◇第一章「なんで俺がこの村のスーパーバイザーに!?」②
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そんなこんなで、村長と対峙しているわけなのだが。
村長は眉をひそめ、ワナワナと小さく震えている。
「俺、また何かやっちゃいましたか?」なんてレベルじゃないくらいやらかしてしまった。
端的に言うと、ガビラの羽根がヤバいアイテムだった。
あのハゲからもらった後、嬉々としてガビラの羽根を足元に叩きつけた。
なんか、もっとこう、魔法的な、不思議な力的なものでワープが出来ると思い込んでいたのだが、全然違った。
気づいた時には爆音で鳴く大きな鳥(わかんないけど、多分ガビラ)に、頭を噛まれ、空を飛んでいた。
「ギェェェェェェエエエ!!!! ギェェェェェェエエエ!!!!」
「降ろして! 降ろして! って、あぁっ!!」
腰巻の結び目がはらり、ほどけて飛ばされていった。フルのチンである。
「やっぱり! 降ろさないで! 降ろさなアァァァッ!」
「ギェェェェェェエエエ!!!」
家らしきものの真上で、ガビラは無情にも俺を離した。
そこからは、想像通りだ。
屋根を突き破り、登場する俺。
ガビラの体液でテッカテカの顔。
焦げた左乳首。
一糸まとわぬ下半身。
とりあえず、右手は下半身を守り、左手は乳首を守り、立ち上がってみた。
ーーそこで、先ほどの状況へと戻る。
「なっ……なっ……!」
村長らしきご老人は、狼狽しきっているご様子。可哀想に、無理もない。
さぁて、どうしたもんか。この状況で俺がまともだと、自ら証言出来るのだろうか。
まずは一つ一つ、釈明していくしかない。
「左乳首は……マラでして……」
「なっ……!?」
「顔のは、よだれなんスよ。ヘヘッ……」
……
しまった! 逆境こそ笑顔で乗り切れ! が逆効果になってしまった悪い例である!
だめだ! どうやら俺もまともじゃない!
「だれかぁぁぁぁ!! であえ! であぇぇぇ!!」
村長は腰を抜かしながらも、声にならない声を振り絞って、助けを呼んでいる。
そしてすぐさま、男A・B・Cが駆けつけた!
「村長! どうかされましたか!? あっ!!」
三人は一斉に、破壊された天井を見上げる。村長はふるふると小刻みに首を振りながら俺を指差した。
「……なっ!? えっ?」
「とっ、とりあえずひっ捕らえろォォ!!」
一人が声を上げ、俺を羽交い締めにする。
「ちょっ、やっ……! 恥ずかしい……やっ……!」
「この変態め! 牢獄にぶち込んでくれるわ!」
牢獄!?
俺は急に異世界に飛ばされて、濡れ衣で変態という烙印を押されて、挙句に牢獄にぶち込まれるのか!?
どうすればいい? 考えろ……考えろ!
ーーそうだ!!
「もうじきにィ、この村も潰れるなァァァン!!」
ピタリと、男たちの動きが止まった。
「赤字は毎年何億だろうネェ? あれ、もしかして、財政破綻とか、そういう話し合いとか進んじゃってる感じィィ?」
少しキャラ設定を間違えた感があるが、とりあえず動きは止められた!
「きさまッ! なぜそれを……」
「見りゃあわかるぜェ! 店の商品の質、宿屋のサービス、酒の味、そして建物の立地ィ……」
申し訳ない! 見てないけど!
くそっ!羽交い締めはほどけない。テカテカ、フルのチン状態で恥ずかしいがしょうがない!
「俺様はァァ!! この村! ヤタワの村おこしにやってきた! 伝説のスゥーパァーバイザァー!! ァァッ!松田様ヨォォーー!!」