滝
「ひょわあああああああうぶぅ!」
バッチャン!!!
ブクブクブク…
「ぷはぁ…はぁ…はぁ…水に落ちたから助かった…ていうか暗い!何も見えない!」
どれだけの時間落ちてきたのかも分からないし、ここがどこかも分からない。
周りも何も見えない。
仕方がないので私は、ひたすら背泳ぎで泳ぎ始めた。
そういえばさっき沈んだとき、全く息苦しくなかったなぁ。
あと今も何故かめっちゃ上手に泳げている。
これもシレーヌのお陰なのかな。
変なもの食べさせたのは怒ってるけど、これには感謝しないといけないかも。
私、なんでゲームの中でこんなに泳いでるんだろう。
暗視とか水泳とかいうスキルを貰ったけど、あんまり素直に喜べない。
…そういえばさっきからごぉぉぉぉぉって音が気になる。
なんだろう?
背泳ぎをやめて立ち泳ぎで周りを見てみる。
…なんか遠くに滝がある。
めっちゃでかいなぁ。行ってみよっと。
近くに来た。
めっちゃ大きいし、めっちゃうるさい。
あ、滝の横に上れそうなところがある。
いこっと。
「ひょえぇぇぇ。おっきいなぁ。どこからこんなに水が来てるのかな?
…あれ、なんか滝の裏に空洞があるような…。」
行ってみることにした。
滝の裏には洞窟があり、その奥には大きな祠があった。
なんだこれ?でもこんなところにあるんだから、何かあるはず。
祠の周りを見てみても、何もない。
んー…これを試してみるしかないかぁ。
祠には、何かを置けと言わんばかりの皿が置いてあった。
そういえば、おばあちゃんの家がある田舎では、祠にお供え物を置いてたっけ。
今置けるのはリンゴしかないし、リンゴをお供えして拝んでみた。
ピカッ!!!
『おやおや、こんなところに人間が来るのは何千年ぶりかしら?』
視界が真っ白になったと思ったら、次の瞬間には豊満で美人なお姉さんがいた。
え、空中に浮いてるじゃん!
『こんにちは人間さん。こんなところにどうして来られたの?』
「えっ?えっと、風に吹かれて落ちたら水があって、ここまで泳いできました。」
『あー、なるほど。あなたは人魚の加護が付いてるのね。』
「ふぇ?」
『あなた人魚から卵を貰って食べたでしょう?それが無かったら、水に落ちた時点で身体がバラバラになっていたところよ。』
「うそん…。」
よく考えたら、光が届かないほど深くに落ちたんだから当たり前じゃん。
ゲームだから水は落下ダメージを消してくれるのかと思ってた!
『それで、あなたはここがどこか分かっているのかしら?』
「いや、全く知らないです。」
『でしょうね。いいわ、教えてあげる。』
「あっ、ありがとうございます。」
要約すると、この人は精霊の女王様で、ここは精霊のいる世界とこちらの世界を繋いでいる場所らしい。
こんなところにある理由は、人間が簡単に入ってこないため。
精霊がいなくなると、世界が滅んでしまうらしい。神の代わりに世界を安定させてるとか。
『せっかくこんなところに来たんだし、あなたにおみあげをあげるわ。』
「あ、ドジって落ちただけなのに…。」
『あら、それなら要らないのかしら?』
「いえ、ありがたく頂きますありがとうございます。」
『ふふっ、よろしい。それじゃあペルフェット、いらっしゃい。』
『はーい!』
女王様の横に急に白い穴が現れたと思ったら、中から30cmぐらいの女の子が出てきた。
背中には4枚の透明で綺麗な羽が生えていて、髪の毛は女王様と同じプラチナ。
服は私と似たようなひらひらドレスを着ていて、凄く可愛い。
『この子はペルフェット。私の娘よ。』
『ペルフェットです!よろしくね!』
「え、あ、クララです。よろしくお願いします。」
『この子にはそろそろ世界を知る旅をさせようと思ってたんだけど、あなたが来てちょうど良かったわ。』
「それはなにより…?」
『ペルフェット。クララに付いていって、この世界のことを学んできなさいな。』
『分かりましたわお母様!』
『ということでクララ、ペルフェットのことお願いね。それじゃオマケに、地上に戻してあげる。』
「え、なにこの急展開!?」
『それじゃあいってらっしゃ~い!』
女王様はにこやかに、私たちを地上に送った。
私は足下に出てきた魔方陣から逃れられず、気付いたら落ちてきた崖の上にいたのだった。