第三話 暗闇の中で
こんばんは。五月雨葉月です。
第三話です。
まだ異世界にはたどり着きません。
もう少しお待ちくださいませ…………
では、今もよよろしくお願い致します!
暗い暗い闇の中、二人の意識は落ちて行く。
深い深い闇の中、二人の意識は落ちて行く。
二人は死んだ。
死んだとしか言い様のない事が起きた。
そしてその二人の意識は暗く深い闇の中を落ちて行く。
しかしなぜだろう。二人の意識は途切れない。
広い広い闇の中、二人の意識は落ちて行く。
底を見ぬ闇の中、二人の意識は落ちて行く。
暗く深い闇の中を、広く底の見えない闇の中をいつまでも落ちて行く。
そして、暗く深く広く底の見えない闇の中に、どこからか白く丸い光がやってきた。
そして暗く深く広く底の見えない闇の中を落ちて行く二人の意識に、吸い込まれるようにその光は消えた。
二人は思う。なぜ自分達は死なないのだろう。確かに死んだはずなのに。
もしかしたらこれが死というものなのか。そうだとしたらいつまでもこのままであるのか。
そんな考えを続ける二人の意識は今も落ち続ける。
二人が思考を続ける中、暗く深い闇の中を、広く底の見えない闇の中に、ぽつん、と一つの小さな小さな丸い光が浮かびあがる。
ああ、これで死か。本当に死んてしまうのか。
そう二人が思う間に、小さな小さな丸い光は、大きく大きく広がり始める。
そしてついに、暗く深く広く底の見えない闇を光が飲み込んだ。
その日の夜、ローズ大陸にある七の国の内、一大王国の一つ、シスタリア王国の王都シスタリアでどこからか二つの流れ星のような光の軌跡が王城とある貴族の屋敷に落ちたことが目撃されたという……
~~~~~~~~~~~~~~~~
気づいたら僕は、暗闇の中を祈と落ちていた。
「祈……」
「ミキ……」
僕らは互いの名前を呼びあった。
「ごめん、守れなくて」
「ううん、ミキは私を一生懸命庇おうとしてくれたでしょう? とっても嬉しかった」
その言葉を聞いたとき、僕の目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
祈を守れなかった悔しさと、申し訳なさが入り交じった結果、涙が出た。
そしてそれを見た祈は、僕に、
「もうっ、泣かないの。相変わらず女の子みたいよ」
「こんなときにまで……からかうなよ…………」
いつもクセでやってしまう、女の子っぽい仕草を指摘された。
「あ~あ、もうミキの男の娘姿、見れないのね……」
若干ふざけた感じで言ってきた。
しかし僕は、その言葉の意味を理解し、祈をぐっと近くに、今度はそっと抱き寄せた。
「ぐすっ……祈…………いのりぃ……………………うぅっ」
そしてついに、いつも女の子っぽいとからかわれる一因である、涙もろさが出てしまった。
しかし、とても大切な人と離ればなれになることは、とても辛い。辛くて仕方がない。だから、もう何があろうとも祈を離さない、と心に誓った。
「ミキ……痛いよ…………ほら、泣かないの。よしよし」
いつものように、普段僕が祈にしているように、今度は僕の頭をなでで祈が慰めてくれた。しかし、今回ばかりは泣き止めない。
「…………絶対に離さない」
「ミキ? 」
「祈を絶対離さない。離さない! 」
「私も……ミキと離れたくない」
そう言った祈も、僕を思いっきり抱き締めてきた。
祈の体温を、自分の肌で感じられた。そしてさらにさらに強く抱き締めあった。
何があろうとも、絶対離さない。神様が離ればなれにしようとも、僕たちは絶対に離れない。その一心で。
しかし、無慈悲にも、暗闇の世界の力は、徐々に僕らを引き離しにかかった。
そして、落下する方に、小さな光が現れた。
その光はだんだん、ゆっくりと大きくなっていく。
何故だか分からないが、あの光に僕たちが落ちた瞬間、本当の死を迎えるのかな、と感じられた。
「ぐっ…………祈」
「うぅっ…………ミキ」
僕たちは密着した姿勢のまま見つめあった。
「また、一緒にデートしてくれる? 」
「もちろんよ。ミキと私はいつも一緒。どんなに離れれても一緒」
「また、付き合えるかな? 」
「ミキを見れば、姿が変わっていようとも、絶対に分かるわ」
僕はその言葉を聞いた後、何も言わずに祈を見つめた。
それを合図にしたかのように、祈がそっと目を閉じる。
「ちゅぅっ、ちゅっ…………ちゅぅぅぅぅ♪」
この姿での最後のキスは、優しく、甘く終わった。
「絶対に見つけてみせる」
「私も。ミキを絶対に探しだすわ」
落下する方に見える光は、もう暗闇の世界を飲み込もうとするばかりに大きくなっていった。
いつのまにか、僕たちを引き離そうとする力はなくなっていた。
そして………………………………強く強く抱き締めあった僕、三島三月と、僕の大切な大切な恋人の九条祈は、光の世界へ飲み込まれた。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました!
今話は如何でしたでしょうか?
次話はいよいよ異世界突入です。
お楽しみに!
次話は、24日、午前0時に予約投稿設定をしています。
ブクマ、ご感想、ありがとうございます!




