ガラスの靴の君は
午前1時。
満月揺れるバルコニーに僕は佇む。
深紅のワインに口もつけず、ただくるくると回す。
ちらりと見る、隣。
バルコニーの手すりに置かれた透明に輝くもの。
ガラスの靴。
君が落としていった片方。
月光を浴びて、キラキラと煌めいていた。
ぼんやりとそのガラスの靴を見つめながら。
瞳の向こうでは、君のことを。
今夜出会った君のことを見つめていた。
美しくて可愛らしい君。
これまでたくさんの女性に出会ってきたけど。
今夜のように心落ち着かない日は初めてで。
口をつけないワインのグラスをくるくる。
キラキラと神秘的に輝くガラスの靴。
いつまでも頭から離れない君の微笑み…