第三十話 この世界には萌えという要素が足りな い!! 後編その5
第三十話に到達です!
なんか前回間違えて二十八話になっていましたが、先程気づいて訂正しました。
「おーい、ロゼ、イリス、こっちおいで」
僕はリビングまで移動すると、そこで積み木をして遊んでいた二人に声を掛ける。
「なあに、お兄ちゃん」
「どうしたの~? 」
「ちょっとね、パラパラ漫画を作ってみたから、見てほしいんだ」
「ぱらぱら……」
「……まんが? 」
おっと、そう言えば萌えに関する言葉はまだ無いんだっけ。
まあ今から作ってしまっても大丈夫だろう。
「うーん。そうだな…………一言で言うと、絵が動くんだ」
「絵が……」
「……うごく? 」
「そう。動くんだ、絵が」
アニメなどの概念が無く、こんな事を急に言われても信じられないだろうから、ここは自信をもっていく。
「え~どうせまたお兄ちゃんの魔法じゃないの? 」
「いやいや、普通の紙に描いた絵が動くんだよ」
「……? それならどうして動くの? 」
「実際に見てみれば分かるよ。よーく見ていてね」
どれだけ僕に魔法のイメージが強いのか……と軽く頭を抱えたくなりながらも、小さくカットして和綴じした手作りのパラパラ漫画を二人に見えやすい位置に持ってくる。
「その紙が? 」
「そう。ここの――真ん中にいる女の子がこれから動くから、よく見てごらん」
「うん、分かった! 」
よし、聞き分けの良いイリスだ。ロゼはまだ考え込んでいる様だが、見て貰った方が早いだろう。そう判断して、あらかじめパラパラと捲りやすいように加工しておいた紙の束の角に指を置く。
「じゃあ、いくよ」
「うんっ! 」
「わかった! 」
そう声を掛け、一気に指を滑らせ、パラパラと捲っていく。
パラパラというより、ザァーッ、とした音だけど、パラパラ漫画だからパラパラでいこう。
そして、最後まで指を滑らせ終え、二人の反応を見てみ――――
「すごぉぃいっ!! 」
「な、なにこれ!? 」
おわっ、そんなに乗り出して来ないの。
「どうだった? 」
「本当に動いて見えた! 」
「すらすら~って動いてたよ! 」
菜月は元々何でもこなしてくれるキャラだが、まだ五歳と三歳の妹に多分知らないと思うが弱くてもそっち系を見せる訳にもいかず……
無難に菜月が、仮想の敵と魔法で戦うシーンを書いた。
白黒で、さらにエフェクトや効果音が無いのはキツかったけれど、何となくでも伝わってくれれば良いだろう。
その後もたくさんの言葉を並べてくれている二人に、
「実はね、これは沢山の紙を重ねて、一つ一つちがう絵を書いてパラパラ捲っているんだよ」
と、事実を告げる。
「…………えぇぇ!? 」
「…………うそぉ!? 」
と、持っていたパラパラ漫画をパッと取られた。
二人は熱心に捲ったり、戻したり、を繰り返しながらどんどん研究していた。
しばらくして。
「お兄ちゃんこれ、すごい! 」
「ちょっとずつ違うんだね! 」
と今度はロゼが遅いながらもパラパラ捲って見せてくる。
「この女の子の絵も初めて見るような書き方だし」
「うん。可愛いね」
「絵も一つ一つ細かいしっ! 」
「お兄ちゃん、すごいっ! 」
「ありがとう、ロゼ、イリス」
やはり褒められたり、喜んで貰えたりすると、純粋に嬉しい。ものだなぁ。
と、そこへお母様とお父様がやってきた。
二人は走ってお父様とお母様の元へ行くと、僕が作ったパラパラ漫画を見せていた。
「お父様、お母様っ! これね、お兄ちゃんが作ったんだけど、凄いんだよ! 」
「パラパラまんがって言うんだって! 絵の女の子が動いて見えるんだよ! 」
はじめは相変わらずの元気さに苦笑いしながら聞いていたお父様とお母様だったが、ロゼがぎこちないながらもパラパラとめくってみせると、とても目を大きく見開いて驚いていた。
「ルイス、これは凄いね」
「ええ。本当に動いて見えるわ」
そこで二人にも原理を説明して、今度は僕からもっと滑らかに捲ってみせる。
「「「「…………。お~!! 」」」」
四人はほんの数秒のパラパラ漫画に見入ると、言葉も発さずじっと見ていた。
そしてめくり終わると、一様に歓声を上げてくれた。
「……その、ありがとう」
やはり恥ずかしいが、嬉しいものだ。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。
もうすぐ次のお話に移れそうです。
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