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第九話 廊下の電気をつけたままにする理由 ★★


 今回は再び私の話だ。

 さて、実はこれ、始まりがいつだったか覚えていない。

 前に書いた妖怪っぽいものに遭遇する前かなぁ?

 なんで覚えていないのかと言うと、あまりにも怖すぎて日常生活に支障が出るから、記憶から抹消したんだと思う。


 それなら、何をきっかけに記憶が蘇ったのか?


 それは、まったく同じ不思議体験に再び遭遇してしまったから──。



 ああ、なんてかわいそうな私!

 記憶から消しちゃうくらい怖い体験を、二回もだなんて!



 まあそんなことを書くとハードルが上がるから先に書くと、私は怖がりだ。

 今回は、私にとっては怖かったってだけかもしれない話。

 だからとりあえず★は二つ。



 大学生か社会人になっていた私は、ある日、夜遅くにお風呂に入った。

 風呂上がりが22〜23時くらい?

 その頃には実家の一階には誰もいない。


 風呂上がり、私は洗面所で鼻歌を歌いながらドライヤーで髪を乾かしていた。

 洗面台の鏡を見ながら。


 そうして鼻歌まじりにフンフンフーンとドライヤーをかけていたら、急に視界がフワッと暗くなった。

 そしてすぐ元に戻る。


「え?」


 今のなに?


 そう思った瞬間、またもや視界がゆっくり暗くなって、今度は明るくなってを繰り返し、しまいには真っ暗になってしまった。


 つまり、電気が消えてしまったというわけ。


「えっ!?」


 視界が真っ暗になりびっくりした私は、ドライヤーを手にしたまま、すぐ横にあったドアから廊下に出た。


 しかし時刻はもうすぐ日付が変わる頃。

 廊下も真っ暗だ。


 その暗闇に、ゾッとした。


 慌てて手探りで廊下の電気をつけ、そしてから洗面所の電気をつけなおす。

 無事に明るくなるも、私の心臓はずっとバクバク。


 この間も、右手に持ったドライヤーはついたまま。

 つまり一時的な停電があったわけじゃない。


 なんだったんだろうと思いつつ、怖いから廊下に半分出た状態でドライヤーの続きを始めたら……。

 

 また洗面所の電気だけが、ゆっくり暗くなったり明るくなったりをし始める。

 廊下の電気は異常なしなのに。


 まるで怖がる私を弄ぶかのよう。

 訳がわからなくてもう泣きそう。


 私は「もう何なの!? こわっ!」と声を上げながら、廊下に出たまま適当に髪を乾かすと、さっさと二階へ逃げたのだった。


 部屋に戻ってからは、部屋の電気が消えるようなことはなかった。

 消えたら泣いちゃう。



 そして後から、あれはなんだったのかと考えた。

 ドライヤーの電磁波的なもの(そんなものあるんかい)の影響で電気がついたり消えたりしたのかも?

 ほら、ドライヤーって電力使うし。


 あとは電球の寿命とか……。

 他にもネットを見ると器具本体の寿命説なんてのもあったけど、この電気が勝手についたり消えたりする現象は私しか体験してなくて、しかもこの日だけだった。

 遠くの雷とかそういう影響かと思ってみても、廊下の電気が問題なかったから違うだろう。


 まったくもって謎だ。

 結局よく分からんから、たまたまだったと思うことにした。



 でも翌日も同じような時間に一人でお風呂に入らないといけない。

 また電気がおかしくなったら怖すぎる……。


 そこで、いつ電気が消えてもいいように、廊下の電気はつけっぱなしでお風呂に入ることにした。

 もう廊下に逃げても真っ暗、なんてのはゴメンだ。


 家族にも「私がお風呂に入ってるときは、廊下の電気をつけっぱなしにしてね!」と何度もお願いし、うっかり消されようもんならキレ気味に文句を言った。



 それから月日が流れ。

 私はもう、廊下の電気をつけっぱなしにする理由を忘れていた。

 でも相変わらず、お風呂に入る時は廊下の電気はつけたまま。

 家族がうっかり消そうもんなら怒っていた。

 自分としては、風呂上がりに廊下に出た時に、廊下が暗いと怖いから電気をつけてるんだと思ってた。


 そんなある日の晩のこと。


 その日ももう家族が寝静まっている時間だった。

 私は一人でお風呂に入り、そしてドライヤーで髪を乾かしていた。

 いつも通り、鼻歌フンフンフーンだ。


 そしたら急に、視界がフワッとゆっくり暗くなっていく。

 


