した。一瞬前まで僕の気を惹こうとしていたことは忘れたのだろう。


 ヴァニアだけは反応が違った。ゾンビを見て、口元に微かな笑みを浮かべているようだった。


「ヨナ様、お願いします。あれを倒して英雄としての力を見せてください」

「え。うん」


 それはいいんだけど、さっきまでと態度が違わない? もっとこう、馴れ馴れしい感じだったのに。今は妙に芝居がかってるというか、あらかじめ考えていたセリフを言ったように聞こえた。


「受け取れ!」


 けれど聞こえてきた声に反応してしまう。庭に植わっている木の上にキアがいて、枝を投げてきた。地面に落ちたそれを拾って聖剣にする。キアが有言実行したことについては、後で話さないとな。

 キアは今も、次の聖剣の材料になる枝を折っては地面に落としていた。庭師の手が入っているはずの木が見るも無残な姿になっていってるけど、仕方ない。


「ティナ下がってて!」

「はい!」


 ドレス姿のティナはソフィを庇うように立っていて、ゆっくり下がっていった。帯剣していないから戦えず、周りを見ても武器になりそうなのはナイフとフォークくらいしかない。

 帯剣してないのは僕も同じだけど。礼服って武器を差せないし動きにくいし嫌いだ。


 だから聖剣頼りになる。これを構えてゾンビへと駆けた。


 ゾンビはかなり大柄だった。成人男性だけど、身長は普通よりも頭三つ分くらい高い。横幅も大きいし筋肉質な体格。

 奴は腰を抜かしている御者へ遅いかかろうとしていた。僕が着くのが間に合わない。このままでは御者の首が折られてしまう。


「もふもふ! 蹴って! それからアンリーシャの一撃を食らいなさい!」


 けれど直前にアンリともふもふが駆けつけた。馬の前足に押されたゾンビは御者から離れざるをえなくなる。アンリの弓がゾンビの胸に刺さったけれど、それはあまり効いてない。

 というか、なんでアンリがここにいるんだ。キアと同じような理由かな。


 なんにせよ、味方がいるのは心強い。


「アンリ! ゾンビを押さえつけて! 僕が手足を切り落として動きを封じる!」

「ええ! もふもふ! 蹴り続けて!」


 アンリの指示に従い、もふもふはゾンビに前足を上げて振り下ろした。両腕で受け止めようとしたゾンビだけれど、さすがに馬の体重とパワーには力負けする。受け止めきれず両手が叩き落されて下に向けてだらんと垂れる。

 そこに聖剣を振る。ゾンビの右手を肩のあたりからばっさりと切れば、重そうな腕がゴトリと音を立てて地面に落ちた。


 直後、ゾンビは体をひねって左腕を大きく振る。回避を試みたが間に合わなかった。


 丸太のような腕が腹に直撃。後ろに下がって衝撃を軽減させていたとはいえ、ものすごい衝撃と共に僕の体は宙を舞った。近くにあるテーブルの上に落下。乗っていたケーキやらお茶のポットを巻き添えにしながら転がり、地面に落ちる。枝も落としてしまった。


「かはっ!? ああくそっ! 痛いな! 礼服もベタベタだし」

「ヨナ様!?」

「大丈夫だ! 下がってて!」


 ティナが駆け寄って来たのを制止して立ち上がる。ケーキまみれになった礼服のジャケットは脱ぎ捨てた。


 ゾンビはといえば、もふもふの攻撃をくぐり抜けて体当たりを敢行。強い衝撃を受けたもふもふはよろめきながら後ずさりして、なんとか転倒は免れた。

 その間にゾンビは僕の方へ突進してくる。片腕切り落としたくらいで、そんなに怒らなくてもいいのに。


 ゾンビがさっきのテーブルを蹴飛ばしながら突っ込んできたのを、容易く回避する。向こうもすぐに止まって、手近にあった椅子を掴んで振ってきた。これも回避して反撃の機会を伺っていると、ゾンビの後頭部に皿が当たって割れた。


 ティナが別のテーブルの上に乗っていたのを投げてこっちに気を引こうとした。

 その目的は成功して、ゾンビはティナの方を見る。その後ろにいたソフィは恐怖に震えているように見えた。


 それからもうひとり。ヴァニアも近くにいた。なんで逃げてないんだ。他の貴族は屋敷の中に駆け込んでこちらの様子を伺っているのに。英雄の戦いは最前線で見たかったとか?

 彼女は今、その願望を後悔しているようだけれど。


 さっきはゾンビの襲撃にも慌てていなかった彼女は、いざ自分の方に目を向けられると怖くなったのか、短く悲鳴を上げてしまった。ゾンビはそちらに目を向ける。直後に駆け出した。

 ティナとヴァニア、どっちの方にゾンビは突っ込む? わからない。こちらに背中を向けて離れていく重量のあるゾンビを止めるのは無理。追いつけはするけれど、引っ張って止まる相手じゃない。


 どちらかを助けないと。


 迷いはなかった。駆け出して追い越し様にゾンビの脇腹にパンチを一発お見舞いしてから、ヴァニアの方へ行って腕を掴んだ。


「逃げて! 屋敷の方へ!」

「は、はい! ヨナ様!」


 ヴァニアは赤面しながら従った。彼女は僕にそんな感情を抱いてたっけ。危機的状況だったからだろうか。

 屋敷の方へヴァニアの背中を押して走らせた後、ゾンビの方を見る。奴はこちらではなくティナの方に向かっていた。


 判断を間違ったか。ヴァニアは放っておいてティナとソフィを守りに行くべきだったか。


 まあ、後悔することはないのだけれど。

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