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第十六話 真夜中に顔に触れたもの ★★


 今回は時代をさかのぼり、小学校高学年から中学生の時のことを書こうと思う。

 心霊現象といえばかなりメジャーな、金縛りの話だ。


 金縛りを経験したことがある人は、けっこう多いと思う。

 金縛りは必ずしも心霊現象じゃなくて、睡眠リズムが崩れてる時とか、精神的ストレスが原因で起きるらしい。

 あと私の感覚では疲れすぎてる時とか、身体は疲れてるけど興奮状態とかで頭の方は眠くない時に起こるかな?


 私の場合、今は二、三年に一回あるかどうかだ。

 原因も心霊的なものではない……と思う。



 しかし小学校高学年くらいから中学卒業頃までは、めちゃくちゃ金縛りに遭っていた。

 しかもピークの頃は毎晩だ。

 金縛りが解けたと思ったらまた金縛り、みたいに一晩に何度ももかかることも、しょっちゅうあった。


 別に学校生活でストレスを感じていたとか、睡眠リズムが崩れてるとかはなかったのになぁ。

 この頃の私はとても良い子で、夜21時には寝て朝6時に起きるという、かなり規則正しい生活をしていた。

 小学校も中学校も楽しかったし……。

 一体、何が原因だったんだろ?


 住んでいたのは第一話の時の、両親がスリッパの音を聞いた貸家だから、場所が悪かったのか?

 確かに高校入学とともに一軒家に引っ越した頃には、金縛りも減ったけど……。



 私の場合は金縛り中、目だけは動く。

 まぶたを開けて、薄暗い部屋の中を見ることができる感じ。

 そうなると、見たらいけないものが見えてしまいそうで怖い。

 でも目をつむってて、何か恐ろしいものが接近していたら、もっと怖い!



 私は小学校中学年くらいから怖い話が好きになったから、金縛りは心霊現象じゃないケースもあると知っていた。

 でも、怖いものは怖い!

 本にお経を唱えると金縛りが解けるって書いてあってやってたけど、効果はなかった……。


 金縛りを解く方法は他にも色々あるみたいだけど、私はどれもダメだった。

 もう勝手に解けるのを待つしかない。

 その待ってる時間が怖い……。

 でもこの「目は見える」って状況、反覚醒状態だからそう思ってるだけで、ほとんどの場合は目は閉じたままだったのかも?



 とにかく若い頃は金縛りに苦しめられていた私だが、金縛り中に怖い目にあったのは、たった一回だけ。

 今回はその唯一の体験談を書く。(前振りが長い)




 あれは小学六年生から中学二年生のどこかだったと思う。

 その頃の私は金縛りにも慣れてきてて、金縛りが始まったらさっさと寝ることにしていた。


 金縛り中は身体がゾワゾワして不快だけど、慣れればすぐ寝れるし、寝れば怖い体験もしないからオススメだ。

 今も金縛りに遭えばさっさと寝てる。

 もし心霊的なものが原因の場合なら、相手は「えっ、寝るの?」と、あっけに取られてるかもしれない。


 季節は夏、八月のお盆時期だった。

 何かの法事のついでに、家族と親戚とで千葉県の海沿いの旅館に泊まりに行った。

 この当時、のちに祈祷師を継ぐ事になる伯父さんも含め、母の兄妹の多くが千葉県に住んでいた。

 だから叔母さん夫婦も何人か一緒に行っていたような?

 伯父さんもいたかは……覚えてない。

 いとこたちもこの時は来てなくて、子どもは私と姉の二人だけ。



 法事が無事に終わり、まだ夕飯まで時間があったから、海で遊ぼうという話になった。

 しかし旅館近くのビーチに行くと、風が強すぎて海にはサーファーくらいしかいない。

 いくつかある海の家も、みんなガラガラで空いていた。


 滅多に海に来れないもんだから、名残惜しくて姉と少し海を眺めたりしたけど、結局その日は諦めた。

 今夜は泊まるし、明日泳げばいいかって感じで。



 そうして旅館で夕飯を食べ、お風呂を済まし、寝る時間になった。

 部屋は二つ取ってたと思う。

 畳の大部屋だから、女性陣と男性陣に別れて寝る事に。

 私は一番窓側だったと思う。

 窓の前には板の間があって、そのすぐ横に布団を敷いた。

 そして私の左隣には姉の布団。


 初めての場所なものの、部屋にはたくさん人がいるから安心感があった。

 常夜灯だけの薄暗い部屋の中、私と姉は布団に寝転びながら、ポツポツと会話していた。

 けれどもお互い眠くなってきて、会話も途切れた頃……。



 キィィィィーン。



 耳の奥で鳴る、金属音。

 それは金縛りになる時に聞こえる音だった。


(えっ、金縛り!?)


 その頃はピークも過ぎて、週に一回、金縛りに遭うかどうかだった。

 だから、まさかここで来るとは思わなかった。

 そう驚く中、金属音が大きくなって、ついに完全に金縛りにかかる瞬間──。



 ぺたり。



 誰かの手が、左頬に触れてきた。


 少し冷えてたけど、しっとり柔らかくて女性っぽい。

 たぶん指先から第二関節くらいまでが、私の左頬に乗ってる。

 姉が寝返りを打って、私の顔に手が乗ったんだと思った。


 だって今まで三桁レベルで金縛りに遭ってきたけど、こんなにハッキリと何かに触られたことはない。

 だから、姉の手に違いない。


 いつもどおり、まぶたは動く。

 だから目開けると常夜灯に照らされた天井が見えたけど、目を左に向けても、おかしなものは何も見えなかった。


 姉がうつ伏せになって手を伸ばしているなら、真上を見てる私からは見えなくてもおかしくないか?


