*Twitter*【#140字小説】No.151~160
No.151【#逃げられないよ】
シャワーを浴びると聞こえる、コポッ…コポッ…という不穏な音が怖い。目を開けても閉じても想像が膨らんでしまって、邪念が沸いて溢れそう。だが、このまま…というわけにもいかない。私は意を決して排水口を覗く。大量の毛髪の詰まりに吐き気を催す。自分の髪の毛がおぞましい。掃除サボりすぎたわ。
No.152【#この国の働き方 #魔が差す】
雨の日は、人の思考を少し鈍らせるのか。この国で働く者は、まわりが見えていない。いや、それどころか己のことすら見失ってしまっている。男は電話の向こうの相手にペコペコ頭を下げている。慣れた手つきで、男は改札をピッと通りすぎて行く。傘を差したままだった。電車も傘を差して乗ったのかしら。
No.153【#夢の中で】
https://youtu.be/urE3tET7Igk?si=8DJ_zqhQd02X6ITA
妻が事故死して、突然ひとり親になった俺は眠れない日々を1人呆けた。「パパ?」こんな夜中に息子。「眠れない?」「まよなかには、ぜんぶステキなユメになるよ。だいじょぶ、おやすみなさい」妻の微笑みが…「ユメでママがパパに言ってた」俺の夢で言えよ。息子を抱き寄せ、堪えてた目頭が炎上した。
No.154【#禁じ手】
死神は悪魔と契約を交わした。「鏡に映る自分の顔が怖い…」死神は、己の醜い顔を両手で覆い嘆く。「誰にも秘密の禁断の呪術を教えてやろう…さぁ鏡に向かって言ってみるがよい」まさか、おとぎ話でごまかそうなどと…?「"美容クリニック"ってリズム良く唱えな。」YES!死神は、悪魔の魔法を使った。
No.155【#図太い選手権】
「あぁ…座りたい。お婆ちゃんは座りたい。はぁ…このまま立ってるようなのかなぁ…?みんなは、どこまでなのかなぁ?」わざとすぎ。「あの…どうぞ。」老婆のあからさまブツブツひとり言に俺は負けた。電車の席を譲らせるババア、寝たふりに仕事してるふり、みんな図太いわ。せっかく早く並んだのに。
No.156【#褒めて】
https://youtu.be/2DCfP8mz3iM?si=JYkUdbVEHPnzcIA8
「友達の彼氏は、下着を褒めて良いムードにしてくれるんだって!」って言われてもなー。「可愛いね、似合ってるね、色が綺麗だねって!」ねー。「は…はは…、肌に優しい素材だよな…!」綿100%、ベージュのババシャツの褒め言葉を絞り出した俺を褒めてほしい。そもそもムードねぇ下着、なんとかして。
No.157【#子の子の子】
「新しく入居しました。よろしくお願いします。」老人ホームの大部屋で挨拶。「主人です。」俺を紹介し頭を下げると、「お若いですね~」「羨ましいわ~」96歳の老婆に微笑む老人たち。廊下に出ると「お孫さんも大変ね。」と介護師の方が苦笑う。「いえ、ひ孫です。若い頃の旦那にそっくりだそうで。」
No.158【#ファンファーレ】
「あの人に電話すると、いつもラップ音がするの」「それは…お祓いしてもらった方が良いのでは?」「やっぱりそうかしら?何かに取り憑かれてるようだものね!」ご婦人が笑って言うのが実に不気味だ。「本当に、なんとかならないかしら…あの人の競馬依存。」競馬場のラッパ音か。意味が大幅に変わるわけ。
No.159【#記憶にない話】
昨夜呑みすぎて記憶がない。【ママチャリ?「こちらが見つかった情報です。」「いえ、話しかけていません。もちろん、ママチャリ免許を欲しがってもいませんし」】…そんな下書きが、朝目覚めた私に残されていた。怖い。この話の意味がわからない。自分の頭を疑うことが…怖い。私の頭バグッとるんか。
No.160【#ミックス】
残業で帰りが遅くなってしまったので、弟に車で駅まで迎えに来てもらった。「家に着く前にコーヒーでもおごるよ。」「サンキュー。」「コブンに…」「コブン!?」コンビニって言おうとしたら混ざっちゃった。「姉ちゃん昔から漢字苦手だもんな!腹痛ぇ~!」「あげ足とりすぎ!笑いすぎ!」耳が熱い。