第三十九話 お付き合い
もうすぐ40話!そしてもうすぐ本編投稿開始から半年になります!
投稿開始から丁度半年目に当たる10月の23日には何か大きな事が出来たら良いな、と思っています。
しばらく抱き付き合っていた僕たちは、しばらくして再び歩き出した。
プロポーズのせいで恥ずかしくて、お互い真っ赤になりながらも、指を絡めて手を繋いで歩く。こんなに幸せな時間を、本当は八年前に掴みとりたかったけれど、事故のせいで延びてしまったのは少し悲しい。
これまでの間、ずっと会えなかったから。
八年前から、おおよそ2292日。
今日までずっと捜し続けてきた末の再会。これほど嬉しい瞬間は多分これからの人生でも起きないだろう。
そう思えるほど、今までの人生34年間で最も幸せな瞬間だった。
チラッと祈────否、リリーを見ると、丁度リリーと目が合ってしまった。
「「っ!?」」
慌てて目を背けて俯いてしまう。
本当に恥ずかしくて顔から火が出てしまうんじゃないかと思うくらい、甘くてそこばゆい、幸せな時間だ。
お父様の部屋に着く。
(少しだけ、離しても良いかな? 少しだけだから)
(うん……)
リリーに目で問いかけ許可を貰うと、名残惜しくも絡め合う指の力を抜いてほどく────────事が出来なかった。
「あっ……」
「やだ」
「でも…………」
「離れたくない。離れないでぇ……。ぐすっ。……お願い。もう、二度と…………」
「……分かった」
リリーが、祈が離れてゆく指を指先で再び絡ませ、僕の身を引っ張って正面から抱き付き合う格好になっていた。
待ち望んでいた可愛らしい声で、必死に離れたくない、離れたくないと言ってきてくれる。もう絶対に離れない。二度と、永遠に。
キスをして、ギュッと抱き締めて、またキスをして。
暫くして落ち着いたリリーと僕は、お父様の前に並んで座っていた。もちろん今度は手を繋いだまま。
「それで? 」
「僕はこの方を、生まれた時から捜し続けて来ました。誰かは分からなかった。でも、今日会て確信したんです。この女の子だって。ずっと捜していたのはこの娘だって」
「私も、ずっと捜していました。ついこの間街に出ることが許された日から、毎日のように街を捜し歩いていました。誰だかは分からない。でも、会った瞬間にわかり会えるって」
「そうか…………」
始め、部屋に入った時、お父様はとても驚いた顔をされていた。でも何故か急に落ち着きを取り戻すと、このような話し合いの場を設けてくれた。
理由は分からないけれど、説明はしやすい。
「…………あまり、驚かれないのですね」
「それがなぁ、それは驚いたさ。だって、本当にルイスが人を捜していたなんて」
「えっ!?」
「気づかない訳が無いだろう? 生まれてから歩けないうちから何かを探すように、王城のあちらこちらを這っていたんだから。何かあると考えるのが普通だろう」
そしてお父様はぽつりぽつりと教えてくれた。
生まれてからしばらく、歩けもしないのに、少し目を離した瞬間にすぐにどこかへ出ていってしまうこと、夜中にいつもうなされていたこと。少し大きくなってからもずっと、何かを探す素振りを毎日のように続けていたこと。
そして最近。気付かれていないと思っていたのに、魔法の練習に行くと言って、こっそりと街に出たりしては、夕方まで帰ってこなかったこと。
「王子として、あんまり街をうろうろされるのは困るが、前々からの事だし、知らないふりをしていたんだ」
「お父様……」
「でもなぁ……まさか捜していたのがリーアシュトラーセ侯爵の ご淑女だったなんて……。なんと貴族連中に説明すればいいのやら…………」
そこで今までずっと黙っていたリリーが始めて口を開いた。
「認めて、下さるのですか?」
「うん、まぁ、嘘をついた様子も無く、二人が揃って“捜していた”なんて言ったらそれは尊重しないとな。もしかしたら奇跡かもしれないし」
この国では、レイラ・シスタリアが度重なる困難を奇跡のような力で乗り越えてきた事にちなんで、不可思議な現象が起こったり、僕たちがでっち上げているような事を“奇跡”と呼び、大切にしている風習がある。
どうやら都合良く解釈してくれた事もあってか、あっさりと信じてくれた。
「さて、二人に聞きたい事がある。まずルイス」
「はい、お父様」
父親の顔から、真面目な、仕事モードへと表情を変えた父様に、こちらもつい身構えて緊張してしまう。
(これが王の威光か……)
と思えた程であった。リリーも同じだった様で、握いれてる手に
、力が入るのが分かった。
「お前はそのリリー嬢を一生をかけて守り抜く事が出来るか? 子供に言うのも難しいかもしれないが、リリー嬢を愛し、支え、尽くす事が出来るのか? どんなに辛く、厳しい時でも側に居続ける事が出来るか?」
「出来ます。二度と離れるつもりはありませんし、守り抜く事を誓います」
僕は速答して断言する。
リリーと繋いでいる手に少し力を入れ、本気だと言うことを伝える。僕と祈の仲ではそういうことは必要無いが、必要無いからと言ってやらないのは間違っていると思う。
そうか。と父様が頷き、今度はリリーに向き直る。
「さて、リリー嬢」
「はい、陛下」
リリーからは、先程まで感じられた不安や恐怖、畏怖の感情はすっかり無くなって、いつもの祈の、キリッとクールで、可愛い女の子に戻っていた。懐かしい。
僕と二人きりの時はいつも甘えてくれたけれど、普段はこういう頼れる女の子で多くの信頼を寄せられていたから。
「君はルイスを、生涯をかけて支え続けられるか?
今はまだ早いが、もしも夫婦となり、ルイスが王位を継いだとしよう。王子の時よりも更に忙しくなり、二人の時間も減るだろう。仕事のせいでルイスが辛くなる時だってあるかもしれない。
私とて頑張って妻やルイス達と過ごす時間を増やそうとはしているが、王という肩書きが邪魔をして難しいのだ。それほど忙しく、辛い時でも支えてあげられるか?」
「もちろんです。私は、ルイスを愛しています。どんなにルイスが辛い時でも側にいて支えます」
「そうか……。ならばお前たちの交際を認めよう」
ここまでお読み頂き、ありがとうございます!!
第2回お仕事小説コン受賞後、今までよりも更に多くの方から読んで頂き、ブクマを頂き、なんと後書きを書いている時点で約21000PVと6100を超えるUAを頂いております。
他の皆様の作品に比べればまだまだ未熟の身、これからも更に精進して参りますので、どうぞよろしくお願い致します。
ブクマ、評価ポイント、ご感想等ありがとうございます!!
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