プロローグ『惨劇の始まりの悲劇』
時は遡る…。
今から2000年以上も前…。
人の世に"鬼"という存在があった…。
彼らは人間の"上位種"。
"自然界の頂点"…"全生物の王"として…古くから恐れられていた…。
京都…大江山…。
「いたぞぉぉ‼︎」
甲冑に身を包んだ男達は燃え盛る炎の中…刀や槍を手に、大声を上げて走る。
「化け物め‼︎」
「皆油断するでないぞ!相手は…
かの凶暴な"妖"…"酒呑童子"なのだ‼︎」
「ハァ…ハァ…」
炎に包まれる朱塗りの屋敷のむこう…しんしんと降る雪の庭に、1人…息を切らした女性が膝をついている。彼女の純白な着物に、点々と…血が滲んでいる。…その周り、大勢の武者が彼女を囲む。
雪に透けて溶け込む白く長い髪。大きく美しい銀色の瞳。生々しく生えた2本のツノ。まぶたから伸びた紫の模様…。その姿は、どこか…"人間離れ"している。
そんな彼女の前に、1人の男が歩み寄る。
ーー源…頼光っ…!
女性は男を睨む…。
男はゆっくりと太刀を抜き始めた。…きらびやかな刀身が降り積もろうと落ちる雪の結晶を帯びる。
「覚悟はできたか?…"酒呑童子"…」
男はそのまま太刀を構え、夜空へと振り上げる。
「人間…共……め…」
太刀は…静かに彼女の首へ降りおりる。
ーー呪ってやる…っ…‼︎
こうして…大江山の妖…"酒呑童子"は…命を落としたのだった…。
そして…現代…東京…。