第五十一話 メリー・クリスマス!!
番外編です!
「はいリリー。……はいマキ」
「ありがとう、ルイス」
「ルイス、ありがとう!」
ワイングラスにジュースを注ぎ、それを持って、僕のせ~の、に合わせて声を合わせる。
「「「メリー・クリスマス!!!」」」
グラスを、カチンッ! と合わせながら乾杯し、少し口に含むと、早速自分たちで作った料理に手を付ける。
そう。今日はクリスマス。
年に一度のお祝いだ。
と言っても、この世界にクリスマスの概念がなく、必然的にマキも知らないわけで、説明してもイマイチ分からないようだった。けれど、お祝いだ~!! とはしゃいでいた。
旅の途中に立ち寄ったここは、シスタリア王国の第二の都市とも言われる都市。……の近くにある村だ。
騒がしい都市の中よりも、静かな所が好きな事もあって、都市に寄って用事を済ませると、さっさとこの村へと、都市の喧騒から文字通り逃げてきた。
村の外れの森の中に、いつも魔法で収納して持ち運んでいる小さなログハウスを村人に見つからないように設置すると、クリスマスの用意を始めたのだった。
ハロウィンの時よりはマキの慣れもあって楽に料理が出来たけれど、今回はターキー、つまり七面鳥という強敵がいた。
七面鳥は中々数が少ないようで、都市にも売っていなかった。仕方なく村に来て、鶏でも買ってローストチキンにしようかと農場を訪れた時、たまたま七面鳥見付けたのだ!
七面鳥を丸々一匹村の農場から買った僕たちは、あらかじめ調理がしやすい様に切っていてはくれたものの、味付けやらを自分たちでしなければならず、レシピを思い出すのに苦労した。
「七面鳥、どうかな?」
「……っ~!! やっぱりルイスの料理は最高!! 懐かしい!」
「……………………」
リリーは褒めてくれたものの、マキは夢中で食べていた。まぁ美味しいという証拠だろう。
我ながらに結構うまく再現出来なかな? と思っていたりする。
「おいひいれす~!!」
マキが一旦休憩とばかりに、ワイングラスを持ちながら言う。
取り分けたマキの分があっという間に無くなっていた。
「びょ、平等に分けたはずなんだけどな~」
「マキ、食べるの早いね~」
「だって、ごっくん。……だってすごく美味しいんだもん! ……私が国に居たときは、怖くて味わって食べていられなかったから、ね?」
そう言われてハッとした。
「……そうだった。…………好きなだけ、食べていいからね?」
「ほ、ほんと!?」
「もちろん! あっ、でもちゃんと味わってね?」
「もちろんっ! ありがとう、ルイス、リリー! 大好き!!」
一瞬暗くなった空気もつかの間、あっという間に暖かな空気に満ち、幸せな空気に戻った。
僕とリリーは揃って顔を見合わせると、クスッと笑い、止まっていた手を動かし始めた。
他に用意した料理もどれも最高で、また一つ、幸せな想い出を増やすことができた。
二人が小さな寝息をたててぐっすりと眠っている。
そんな中で僕は一人目を覚まし、二人にバレないようにそ~っとベッドを抜け出した。
「んっ……。す~、す~……」
「えへへ、むにゃむにゃ。おいしい……」
リリーの可愛らしい寝顔に癒され、マキの寝言を聞いて笑いそうになりながも堪えつつ、床に降り立った。
そしてベッドルームを出て、暖炉の前に飾ったツリーの前に移動する。
このツリーは、昼間全員で、近くに自生していた本物のモミの木を採ってきて飾りをつけたものだ。
ツリー下に手をかざして魔法を使う。
小さな光と共に、包装紙とリボンで可愛くラッピングされた三つのプレゼントが出現し、見事、あるべきクリスマスツリーの姿に変身した。
「……うん。これでよし」
「…………ミキ?」
「祈!? なんでここに?」
満足して頷いた瞬間、後ろから祈――――リリーに声をかけられた。
びっくりして慌てて振り替える。
するとそこには、これまた三つプレゼントを持ち、こちらへやって来るリリーの姿があった。
「えへへっ、クリスマスプレゼント♪ サンタさんからの贈り物♪」
「祈も?」
「もちろん! クリスマスにはプレゼントがなくっちゃ」
声を潜めて会話をする。
祈は話ながらプレゼントを一旦床に置き、そしてツリーの下に丁寧に並べ始めた。
「……よいしょっ、これでよし」
「祈は何をプレゼントにしたの?」
ちょっと気になって聞いてみる。
すると、口の前で人差し指をたてて、可愛らしく、しっ! と言うと、
「明日の朝までの秘密♪」
と言った。
「そっか。……楽しみにしてるよ」
「ふふっ、私もミキのプレゼント、楽しみにしてる♪」
僕たちはそっと抱き締めあい、キスを交わす。
「ちゅっ♪ ……メリークリスマス、祈♪」
「ちゅっ♪ ……メリークリスマス、ミキ♪」
翌朝、プレゼントに驚きつつも喜ぶマキを見つめながら、僕たちはそっと笑いあい、もう一度キスをした。
ちゅっ♪
メリー・クリスマス!!
……なぜ料理がネタになることが多いのか、作者にも未だ分かりません(笑)
次回は年越し回になるかな?と思います。
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