戦犯は連盟長
「うぅ....。」
私は顔を太ももに埋めたまま唸った。
エクスカリビンとかいう謎な聖剣のせいでただいま私は大変なことになっています。
とりあえずトイレに逃げてきたのはいいが、逆にどうやってトイレから出ればいいのかわからなくなってきた。
『おいおい。便器に座るんだったらせめてズボンだかスカートだかわかんないやつとパンツを脱げよ。』
この野郎....。
もうこの聖剣窓から投げ捨ててしまおうかな。
『おっとそうはさせんぞ。今お前がいる場所が全員にバレてもいいのか?』
「はいはい。わかりましたからそれだけはやめてください。ついでに心を勝手に読むのもやめてください。」
『それは俺に死ねっていってるのか?』
「もう死んでしまえんばいいと思っています。」
『そう本気で思っているのが恐ろしい....。』
こいつ本当にうるさいな。もう少し黙っててくれれば優秀な剣だったはずなのになあ....。
『まあでもええじゃないか。昨日とか変なハゲジジイが汗だくになりながら俺のこと振り回してたしなあ。』
「変なハゲジジイ?」
『ほら、お前のところの偉い人だよ。お前に俺を渡した人。話はわかるんだけどハゲジジイってのがなあ。せめて美女じゃなくていいから女の子が....。』
私はエクスカリビンの変な愚痴を最後まで聞かずトイレを飛び出した。
エクスカリビンは今連盟長と話がわかるっていってたよな?つまり連盟長と話したってことだよな?
あの狸ジジイ!許さない!
『おーいロジーさーん!俺置いてかないでくださーい!じゃないと雨乞いの踊り踊ったことをこの会場にいる人全員にぶちまけますよー!』
私は飛び出した倍の速度でトイレに戻った。
周りからの視線が痛い....。
さっきの行動が私の評価をかなり下げたらしい。
私はあまり周りの評価とかを気にしたことはないが、こういう場所となると別だ。
私がエクスカリビンへの怒りのあまり睨んでしまった知り合いの冒険者が怯えたように道を開けた。私はそいつに軽く頭を下げて「ごめんなさい」と言った。いくらエクスカリビンが悪いからといって謝らないのはダメだろう。
「い、いや、気にしてないから。人間そういう時もあるよね。疲れて狂ってしまうこともあるよね。」
「ち、違うんです!」
「分かった分かった、それ以上言うな。お前の名誉のためでもあるんだぞ?」
ダメだこいつ。完全に私が狂ったと思われてる。はたから見たら私は狂っているように見えただろうが。
もうこいつを無視して連盟長を探そうとした時、幹部の一人と目があった。そいつは即目を逸らした。私が違う方向を向くと、隣にいた別の幹部の奴とこちらを指差しながらヒソヒソ話し出した。もう一度そいつの方を見るとそいつは聞かれていたと気付いて気まずそうに明後日の方向を向いた。
今私の評判はどこまで落ちたんだ。朝会った時は期待と尊敬の目で見られてたのになあ....。
それもこれも、クソ連盟長とエクスカリビンのせいだ。特に私にこのゴミ聖剣を押し付けた連盟長のせいだ。私は何も悪くない!そう信じよう!
『お前が活躍しなかったらこんなことにならなかったんじゃね?』
エクスカリビンが私の完璧な考えを読んだのかそんなことを言ってきた。
あの連盟長絶対許さん!!