 ゾワっとした。



 電気は緩急をつけて何度か明滅し、最後には真っ暗になる。

 それと同時に、私は廊下に飛び出した。

 飛び出した先の廊下は──明るい。


 明るい!


 そう、私が長年廊下の電気をつけ続けていたのは、この時のためだった!


 そして思い出した。

 いつだったか、同じ目に遭ったことを。

 そしてその時、逃げた先の真っ暗な廊下が怖かったから、廊下の電気をつけるようになったことを。


 ああ、家族にうざがられながらも電気をつけっぱなしにしてきて良かった……。


 私は廊下の明るさに励まされ、私は心臓バクバクしながらも落ち着いて洗面所の電気をつけなおす。


 その時にあることに気づいた。


 洗面所の電気のスイッチ、切れてた……。


 実家の洗面所の電気のスイッチはパチパチいうやつで、スイッチが入ってるか切れてるかが見た目でわかるタイプだ。

 右が上がってたらオフ、左が上がってたらオン、みたいな?

 最初の時は電気をつけ直すのに必死で、スイッチがどうなっていたかは覚えてなかったけど……。

 今回、ハッキリ分かった。


 ということは、だ。


 この電気が勝手についたり消えたりする現象は電磁波とか電気系統のトラブルじゃなくて、物理的に電気のスイッチが切られていたってことだ。


 何ものかによって。



 なにそれ……めちゃくちゃ怖い。



 そのあと、今回はもう洗面所の電気が消えることもなく、無事に髪を乾かし終え、さっさと自室に逃げた。


 そしてから考えた。

 あの現象は何なのかと。


 もしかして私が自分で、ドライヤーをかけながら肘でスイッチを切ったんじゃ?

 怪異じゃないとすると、もうそれしかない。


 でも翌朝以降、何度実験しても(私も必死だ)、あのフワッとゆっくり暗くなったり明るくなったりができない。

 ゆっくり消そうとしても、パチっとスイッチが切り替わって瞬時にオンオフしてしまう。


 もうなんなの一体……。

 こうなるとあの現象は、やっぱり不思議な存在のしわざか?

 てか、嫌がらせとしか思えない。



 そういえば、洗面所ではもう一つ不思議体験があった。


 その時も風呂上がりだったか?

 夜に洗面所にいた時、窓のすぐ外で男の人っぽい「はっ……」って声が聞こえたことがある。


 ビックリして急いで窓の外を見たけど……。

 外には誰もいない。


 実家はビルトインの駐車場があって、洗面所の窓の外はその駐車場。

 外とはゲート的なので区切られてるから、誰かが簡単に侵入することはできない。

 まあ、できても一瞬で逃げるのは無理。


 私は怖いから聞き間違いってことにしてたんだけど……。

 あれも何かの嫌がらせか?



 あれから私が結婚のために家を出るまで、洗面所の電気がおかしくなることはなかった。

 たぶん、私が廊下の電気をつけてて、初回より怖がらなくなったからかもしれない。

 

 けれども私は今でも、急に電気が消えて暗くなるとめちゃ怖い。

 トラウマになってしまっている。

 今も洗面所で何かしてる時に、子どもが来て電気を消しちゃうことがあるんだけど、マジでやめてほしい。

 あとトイレに入ってる時に電気を消すのもやめてくれ。



 そんな私が、結婚して住むことになった新居のマンション。

 そのマンションの私の部屋は……。

 これまた、ときどき電気が消えてしまうことがあった。


 もう勘弁してくれ!


 今住んでいるマイホームは消えることはほとんどないかな?

 代わりにつくことがある。

 もうなんなの!?


 まあそれらは原因ぽいのが分かっているのもあるから、また別のお話で。


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