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第五十八話 ゴスロリ

 色々なことはあったけれども、無事にお店に着いた私たちは早速店内をウロウロしながら気になる服を探していた。


 もちろんまだ大人用の服を買ったって大きすぎて、どうせしばらく着れないでしょう。でもこのお店は王都で数少ない子供向けの服もたくさん扱っている高級ブランドで、たった今リリーが指をさしている、赤くてフリルが山ほど沢山ついた服も、貴族の子女に大人気らしい。でも――


「ミウ、こんなのもあるわよ?」

「うーん、ちょっとふりふりが派手すぎるような……」


 そう。何故か日本のゴスロリやコスプレにありそうな、というより絶対にあるだろうと思える派手なデザインのドレスやワンピースなどを中心に扱っているようで、女装する時にはキャラクターがいつも着ていたり、アイドルものの衣装とかでない限りあまり派手なものを着なかった私には、少し敷居が高かった。


「もうっ、さっきからそればっかり!」

「これ、最近の流行(はや)りらしいですよ?」


 と、言われても……。私はドレスみたいな派手なものではなく、普段着やお出かけのときに気楽に着れるようなシンプルなものが、でもその中に可愛さのある服が好きなのだ。

 

 それに比べて……。


「なんで黒っぽいのしかないのよ……。街中でこういうのを着たら目立っちゃう……」


 ため息をつきながら改めて周りをみわたすと、ヘアコームやドレスハット、キャノチエのような髪飾りや、ケープやボンネットのような、まさに貴族と言えるアイテム、極めつけは姫袖やジャンパースカートまで、原宿にありそうなゴスロリ専門店とかの範疇ではなく、ゴスロリという趣味ではなく、生活の中で日常的に本当にこういう服を着用している人々が暮らす世界独特の空気が伝わってくるお店だった。


 この世界ではこういう服を着ても、日本みたいにひそひそ指を指される事もなく、逆に貴族の子女の証として人々から憧れを持たれる対象でもあるのだ。


「リリー、さすがにこういうのは、ちょっと……」

「あら? 日本ではあれだけ目を輝かせて着てたのに」

「それはイベントだからでしょう? さすがに普段から着るのは大変だよ」

「でも一つくらいは買っていきましょうよ。きっと似合うと思う!」

「……リリーがそう言うのなら」


 そう言われたら買うしかないじゃない。不承不承ながらも、先程から見ていて少し気になっていたものを買うことにした。こう言うときにコスプレ心をくすぐられるから困るのよ……。


 その後、ゴスロリに比べたらほんの少ししかスペースが取られていないような、シンプルな外出着をいくつか購入し、更に部屋着や下着ももちろん購入した。


 久々にショッピングをしに来たというリリーと、国では危なくて外出すら出来ず、全て家臣に頼んでいて初めてショッピングを体験したマキ、それぞれの服を合わせたら相当な量と価格になった。

 日本の価値として見てみたら、国会議員だった私でも目を回して倒れてしまいそうな、恐ろしい値段だったけれど、実際には今日持ってきたお金の半分も使わなかった。


 荷物を近衛騎士に持ってもらい、三人で仲良く話をしながら王城に帰る頃には、すっかり太陽が傾き辺りを紅く照らしていた。石畳に反射している淡い赤色がとても綺麗だった。


「今日は楽しかったですね!」

「うん。ミウ、女の子のショッピングはどうだった?」

「すごく楽しかった! 男でいると分かんないような楽しさがあっていいわね!」


 そう。僕はそうでもない人だったけれど、大抵の男の人のままだったら、当に退屈してしまいそうな長い時間の間でも、飽きることなくずっと楽しんでいられた。本当に男の人と女の人の目の見え方は違うんだな、感じ方も違うんだな、と改めて思った一日だった。


「でしょ? ……また三人で行きましょう!」

「はい!!」

「うん!」


 ぎゅっと手を握りあって、夕日が美しく照らす王城へと続く坂道を登りながら、私たちは大切な約束を交わした。第五十八話 

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小説家になろう 勝手にランキングとは、めい様が作成したおよそ45万作品が登録されている、とても大きな非公式ランキングサイトで、作品に設置して読み手の方がクリックする事で点数が入るシステムで────」 「もうっ、また始まった。……良かったら投票してくださいね?」
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