「連盟長!!」
バタンと激しく扉を開けて私は連盟長室に入り込んだ。
「うわぷっ!」
そして戦犯である連盟長は謎の叫び声をあげて椅子から転げ落ちた。
「ゴホッゴホッ!やはりなっ....うぇほっ!来ると....ひーっ!思って....げはっ!いた....。」
「もう喋らないでください。落ち着くまで待ってあげますから。」
連盟長は相当驚いたらしい。何にむせたのかわからないが、とにかくゲホゲホ言っていた。
机の上には、カバーが何重にもかけてある本とティッシュがあった。そしてなぜか連盟長のチャックは空いていた。
それがエクスカリビンにも見えたのか、呆れたような声で言った。
『おいおいこのハゲジジイやってんなあ....。』
何をやっていたのかは知りたくない。というか知ったら何か大切なものを失う気がする。
「ふーっ。」
「落ち着きましたか?」
「あぁ、落ち着いた。」
「では、続きをどうぞ。」
『お前って意外と優しいんだな。俺に対しては短気なのに。』
エクスカリビンが本当にうるさい。もうこいつ連盟長シメた後返品しよう。
「やはり来ると思っていたぞロジーよ。」
「嘘言わないでください。めっちゃ驚いてたじゃないですか。」
『そうだそうだ、見苦しいぞ!』
今度は連盟長にも聞こえるように話したのか、連盟長がエクスカリビンをひと睨みした。
「お前は黙っておれ!儂も仕事中だったんだ!....話を戻そう。ロジーよ、お前が聞きたいこと、知りたいことは儂はもう知っている。その聖剣のことだろう?」
「これ以外になんだっていうんですか?これ以外はあなたなんかに話すことなんてありませんよ?」
「相当嫌われとるなあ....。それでは、お前が知りたがっているその聖剣の話をしよう。」
連盟長は、そう言って長そうな話を始めた。
それは一昨日の朝のことだ。夢に神が出てきて、こう言った。
「今日から貴様にとある聖剣を託す。その聖剣は、19になるまでに数々の偉業を成した英雄の手に渡るだろう。そして貴様には、その聖剣をその英雄に渡すことを役目とする。その役目、忘れないように。」
そして、儂は目が覚めた。
なんだったんだこの夢はとずっと思いふけっていると、「妻が庭にうるさい剣が落ちている」と言い出した。儂は当初は何をバカなことと思っていた。だが、やがて儂にもその声が聞こえてきた。その声は、若い男のものだった。
驚いた儂は、庭に走って出た。すると、そこには妻の言う通りうるさい剣が落ちていたのだ。
その剣は、ところどころ金で飾られていて、そして、その剣は儂の記憶の通りだと「カタナ」という剣だった。そこで、儂の考えは繋がったのだ。19歳で数々の偉業を残した英雄がロジーのことで、そしてロジーに渡すという聖剣がこのエクスカリビンだということがッ!!
なんて迷惑な推理なんだ。
「もうあなたでこの剣の切れ味を確かめちゃっていいですか?」
「それはやめろ!」
『俺もそれはやだ!』
でもこれで分かったことがある。神様がこの中身はどうとして普通に強そうな聖剣を私に渡したということはこれからまた大きな戦いがあるということだろう。
私は戦いで生きている人間だし戦いで己を鍛えようとしているのも確かだが、大きい戦いはもうこりごりだ。
この前戦った竜王とその子供たちとかとはもう二度と戦いたくないくらいだ。
またもや私の心を読んだのかエクスカリビンが肯定するように言った。
『俺も強い敵とは戦いたくないな。だって強い敵っていうのはだいたい硬かったりヌメってたりするだろ?そんな奴に俺の体を打ち付けられるって考えるとそれだけで悪寒が走るぜ....。』
「私もこの聖剣と考えが合うということ以上に強大な敵と戦うことに悪寒が走りますね。」
『お前その丁寧な喋り方の割には結構エグいこと言うよな。』
エクスカリビンが皮肉っぽく言って来るが気にしない気にしない。
と、そこに連盟長が目をキラリと光らせて言った。
「まあお前達がそう言うだろうと思ってな。儂に考えがあるのだ。聞きたいか?」
「いえ?」
『全然?』
連盟長が少し涙目になりながら続けた。
「そ、そうかそんなに聞きたいか。それはな、お前らに王都に引っ越してもらいたいんだ。」
どうも、古丸助左衛門です!
今回は、前回よりちょっと短めになりました。
キリがいいところで止めるって難しいね!
内容の解説は、ありませぬ。
というかどうやって解説しろと....?
そこはコメントで教えてくだされば嬉しいです!
読んでくれた方、ありがとうございました!