 でもすぐさま私は、目をぎゅっとつむった。


(手を乗せてるのが、姉じゃなかったら……?)


(身体が動かないのに、視界に知らない誰かが入ってきたら……?)


 怖い妄想が浮かんでしまう。


 いつもは金縛りに遭えばさっさと寝ていたけど、頰の感触がリアルすぎて寝られない。

 さらにその手が急に動きでもしたら、発狂しそうだ。



 どうしようと焦る中……。

 体感的には三分もかからずに、金縛りは解けた。

 すると頰に乗っていた手の感触も消えている。


 私は急いで姉の方を見た。


 姉は最後に見た時と同じで、私とは反対側を向き、夏掛けに包まるようにして寝ていた。


(え、じゃあさっきのは……)


 助けを求めるように、小声で姉を呼ぶものの、返事はない。

 姉は寝てしまっていた。



 ドキドキと動悸のする中、私はさっさと寝ようと目をつむる。

 また金縛りに遭ったらヤバいと思って。


(さっきの金縛りは、旅行で疲れてるのに頭が興奮状態だったから……)


 だから手が触れたと思ったのも、半覚醒の中の幻覚に違いない。


 そう結論づけるも、しっとりと冷たい手の感触はまだ頰に残ってる。

 とはいえ幸いにして、そのあとは金縛りに遭うことなく、ほどなくして眠ることができた。



 そうして迎えた朝。


「あのさ、昨日の寝る前、顔に触ってこなかった?」


 ダメもとで聞いてみた。


「え? なんで? そんなことしないけど」


 やっぱりなぁ……と思いながらも、昨夜の出来事を姉に話す。

 姉は怖がりなわりに面白がって、母に私の金縛りの話を教えてた。


 怖いから、反覚醒状態だったことにしよう。

 そう結論づけた私は、寝起きのトイレに向かった。

 そして驚愕する。



 生理がきていた。



 まだ予定の日は近くなかったと思う。

 だから慌てて姉にナプキンを借りた。


 そしてから、ある事に気づく。


「海で遊べないじゃん!」


 というわけで、せっかくビーチ近くの旅館に泊まったのに、海で泳ぐ事なく帰ることになってしまったのだった。



 そうしてから、帰りの車の中でふと思った。


(あの金縛り中に触ってきた手、なんかあれのせいで生理がきたような気がするけど……今考えると、そんなに怖い存在じゃないのかも?)


 もしあれが半覚醒中の幻覚でないのなら、何かしらいい存在なのかもしれない。

 守護霊さまとか、そういうの。


 もしそうなら、何かしら意図があるんじゃないか?

 そう考えて、ひらめいた。


(生理にして、海で遊べないようにしたのかも?)


 帰りも浜辺沿いを車で通ったけど、この日も風が強くて波が高かった。

 でも前日は泳ぐのを諦めたから、もし生理になっていなければ、私と姉は海に遊びに行ってたと思う。

 たとえ波が高くて、危険だろうと。


 金縛り中に頰に触れてきた何かは、それを阻止しようとしたのかもしれない。

 なにせ時期はお盆だ。

 お盆の時期は、水の事故が多いっていうから──。




 この解釈は私が考えただけで、なんの根拠もない。

 でも当たってるような気がする。


 しかしなぁ……仮に守護霊さまなら、もっと怖くない感じでやってくれないもんかね?

 金縛り中、めちゃくちゃ怖かったんだけど……。


 守護霊さまが、そんな怖いことするはずないじゃんって思う方もいるかもだけど、そんな事はない。

 せっかくだからもう一つ、守護霊さま的な話を手短に書いておく。



 あれは夫と付き合い始める少し前。

 ある晩、ふと目が覚めた。

 すると目の前、顔から二十センチくらいの距離に、黒い煙を小さく丸めたようなものが浮かんでいた。


 まだ寝ぼけてる私は「なにこれ?」と、ぼーっと見てたのだけど……。

 次の瞬間、それがモコモコブワッと広がった。


 広がったそれは中心に煙のような玉、そこから蜘蛛の足のようなものがいくつも伸びたような形になった。


 しかも全部が真っ黒で、煙でできたようにゆらめいている。


 ビックリして固まる私の目の前で、それは唐突に消えた。

 私は慌てて起き上がって周囲を見るも、怪しげなものは何もない。


 寝ぼけたのかと思ったけど、あまりにもリアルだしビックリして、その後はなかなか寝つけなかった。



 その少しあと、私はどこかの話で書いたスピリチュアルカウンセラー的な人に会いに行く予定があった。

 そこでこの黒い蜘蛛みたいなものについても聞いてみた。


 すると……。

 その人によると、その黒い蜘蛛みたいなやつは守護霊さまからのメッセージらしい。

 その時、私はとある頑張ってるものがあったんだけど、あまりうまく行かず、行き詰まっていた。

 そこで、守護霊さまは私に黒い蜘蛛みたいなやつを見せることで「やり方を変えないとためだよ」ということを伝えたかったらしい。


 マジで!?


 と、ビックリしたのを覚えてる。

 あんな邪悪そうなものが、守護霊さまからのメッセージだなんて……。

 しかも私だけじゃぜんぜん理解できないし、伝わってない。


 でも結果的にスピリチュアルカウンセラー的な人に相談して、間接的にメッセージを聞けたから、結果オーライ的な?

 それにアドバイスも私としては納得のいくものだった。


 というわけで、怖い体験でも悪いものの仕業とは限らない。

 実はこの蜘蛛みたいやつの体験、第十二話で書いた黒い玉のエピソードと似てる。


 だからあの黒い玉も、本当は守護霊さまのメッセージなのかも……?

 まあ……私にはうまく伝わっていないわけだが……。


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