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◇第一章「なんで俺がこの村のスーパーバイザーに!?」


村人に情報収集を図るも、わかったことはたった二つ。


・最近外には魔物が増えたから、出歩かないほうが良い。

・村長の家は、西の小高い丘の上。


もう、村長の圧がすごくて。老若男女問わず、村長村長の言うてます。

 そして幸運なことに、こんなノースリ奴隷スタイルの俺ともみんな、自己紹介なしに会話してくれる。寛容な村。


 さてこれからどうしようか?考えながら酒場でちょびっと酒をあおってたら、だんだんとハイになって、この状況を楽しもうとする自分がいた。

 異世界と現実世界の違いは何だ?異世界といえば……呪文!呪文だ! 簡単なのなら使えるかもしれない!


 村長の家のふもと、石畳の上でそれっぽく構える。

俺のRPG経験を元に、算出された初期呪文。右手を大きく広げ、そのまま大きく腕を伸ばす!

「……マラ!!」


ーーボッッ!

 成功だ!


しかし問題なのはこの呪文、あろうことか左乳首から小さな火が出る呪文だということだ!

「あっつ!あっつぅ!」

ライターくらいの火種は、俺のノースリーブに容赦なく燃え広がる。

思わず走り、井戸へ飛び込んだ!

「……プハァァ!」

井戸から上がると、左乳首はピンピンしていた。しかし布が焦げて、そのピンピンの左乳首があらわになっていた。

ノースリーブは、ワンショルダーへと変化した。マラを繰り出すための専用装備となってしまった。



 井戸へ飛び込み、酔いが覚めた俺は、女子のようにいそいそと乳首を隠しながら、村長の家への階段を上っていた。

結構人通りがあって、向かいから屈強な男が来るたびに「やっ……!」と身体をくねらせて乳首が見えないように努めた。その甲斐あってか、今のところ貞操は守られている。


 それにしても、何回身体をくねらせただろうか?振り返ると、まだ階段の中腹付近なのだ。

勘弁してくれ…

傾斜のある階段を見上げると、また向かいから屈強な男が下りてきた。

「おい、小僧!」

スキンヘッドが眩しい、屈強な男に見下される。

俺のカラダは男の影にすっぽりと覆われた。この体格、この人相、この風貌……間違いなく山賊に決まってる!

「やっ……!」

ぎゅっと目を瞑り、身体をくねらせて抵抗の姿勢を見せる。

恐る恐るゆっくり右目を開けても、男は立ち去る気配がない。

ーー俺はまた、マラを唱えないといけないのか……

村長の家の階段で、左乳首を出して死ぬくらいなら、俺はこいつを倒す!

 覚悟を決めて、目を瞑る。

バッッ!と両腕を広げ、右手を前に出す!

「…マ「小僧!これをやろう!これで村長の家にひとっ飛びだぞ!」

突き出した右手に、何か袋を握らされた。プスプスと乳首から出た煙が焦げ臭い。

袋の中身は、鳥の羽根? のようなものだ。

「これは…?」

「ガビラの羽根だよ!これを投げれば行きたい場所にひとっ飛びさ!」

そう言うとお兄さんは、良い旅を! と豪快に笑いながら階段を下りていった。


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