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第十二話 生まれくる命と去りゆく命 後編 ★★


 第一子出産後、怪異らしきものが頻発するようになった百亭の新居。(ちなみに地鎮祭はやってる)


 前回の不思議写真の後も、時々電気やテレビがついた。

 消える事はほとんどなかったと思う。

 その辺が、もし父の仕業だと考えると父らしい気がする。

 だって私にとって電気が勝手に消えるのはトラウマだから……。

 きっと気を遣ってくれたに違いない。


 そんな不気味な日々も、夏が終わり父の四十九日の頃にはだいぶ落ち着いた。

 そして息子も少し大きくなり、夜は二階の寝室で寝るようになった。



 そんなある晩のこと。

 秋くらいかな?

 息子も夜中に起きることはほとんどなくなり、私はぐっすり眠っていた。

 けれどもその日はなんとはなしに目が覚めた。

 時間は夜中の一時か二時くらい。


 息子が泣いた時のために部屋は常夜灯がついている。

 その灯りの中、不意に目が覚めたら……。

 視界に動くものが映る。


 窓側から黒い玉が、フワフワと飛んでくるところだった。


 真っ暗というよりは黒い煙が玉になった感じ?

 少し透け感がある。

 サイズはちょうど卓球の玉くらい。


 私は起きたばかりでぼーっとしてるから、


「あれなんだろ……?」


 と目で追っていた。

 するとその黒い玉はフワフワと私の上を横切ると、となりにある息子のベビーベッドの中へと下りていった。


 次の瞬間。


「ぎゃー!」


 突然息子が泣き出したもんだから、私は慌てて飛び起きて息子を抱き上げた。

 息子を抱いたまま周りを見ても、あの黒い玉はどこにもない。


 寝起きに見たし、私が寝ぼけてたとか?


 そう思うも、玉が息子のベッドに消えたタイミングと、息子が泣き出したタイミングが同時なのが怖い。


 息子はたまに夜に起きてぐずる事があるけど、少し落ち着かせたらすぐ寝る。

 だから今日もいつものそれだと思いつつも、こんなに急に激しく泣いたことはない。

 息子はしばらくしたら落ち着いて、また寝たけど……。



 あの黒い玉はなんだったのか。

 これも父の仕業なのか?

 俗にいう人魂ってやつ?


 でもなぁ、黒ってなんか悪いものっぽい感じが……。

 それにあれが父の仕業なら、なぜ息子はあんなに激しく泣いたんだろ?



 なんだか不気味だったし、息子の身に危害が加えられたら大変だ。

 だから私は息子の初まいり(生後一ヶ月くらいにやるお宮参りみたいなもん)でもらった浅草寺のお守りを、ベッドの近くにぶら下げておくことにした。

 息子を守ってくださいと念を込めて。



 結果的にこの黒い玉が出たのは、この日の一回きりだった。

 年が明け、息子が保育園に入る頃には、テレビや電気がつく不思議現象も収まっていた。

 てことは近所の電波の影響ではなかったのかも?


 ただしこの後、6月から8月くらいにかけて、またテレビや電気がつく現象が起こった。

 それは去年、私が二人目を出産した夏も同じ。

 ただ頻度は少しずつ低くなってたかな?



 しかし不思議現象が落ち着くとともに、大きくなってきた上の息子が謎の行動を取るようになった。

 二つ紹介する。


 一つ目、一年ちょい前の夜に寝る前のこと。


「さあ寝るよ〜」


 風呂上がり、二人で二階にある寝室に向かうために、息子の手を取り二人で階段を上り始めた。

 しかし数段上がると息子は立ち止まり、背後を振り返る。

 そして笑顔で……。


「ばいばーい!」


 と、手を振った。


 え、誰もいないけど……。


 これ、一回だけでなく毎晩やるようになった。

 なんで!?

 単に一階自体に向けてバイバイしてるのか……?



 息子は言葉を話すようになるのが遅くて、何にバイバイしてるのか聞いてもよく分からなかった。

 小さな子どもの行動だし、深い意味はないのかもしれないけども。


 でも……子どもの頃の私みたいに、息子にも何か不思議な存在が見えているのかもしれない。

 私が母にされたように、それを否定してしまったらかわいそうだ。

 だから私はいつも穏やかな声で、


「バイバイしてるの〜」


 と口では言いつつ、心の中では「何にバイバイしてんの〜!?」となっていた。



 ちなみに息子が手を振っている先は階段の真下、トイレのドアがある。

 そしてその横の壁には窓があって……。


 実はここに、第四話の最後にサラッと書いた、とある神様の像を飾っている。

 詳しくは別の話で書こうと思うけど、この像は確かに何かあるかも? と思わせるものがある。


 息子はこの像に手を振っていたのか?

 でもなぁ、息子が笑顔で見ていたのはトイレのドアの前の空中あたりだ。


 この現象は半月ほど続いて急に終わった。

 助かった……。

 だって息子を寝かしつけたら、私は一人で階段を下りてここを通らないといけないんだもの。



 二つ目、これは数ヶ月くらい前の話。

 階段の下にバイバイしなくなって久しく、そんな事も忘れていたある日。

 廊下に出た息子が急に「ニャンニャンいた!」と言って階段を上り出した。


 その時は夫がついていったのだけど、二階に行くと、


「ニャンニャンないね〜」


 と、猫を探していたそうな。


 我が家にはチワワはいるけど猫はいない。

 ただし実家や姉の家にはいるから、もしかして「猫探しごっこ」をしていただけなのかも?



