第一話 幼女の頃に見えていた不思議なものたち ★
前回、私も幼きころは色んなものが見えていたと書いた。
今回はその頃の話を書こうと思う。
せっかくなので(?)可愛らしい幼女・百亭を想像して読んでいただけると幸い。
最初に、スピリチュアルな力のある方に聞いた話を少しご紹介する。
そもそもとして、子どもというのはついこの間まであちらの世界の住人だったから、八歳くらいまでは色々と見えるものらしい。
もちろん個人差はあって、みんながみんな見えるわけじゃないけど。
そして大体の人は八歳までにその能力が閉じる。
さらに一度閉じてもまた開く人もいるとかなんとか。
突然ぶっちゃけると、当たり前ながら今の私は幼女でない。
むしろ子どもがいる。
しかも、二人!
せっかく可愛い幼女・百亭を想像していただいたのに、それをぶっ壊すようで申し訳ない。
下の子はまだ一歳にもなっていないから意思の疎通ができないが、なんとなく話せるようになってきた上の子は……。
実は、あちらの世界の存在が見えている節がある。
この子も果たして、私と同じような体験をすることになるのだろうか──。
私が覚えているのは、たぶん幼稚園の年中か年長さんのころ。
今や二児の母である百亭も、当時はとても可愛らしい幼女だった(しつこい)。
その頃の私はすでに、自分は他の人には見えない存在が見えていると理解していた。
でもそれらが何なのかは分からなかった。
なにせ見えていたのは、いわゆるザ・幽霊な感じの方々じゃなかったから。
私には生きてる人と区別がつかないような人(たぶん幽霊)も見えてたけど、人じゃない不思議な生き物や風景もたくさん見えていた。
それらは四六時中見えていたわけではなくて、ふとした瞬間とか、意識を向けた時とか、逆にぼーっとしたとか、そういうタイミングで見えていたと思う。
もうほとんど覚えてないのだけど、唯一はっきり覚えているエピソードを書いてみる。
自分が見ている不思議な存在は、母には見えていない。
それに気づいた幼き私は、無邪気に「お母さんに教えてあげよ!」と思い立った。
ちなみに祈祷師のおじいちゃんを父に持つ母だけど、幽霊とかは見たことが(ほぼ)ない。
ただ不思議体験はある。
それはまた別のお話で。
ある日、母と食事の用意をしていた私は、急にこんなことを言い出した。
「お母さん、◯◯ちゃん(百亭の下の名前)ね、色んなものが見えるんだ! このお皿をじーっと見てるとね、グニャグニャ〜ってなって……ほら、カメさんが出てきたよ!」
私の手元には大人の手のひらより少し大きいくらいのお皿があった。
そのお皿には真ん中に模様があり、それに目を凝らすと模様がモヤモヤ〜っとうごめいて、最後には亀の形になってヨチヨチと歩き出した。
とは言っても、本物の亀じゃない。
亀のような何か、だ。
そして今度は、意味が分からなそうにしている母越しに、開け放ったままの窓の外を指さす。
「それにほら、お外を歩いてる女の人も見えるよ!」
そこには窓のすぐ外を、白い日傘をさしたお上品な感じの女性が歩いていく姿があった。
上半身しか見えなかったけど。
でも、その頃の私が住んでいたのはとある借家の二階だった。
つまり、窓のすぐ外を人が歩いてるのなら、それは生きている人間ではない。
それに気づいた母は、ちょっと怒った感じでこう言った。
「そんなこと言うのやめて! お母さん、ノイローゼになっちゃう!」
今なら母の気持ちが分かる。
きっと怖かったんだろう……。
私も上の子が何か見えてるっぽい時はちょっと怖い。
でも当時の私は、母に怒られたと思ってショックを受けてしまい……それ以来、自分が見えているものを誰かに話す事はなかった。
そしていつの間にか、たぶん小学校に上がるくらい?
その頃にはそういう存在を目にすることは無くなった。
むしろそんなのが見えていたことすら忘れてて、思い出したのは少し先。
今度はいわゆるザ・幽霊な存在を目にして、恐怖に震え上がってからのことだ。
こんなだから、私は長い間こう思っていた。
私が小さな頃に見えていた色んなものは、子ども固有の空想の産物じゃないの?
つまり私が頭の中で作り出した存在ってわけ。
だって、日傘の女の人はともかく、その前のカメってなによ?
でも大人になってスピリチュアルな本や、ありとあらゆる実録怪談集を読んできて、分かったことがある。
死んだ人の霊というのは、スピリチュアルな世界の中でもかなり現実寄りの存在なんだと。
だから霊感がない人も何かのタイミングが合うと、見えてしまったり遭遇してしまうことがある。
霊感があると言う人が見てるのは、ほとんどの場合、この人間の霊だと思う。
もっと色々見えてしまう人は、霊とは違う次元に住む存在も見える。
たとえば神様とか、さらにはそういう括りでは表せない荒唐無稽な存在まで見えてしまうらしい。
そしてあまりにもあちらの世界が見えすぎてしまうと、人間には理解できなさすぎて狂ってしまうとか……。
まあ本当かどうかは分からないけど、その話を知って、私が幼い頃に見えてた世界はそういう類のものなのかも?
と、なんとなく察したのだった。
最後のオマケに。
私の母方の親戚に、おじいちゃん以外に霊感の強い人はいないのか? って疑問に思う方もいるかもしれない。
母の兄妹は母を入れて六人もいるけど、少し感じやすい人がいるくらいで、私より不思議体験をしている人はいないと思う。
でも従兄妹には、私よりもっと色々見えていた人が一人だけいる。
あまりにも力が強すぎるから、心配したおじいちゃんがその力を一度閉じた=封印したんだとか。
自分で書いといて何だけど、ラノベの世界みたいな話だなぁ。
その従兄妹とは、おじいちゃんから祈祷師を継いだ伯父さんの長男だ。
順当に行けば、その人が次の祈祷師になる。
そしてその時に、かつておじいちゃんが封印した彼本来の力が解放されるんだろう。
その時の彼の目に映る世界は、一体どんなものなんだろうか……。