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第四十九話 永遠の血・Ⅱ

 ベッドボードに背中をあずけ、ベッドの上で女の子座りをするリリー。

 僕はその向かいの床に正座してリリーを見上げていた。

 リリーは落ち着いては来たものの、布団を口元まで覆い、怯えた様子でこちらを伺ってきた。


「ルイス――――ミキなの……?」

「う、うん。僕だよ? 気づいたらこうだったけれど……」

「…………しょうこ」

「えっ?」


 気を付けなければ聞こえないような小さな声でリリーが囁く。


「あなたが、ミキっていう証拠、教えて。私はあなたみたいな女の子、知らないし、見たこともない。ミキが女装好きだったのもあるし、今のあなたもルイスに似てる。でも、信用出来ないし、確証を持てない」


 だからあなたがミキだって言うのなら、それを証明して。そうリリーは言った。


 証拠…………。それならば日本での二人の思い出しかないだろう。二人の思い出は、この世界に来てからも全て覚えている。


 日本で幼い頃からずっと家族同然に暮らして来た僕と祈。小さな頃から全て、一秒たりとも忘れていない。


「…………」

「ないの?」

「……僕たちの関係が変わった時の事、覚えてる? 祈が中学校を卒業した次の日の事」

「……うん」


 僕は心の奥に大切に大切にしまってある思い出を、ぽつりぽつりと語りだす。


「祈の卒業式が終った後、見つからないように校舎から離れた大きな桜の下に行って僕が言った言葉」

「…………」

「僕は一言一句、息継ぎのタイミングも忘れずに覚えてる。そらくらい大切な事だったから」


 そして僕は心の扉の鍵を開け、今でも忘れはしない、告白の時に言った言葉をもう一度言う。


「『ずっと今まで幼馴染みっていう、兄妹みたいな関係だったよね。……僕は祈の事が、昔から、始めて会ったときからずっと大好きです』」

「…………」

「『ずっとずっと、今この瞬間も、これからの未来も、祈の事が大好きです。愛しています。僕と――――』」

「「『――――僕と結婚してくれませんか』」」


 祈と僕の声が重なる。

 あの時、本当はちゃんとした言葉を考えていた。でも、やっぱり祈には自分なりの言葉を伝えよう、自分の言葉で伝えなきゃいけない、そう思った。


「覚えて、くれたんだ?」

「……当たり前。私と……、私とミキの、大切な思い出だから」


 いい終えた後、祈にそっと近づいて抱き締める。


「僕だって、分かってくれた?」

「……さいしょから、しってた」

「…………。そっか」


 耳元で囁く。

 顔を赤らめて頷く祈。恥ずかしがる祈も可愛い。

 早く大人にならないかな……。早く結婚したいのに。


「また女装したの?」

「……これが女装に見えるの?」

「前のミキを知ってれば、ね」


 僕、そんなに違和感無かったのか……。とあの頃を思い出して懐かしくなる。


「朝起きたらこんな体になってた……」

「本当にルイスをそのまま女の子にしたみたい。私が大きければすぐ抱っこして頬擦りして抱き締めてたかな」

「僕は早く大きくなってリリーをお姫様だっこしたり、キスしたり、抱き締めたいけれど」

「…………キスなら今でも、出来るよ?」


 そう言うと僕の唇にじぶんのそれを触れさせるリリー。


 ちゅっ♪


「り、リリー、さすがに今の僕たちじゃ問題が……」

「私は気にしない。だって、ルイスはルイスでしょ?」

「そうだけど、女の子の姿では問題にならない?」


 そこまで僕が言うと、リリーが目をぱちくりさせ、きょとんとしたように僕へ言ってきた。


「ルイス、知らなかったの? この世界、かなり同性同士の恋愛に寛容なのよ?」

「えっ、そうなの!?」

「うん。結婚しているカップル達の三割が同性婚よ?」

「へぇ~。そうなんだ……。なら、問題ないね?」

「うん。全く」


 そしてまたキスを繰り返す。


 ちゅっ♪ ちゅっ♪ ちゅぅぅぅっ、ちゅぅっ♪


 どれほどの時間が経っただろう。僕たちのキスは終わりを知らない。いつもそうだ。始めたら何かがあるまでず~っとキスを続ける。空白の八年間を取り返すかのような勢いで。


 途中で誰かに見られても、どうせみんな知っているからと途中で止めたりしない。それが例えお父様であっても、お母様であっても。


 そのクセで、今日もまた、足音がしてもキスをずっと続けていた。ノックの時も、扉が開くときも。


「ルイス、リリー! 起きてる~?」


 マキだ。いつもの事なので放っておいてキスを続け――――と、僕たちは同時に、ある可能性に思い至った。


 ……マキは僕のこの姿を知らないから、もしこの状況を見られたら誤解されるのではないか、と。


「あ、起きていらし、た……の…………」

「ぷはっ……。ま、待って、これは――――」


 違うんだ、と言おうとした所で、マキの驚きの叫び声が王城中に響き渡った。


「だ、だ、だ、誰ですかこの女の子!!?? リリーが、リリーが浮気してるぅぅぅ!?」




 ……その後、叫び声を聞き付けたお父様やお母様までやってきて、誤解を解くのにものすごい時間がかかってしまったのは、また別の話だ。

まだ続きます!


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