 これは一、二回しかやらなかったけど、つい最近もまたやった。

 それは、実家の古株の猫が死んだ翌日のことだった。

 その猫はもう老衰で、最後、旅立つ前に息子も連れて実家に会いに行っていた。


 息子には「老衰」という言葉は難しいから、「おばあちゃんちのニャンニャンは病気で具合が悪いのよ」と説明していた。

 息子には、その猫が旅立ったことは伝えていない。



 そしてお風呂前くらいの時間だったか?

 息子が階段の下にきて、急にこう言い出した。


「ニャンニャンみる! おばあちゃんおうち、びょうき、ニャンニャン」


 そう言って階段を上ろうとするので、慌てて止めた。

 相変わらず言葉がつたないから分かりにくいけど、どうやらおばあちゃんの家(私の実家)の病気の猫を見ると言っているらしい。


 え、二階にいるの……?

 マジ?

 お別れの挨拶に来たのかな?


 それともこれも猫探しごっこなのか?


 ちなみに私にはこの猫の姿は見えなかったけど、旅立った日の翌日の朝方、夢に出てきた。

 私は「死んだはずなのに! 会いに来てくれたのかな?」と、若い頃の姿に戻ったその愛猫をなでてお別れしたのだった。

 まあ、単なる夢かもしれないけど、心の整理がついて良かった。



 そんな長男の出産後から続く怪異は一体なんだったのか?

 長らく気になっていたのだけど……。


 第十話で少し書いたスピリチュアルカウンセラー的な人に聞く機会があった。

 この人は多分本物っぽい。

 少なくとも過去や現在の事柄については確実に当たってる。


 そうして聞いた答えは……。


「起こったことの半分はお父さん。見守ってるっていうメッセージなんだって」


 へぇ、やっぱりそうだったのか……て、え?

 半分?

 じゃあ残り半分は!?


「残りの半分は、その息子ちゃんが起こしてる。繊細だから電波が出やすいの。それで電気がついたりするのよ」


 なんですとー!?


 電波が出やすい?

 人から電波が出るの?

 念みたいなもんか?


 まあ確かに、怪談話によると心霊スポットじゃ電気系統のトラブルが起こりがちだ。

 霊力的なものが電波になってもおかしくはない。

 それにポルターガイストって現象は、子どもが起こすものって説があるし。


 じゃあ息子が何かの拍子に電波(?)を飛ばして、それを電化製品がたまたまキャッチしたってことか……。


 あ……前編で書いた不可思議な写真。

 あれが息子の電波のせいだっていうなら納得できる。

 あんな怖いの、父がやるはずない。


 あの時、息子は私の持つスマホのすぐ下にいた。

 電波(?)を飛ばせるなら、めちゃくちゃヒットする距離だ。

 それでスマホがちょっと誤作動を起こしたんじゃ?


 そういえば先日、実家に帰って父の仏壇にお線香をあげて目を閉じていたら……。

 急に男の人の声が聞こえてきて、夫とともにビックリしたことがある。

 テレビが勝手についただけなんだけど、タイミングがすごい。


 長男がおばあちゃんに会えて興奮してたから、また電波が出たのか?

 それとも父からの「よく来たな」的なメッセージなのか……。



 ちなみにその人によると、やはり息子はあちらの存在が見えてるらしい。

 成長とともに見えなくなるもんらしいから、もう少し話せるようになったら色々聞こう。


 そんな感じで意外な怪異の正体が分かり、スッキリした私。

 でも後から気づいた。

 あの息子がギャン泣きした黒い玉は?

 あれは父なの……?

 聞くのを忘れたから、機会があれば次回聞こう。



 ところで。

 私以外の家族に、父からの怪異はなかったのかというと……実はあった。


 母は一度だけ、二階から母を呼ぶ父の声を聞いたそうな。

 まあ一回だけだし、勘違いかもだけど。


 一方、超怖がりの姉は──。


 姉はなんと、父の四十五日まで毎晩のように父の夢を見たらしい。

 特に亡くなってすぐは、本当に毎日。

 すごすぎぃ!

 内容は他愛ない。

 ある日の夢では、父が短歌だか俳句だかを作ったと嬉しそうに見せてきたとか。


 実は姉は……父が亡くなった当時、妊娠していた。


 私より五ヶ月ほど後に妊娠が分かり、うちの長男と同い年の女の子を出産した。

 たぶん父は妊娠中の姉が心配で、毎晩夢に出てきたんだと思う。

 優しいね!



 ……それならさぁ。

 私も夢で良かったんじゃない!?

 なんで私だけ電気やテレビをつける怪異なの!?

 怖いんだけど!


 まあ私は産後で睡眠時間が細切れだったし、夢なんてまず見なかった(覚えてなかった)。

 だからなのかもな。


 とりあえず今年も父の命日が近いから、電気やテレビが勝手についても驚かないよう構えておくことにする。


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