第七話 異世界事情・Part1
こんばんは。五月雨葉月です。
GW2日目、いかがお過ごしでしょうか?
僕はずっと物語を考えていました……
しばらく毎日を暇して暮らしつつ、知識を猛吸収していた日々が二年間ほど過ぎ、三月の体も生まれたての赤ちゃんから、すっかり大きくなった幼児の体になっていた。
三月も、体が随分と成長した。
五ヶ月もしないうちに歩くようになり、歩きたくても歩けない生活が終わる、と喜んだ。
周りが驚く程の驚異的な早さで歩けるようになった三月は、その頃から、異世界の言葉を知ろうと特訓し、今ではほとんどペラペラにしゃべれるようになっていた。ただし、幼児の未完成の体の為、しっかりと発音が出来ていない部分もあるのだが、それも可愛い、と家族や王城に仕える使用人から天才だ、などと可愛がられていた。
言葉を知れば、文字を読み書きし始めるのも早い。
ある程度は読めないものの、分からない部分は誰かに聞くなどして文字を覚えた三月は、文字の練習も始めた。
日本語では無いものの、ギリシア文字に似ている字だったので容易に習得することが出来たのだった。
前世、文系や専門科目が得意だった三月だが、医学部を卒業した程度にはは、理系もそれなりに出来た。
文官が難しい、難しいという計算や問題を、王妃(以後、母)につれられ見学しに行った時に、
(あ、計算あそこから間違っている)
や、
(ここはあの資料を使った方がやりやすいのに……)
などと心のなかで意見を述べていた。
言葉にしないのは、あまり目立ちすぎて注目されたくないのと、やり過ぎると大変な目に逢うと経験から推測したからだった。
そして三月は、この世界について調べるうちに、沢山の事について学んだ。
まず三月は、ローズ大陸、シスタリア王国第一王子、ルイス・レイ・ラ・シスタリアという名前であり、皆からルイスと呼ばれていた。(以降、ルイス)
父親は、シスタリア王国国王、アーノルド・レイ・ラ・シスタリア。(以降、父)
母は、シスタリア王国王妃、リーズ・レイ・ラ・シスタリア。
二人は共に三十過ぎの、この世界では比較的遅めの結婚だった。
この世界の総人口は種族関係なしにおよそ七億人。
シスタリア王国が使用する言語に当たる共通語圏の人口は五億人、シスタリア王国のみで六千万人の人口を抱えていた。
うち王族・貴族は、二万人である。
一般国で生活する種族は様々で、
例えば、ルイスのような人族。
おなじみエルフや獣人。
いわゆる人魚のような魚人。
腕が羽になっている鳥人。
範囲の設定が難しい亜人。
ルイスは、世界の半分ほどを占めると言われる人族だ。
他にも様々な種類の種族がいるが、他の異世界には少ないであろう、妖精や精霊も存在する。
種類によって違うが、大抵はイメージ通りの小さく羽の生えた可愛らしい姿をしていて、とても神聖な存在と言われているらしい。
王城にも、沢山の種族の使用人がおり、ルイスが見た、一番始めのメイドも、ネコミミの生えた猫の獣人であった。
ルイスはまだ理解出来ていない頃で、見逃していたが。
妖精は、手のひらほどの大きさで、背中に羽が生えている可愛らしい存在だ。
ただ、基本的に自分の住んだ土地から動こうとせず、人里離れた深い森の中や、洞窟などの場所に妖精だけの街を作り、暮らしている事が多い。
そんな事情もあり、町などで見かける妖精は、相当他種族との交流が好きな妖精だと言われている。
精霊は、精霊の中でも八つの種族がいる。
水の精霊・ウンディーネ
火の精霊・サラマンダー
風の精霊・シルフ
地の精霊・ノーム
光の精霊・ウィルオウィスプ
闇の精霊・シェイド
太陽の精霊・ソレイユ
月の精霊・ルナ
精霊は、人間と同じくらいの背丈で、普段は、同じ種族だけが暮らす町などで暮らしている。
この町には、特殊な結界があり、同種族以外は、許可された者以外、誰も立ち入れないとされている。
結界が張ってある範囲では、同種族以外には何も無いように見え、立ち入っても、反対方向に強制瞬間移動させられる。特殊な結界であり、魔力の移動もない事から、された側を気づくことなく通らす事が出来る優れた結界だ。
色々な種族と町で暮らしている精霊も一定数いると推定される。
精霊の種類は、魔法の属性の数と言われている。
この世界での魔法とは、五百年ほど前、当時まで主流だった、一部にしかいない魔術師のみが使えた魔術の超進化バージョンである。
当時、魔術が使える者は大変珍しく、戦いなどでは重宝され、各国では魔術師の確保が一番の国策とされてきた。
しかし、ある魔術師の、天才的な改革によってそれは意味を成さなくなった。
その魔術師の名前は、ダニエル・テールズ。
王国の小さな町の出身で、子供の頃から魔術を使い、冒険者として活躍していた。
成人(十五歳)してからは、大きな地方都市に出てきて、かなり有名な冒険者グループの一員として活躍した。
三十直前、突然現役を引退したダニエルは、自身の稼いだ膨大なシル(シスタリア王国の通貨。日本円と同じと考える)を魔術の研究につぎ込んだ。
毎日のように妖しい光や破裂音が彼の研究所兼自宅から聞こえてくるため、近所の住民から噂され不気味がられた。
しかし、十年がすぎ、我慢出来なくなった近所の人が次々に引っ越し、周りに空き家が目立って来た頃。
ついに研究の集大成とも言える、神業と言っても誰も否定しないような発明をした。
それは、魔法。
普通の異世界やファンタジー世界には当たり前に存在する魔法である。
なぜ魔法がそれほどまでの大きな発明なのか。
従来までの魔術は、膨大な魔力を持ち、さらにその中でも自在に魔力を操れる人物しか使うことが出来なかった。
さらに、長い呪文の詠唱。魔力を操る並々ならぬ集中力。そしてそもそもの適応力が無いと一切使えなかった。
しかしダニエルは、魔術のメカニズムを解明したと考えられ、精霊と同じ、水、火、風、地、光、闇、太陽、月の八属性に魔法を割り振り、この星に存在するすべての生物が必ず持つ魔力に対して、魔力こ抵抗なく使用することができる魔法を作った。
人によって得意不得意はあるものの、全ての人々が身近に魔法を使えるようになった。
低級魔法から最上級魔法という威力による違いや、人々の持つ魔力や、適応力などを計算して、魔法を使うに当たってのランクを設定したりした。
これをダニエルは惜しむことなく世界に公表し、今までの常識を覆す素晴らしい発明だ、などと称賛の嵐を受け取った。
ただ、どのように魔法を発明したかはダニエル本人以外不明で、さらにダニエルも既に亡くなっている事から、各国では魔法についての研究が急がれている。
誰でも使える魔法の登場により、一部の、魔法を良い物としてではなく、戦争の手段にしてしまおう、という国もあり、戦争に発展した事もあるのだが、それはまた別の話。
ルイスは、ここまで整理し終わると、はぁ、と一息をついた。
あまりに訳の分からない新知識の連続で頭を悩ませていたのだった。
「さすが異世界。日本とは根本的にやり方を変えなくてはね……」
今更ながら当たり前の事に気づいたルイスであった。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます!
次回は、異世界事情・Part2、世界情勢になるかと思います。
文にした設定はほんの一部です。
いずれいずれ、シリーズ通しての設定や、用語を上げたいと思っていますので、よろしくお願いします!
ブクマ、ご感想、ありがとうございます!




