第四十六話 ルイス・十歳~前夜~
なんだか重い話になってしまいました……
明日は僕、ルイス・レイ・ラ・シスタリアの十回目の誕生日だ。つまり、この世界に来て十年が経つ、という事でもあって、二つの意味で感慨深いものがある。
日本での二十六年間、そしてこの世界の十年を加えると、もう三十年以上、四捨五入したら四十年も生きていることになるが、心は今でも日本に居たときと何ら変わりはない筈だ。
心なしかこの世界での生活は感覚として速く、そして沢山の思い出がある大切な記憶でもある。
何故か日本での生活も色褪せないまま昨日の事の様に覚えているし、今でも年相応の体の機敏さが無い事を除けば、日本に居たときと同じことが出来る筈だ。
それに、今では日本でも出来なかった魔法を使う事が出来るし、日本で得た知識をこの世界で活用し、王子といういずれ国を引っ張って行く立場を最大限に利用して、日本で夢半ばに途切れた政治の道を進んで行くことも出来る。
おっと、つい話が長くなってしまったけれど、結論を言えば、やはり生きるって素晴らしい、そう言う事だ。
生きている限り、好きなことが出来る。今できなくとも、いずれ出来るようになるかもしれない。そういう希望があってこそ人々は一生懸命生きることが出来るんじゃないか。そう思った。
一度死んだ身としては、この経験はとてもありがたく、そして何より祈――リリーと一緒に居られる、ということが幸せだ。
……こんなに話が長くなるなんて、やっぱり精神の年齢は誤魔化せないのかもしれない。
心は未だイラストを描いて、アニメを見てのオタクだけれど。
十年が経って、日本にいるみんなはどうしているだろう。
お父さんにお義母さん、みーちぇ、うみ、議員仲間――――今少し考えただけでも大勢の顔がすぐに浮かんでくる。
……懐かしい。
今でも日本に戻りたいか。そう聞かれれば、もちろん戻りたい。でも、やっばりこっちでの生活も悪くない。そう思ってしまう自分に、やっぱり自分は自分だ、と安心する。
「でも今は、こっちの事を考えなきゃ」
明日は十歳の誕生日。
僕と、リリーの生まれ変わりから十年が経つ。
これからも、願わくばみんなで幸せに暮らせますように…………
次回からは通常営業!!
登場人物おさらいは適度なタイミングで入れさせて頂きます。
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