第二十八話 この世界には萌えという要素が足りな い!! 後編その3
今回から本編に戻ります。
「うわぁ…………」
即売会のサークル初参加で、こんなにも列が出来るなんてあり得るだろうか。というくらい列が出来た。
「うわぁ…………」
ある程度中央通路沿いにあった為、列は他のサークルさんに迷惑にならないようになんとか避難出来た。
「うわぁ…………」
それにしても凄い人数が並んでいるな……Twitterでの反応が良かったから一応1000部ほど持ってきたものの……。開始一時間半。もう半分以上売れました。
僕たち三人は、揃いも揃って同じ言葉を発した。
何に? 人の多さに。
そして何故か手伝いに来た祈がバリバリ馴れたように動いてくれるという謎な事態。
それを見て僕たちも慌てて動き出す。
多分超大手のシャッター前や壁のサークルさんはもう倍以上の売り上げを誇っている事だろう。何せ慣れているから回転率も上がると言うものだ。それでも列が減らないし、大抵昼過ぎまで持つからどれだけ本を持っていっているんだ……と思う。
「ありがとうございました! こんにちは。はい、五百円です。ありがとうございました! 」
二つスペースを取っておいて良かった……開始早々列が狭い通路を分断した時は驚いた。
その時のスタッフさんも流石だ。直ぐに列を区切って中央通路へと避難させてくれた。
そして何よりも驚いたのは、本が売り切れてもペーパーだけは残しておこうとコピー機へ走る時についでに見た列である。
いくら二つスペースがあるといえ、一度に三人しか捌けないから、どうしても回転はそこそこになる。さらに中央通路では二人一組だから進みも遅い。
そのせいで列が伸びに伸び、ホールの中央のスペースにも関わらず、なんとホールを跨ぎそうになっていた。
そして、偽壁のサークルさんの列にぶつかりそうで、慌ててスタッフさんが偽壁のサークルさんの列を外に出している所だった。
概算で大変な人数が居る。
「これは大変だ……」
明後日も同じ思いをするのか……最後尾札を作っておかねば。
そう密かに決意を固め、急いでコピーしに走った。
紙がなくなる限界までコピーして、ペーパーを置いたものの、それも新刊売り切れの一時間後には無くなり、ついに完全に売り切った。
「ふう……」
「はあ……」
「おお……」
「ミキ……」
思い思いに一息つくなか、祈が甘えてきたので頭をなでなで。
「祈、手伝いに来てくれてありがとう。お陰で助かったよ」
「良いよ、良いよ。私はミキの普段見れないコスプレを見れて眼福だから」
「あー、そう言えば着替えないとな……」
すっかり忘れていたがコスプレをしていたんだった。
それも初挑戦の某人気キャラクター。
「明後日もまたするの? 」
「うん。今度はちょっと違ったのをね。毎回同じでもつまんないから」
「そっか!! 明後日も手伝っていい? 」
「もちろん! 大助かりだよ。でも大丈夫? 」
「うん。だってお母さん、ミキと一緒だって言ったら大抵の事は許してくれるよ」
お義母さん……
今度ちゃんとお礼を言わなきゃな。
「コホン」
隣で咳払いが聞こえて、一旦撫でるのをやめて振り向く。
「まだ即売会終わってないんだからイチャつかないの。他の人も見てるわよ」
「このリア充め~! 」
軽い二人の声と共に、恨めしそうな視線と羨ましそうな視線を360度全方位から浴びていることに気づいた。
「もう、二人は後で駅前の某ホテルにダブルの部屋取って一晩中イチャイチャしてくればいいよ」
「うん。打ち上げは明日でもいいわよ」
さらに追い討ち。
ちょっとうみさん一晩中ってどういうこと?
みーちぇも乗らなくていいよ……
「あら? 私は本気だけれど……」
「は? 」
「わたしもさ、別に気にしないよ」
「うみまで……」
「…………」
と、先ほどから黙っている祈の方を見る。
「祈? 」
「皆も言ってるから早速行こう、ミキ」
「祈まで……」
「私は本気よ。ミキは嫌なの? 私と……その…………するの」
「そんな訳ないよ! でも……」
「でも、何? 」
ぐいっと顔を近づける。怒った顔をしているようだが、僕にとっては可愛いだけだ。
「するなら、ちゃんと……」
「ちゃんと!? 」
「ちゃんと自分から言うさ。祈が大好きだから」
何を言っているんだ僕は……
はぁ……したいと言えばしたいが、ちゃんと流されてやるのではなくしっかりと段階を踏んでしたい。
「と、とにかく、また今度! 」
恥ずかしさを押し殺してこう答えるしか無かった。
そしてその後片付けを済ませ、宅配でみーちぇの家に送った後、四人で打ち上げへと向かった。
そして明後日も同じような事を繰り返したのだった。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます!
もうそろそろ異世界パートに戻るつもりでいます。そろそろ、ね……
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