船幽霊拾いました
家族で海に行ったら子供が船幽霊を拾って来ました
【甲】:お父さん
【乙】:相方・子供・お母さん・船幽霊
【甲】:「子供って、良く変なモノ拾ってきますね」
【乙】:「そうですね」
【甲】:「こないだもあったんですわ。日曜日に海に行ったら」
【乙】:「何か拾ってきた?」
【甲】:「昼御飯の後にね、拾ってきたんですわ」
【乙(子供)】:「お父さん、これ拾った。飼ってええやろ」
【甲】:「もう、何を拾った? また変なモン拾ってきたんやろ!」
【乙(子供)】:「変なモンちゃう。船幽霊」
【甲】:「船幽霊?」
【乙(子供)】:「うん、船幽霊拾った」
【甲】:「船幽霊って落ちてるんか?」
【乙(子供)】:「向こうの難破船に行ったらな、ついて来たんや」
【甲】:「ついて来た?」
【乙(子供)】:「うん、お菓子あげたらついて来た」
【甲】:「『野良のモンにエサやったらアカン』っていつも言うてるやろ。野良猫とか鳩にエサやって、フン公害になっているんや」
【乙(子供)】:「これ『野良の船幽霊』?」
【甲】:「そうやろ? 『飼い船幽霊』か?」
【乙(子供)】:「誰も飼ってへん」
【甲】:「野良やな」
【乙(子供)】:「船幽霊がな『フンはせえへん』って言っている」
【甲】:「幽霊やからな」
【乙(子供)】:「それからな、『フン』って言わんといてって。『クソ』か『大便』って言ってくれって」
【甲】:「それやったらトイレに出るな」
【乙(子供)】:「前にトイレに出たら『変態』って言われて懲りてて、もうトイレには出たくないって」
【甲】:「だったら昼間に出るな」
【乙(子供)】:「トイレは縄張りが厳しくて、管轄間違うと花子さんに怒られるねんて」
【甲】:「怒られろ。大体な、『子供だけで危ない所へ行ったらアカン』ていつも言うてるやろ。ああ言う所へ行く時は、大人と一緒でないとアカン」
【乙(子供)】:「難破船危ないの?」
【甲】:「危ないやろ、船幽霊おるし」
【乙(子供)】:「そしたら、お父ちゃん、一緒に難破船へ行こう。面白いものあったで」
【甲】:「いやや。また船幽霊とか変なモンついて来たらどうすんねん」
【乙(子供)】:「うん、まだ沢山おった」
【甲】:「まだおんのか。どうにかせなアカンやろ」
【乙(子供)】:「なー、一匹だけでええから。飼ってええやろ。僕、世話するから」
【乙(お母さん)】:「アンタ、飼ってあげましょうよ。生き物飼うのは子供の情操教育にええんよ」
【甲】:「生き物か? 船幽霊って生き物か?」
【乙(子供)】:「なあお父ちゃん、僕がちゃんと世話するって」
【甲】:「そう言うて、飽きたら捨てるやろ? 『親切な人に拾われて』って箱に入れて。それは動物虐待やぞ」
【乙(お母さん)】:「船幽霊って、動物?」
【甲】:「植物か? これ動くで? 光合成せえへんで?」
【乙(お母さん)】:「そうやな? 動物かな?」
【甲】:「子供はな、動物飼ってもすぐ飽きるんや」
【乙(お母さん)】:「そしたらなこうしましょ。うちの実家農家やけど、みんな高齢で田んぼに水やる人おらへんの。田んぼに水入れてもらいましょ。船幽霊って水を汲むんでしょ?」
【甲】:「聞いてみよか。おい船幽霊、田んぼに水入れるか」
【乙(船幽霊)】:「……川に行ったら船幽霊やのうて川幽霊になって管轄が変わる」
【甲】:「また管轄かい」
【乙(船幽霊)】:「……霊の資格は持ってない」
【甲】:「資格(四角)ないのか? 頭に三角あるのに?(両手で頭に三角を作る)」
【乙(船幽霊)】:「……今勉強中」
【甲】:「勉強してんのか。資格取れるか?」
【乙(船幽霊)】:「海の底では教科書が濡れて破れ読めん」
【甲】:「陸で勉強せえ、陸で」
【乙(お母さん)】:「川から出て田んぼに水入れてくれるかな?」
【甲】:「でけへんやろ」
【乙(船幽霊)】:「柄杓を貸せ……」
【甲】:「マイ柄杓持ってないんか? 準備の悪い船幽霊やな」
【乙(船幽霊)】:「柄杓を貸せ……」
【甲】:「ほらな、ちょっと口を利いたら友達面して、すぐ『金貸してぇ』『あれ貸してぇ』や!」
【乙(船幽霊)】:「(大きな声で)柄杓貸してぇ!」
【甲】:「マネすんな! そこは『柄杓を貸せ』やろ!」
【乙(船幽霊)】:「柄杓を貸せ……」
【甲】:「貸してもええけどな、利息は十一(十日で一割)やぞ! 返さんかったら海に沈めるぞ!」
【乙(子供)】:「あっ、船幽霊逃げてしもた。お父ちゃんが『海に沈める』って言うから」
【甲】:「船幽霊も、海で暮らした方がええんや。川に行ったら管轄変わって『川幽霊』になるんやろ」
【乙(子供)】:「さようなら船幽霊! 達者で暮らせよ! 元気でな!」
【甲】:「……手遅れやろ?」
初めて書いた漫才ネタです。