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第二十四話 この世界には萌えという要素が足りな い!! 後編その1

こんばんは。五月雨葉月です。


今回は回想が主な内容になっています。

 今からもうずっと前、日本にいた頃はずっと祈と一緒に居た。


 中学三年生の頃の話だ。


 僕が三年生になったと同時に祈が入学してきた。

 家が隣で、幼稚園、小学校とずっと同じだった。

 この頃既にお互い両想いであり、祈が中学校に入学した時から付き合い始めた。


 僕が通う中学校はかなりの難関校であり、さらに多少家から遠く、毎日の通学も定員オーバーの通勤通学電車に二十分ほど乗らなくてはいけなかった。


 しかし、祈は僕がいるから、と受験することを決断してくれたし、毎日の通学や帰宅も一緒に行き来していた。


 僕は祈が好きで、祈も僕が好きで。

 祈が入学してくるまでの二年間の苦労が霞むほど、一緒に通える事が嬉しかった。


 祈が入学して、少し落ち着いた所で僕から告白し、以降ずっと十年近く付き合っていた。


 今は離ればなれになってしまったが……それでもずっと祈の事が好きだ。


 さて、清々しい青春を送っていた中学三年生の頃は、既に僕はオタクで、(イラスト)やコスプレを楽しんでいる頃だった。


 祈は家が隣で、よく互いの家を行き来しているのでそういった趣味のことはよく知っていた。


 コスプレで男の娘になってみたきっかけも祈だった。

 あるとき、


『ねえ、ミキって女の子の服を着ても似合うんじゃない? ちょっと私の着てみてよ』


 戸惑う僕をよそに、自分のクローゼットから可愛らしい白のワンピースをだして、僕に差し出してきた。


 服からはほんのり祈の香りがしてきて、いつも祈が着ている服を……と恥ずかしくなったが、恥ずかしさを抑えてワンピースを着てみた。


 その時はまだ同じくらいの慎重で、あまり体型も変わらなかった事から、祈のワンピースは僕にピッタリのサイズだった。


『うわぁ……!! ミキ、可愛いっ♪ 』


 着替えて祈の居る部屋に戻った途端に言われたのがこの一言だった。


『そ、そうかな……? 』


 戸惑う僕にさらに畳み掛ける。


『本当よ! そこら辺の女の子より可愛いわ! 』

『…………他の女の子に怒られるよ、それを言ったら』

『事実だもの』


 まだそうかな? と首をかしげる僕に、とどめの一言。


『ねえ、その格好のままデートしない? 時には違った格好もしてみて良いと思うよ。それに、元々女の子っぽいから誰も気づかないわ』


 祈が大好きな僕がそんな提案を断る訳がない。


 後日実際に女装してデートをしたのだが、祈と歩いている時に、道を歩く殆どの人が振り返ってきた。


 事実、普段の生活でも祈を見て振り返る人々は多かった。


 ただし、その時は祈だけを見ていた。ちょっとムカつくけれど。

 しかしその時は違った。


 祈だけでなく()の方まで見て来るのだ。


 始め、


『やっぱりおかしいんじゃない? 他の人がチラチラ見てくるんだけれど……』


 と祈にちょっと相談していたが、


『あら、それはミキが可愛いからよ。みんな私とミキを見ているわ』


 と言ってくる始末。

 しかし不思議と悪い気はしなかった。


『ねえ、今度一緒に服を買いに行かない? 可愛い服、選んであげる』


 祈の提案は悪くない。


 その次の週、一緒に祈がよく行くという可愛い服がズラリと並んだ甘い香りのする店に行ったのだが、それはもう凄い服ばかりで、ついつい財布の紐が緩んでしまったのは別の話。


 その後通販等で前から欲しいと思っていた女の子のキャラクターの制服を買ったりしたのだが、それがもう素晴らしくて更にハマる原因だったりしたが後悔はない。


 その後祈に、


『なんか前より女子力上がってない? 』


 と聞かれたが、


『き、気のせいだよ~』


 と誤魔化しておいた。

 その後バレて更に女装してデートをすることになったのだが、気にしていない。


 だって、祈と居ることは、僕にとって一番楽しくて素晴らしい時間だからだ。









 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~








 中一の頃から一般参加していたコミケ。


 いつかサークル参加をしたいな……と思っていた。


 高校二年生の時。

 あることがきっかけで知り合った、年上だがかなりの経験のある絵師さんとシナリオライターさんと僕の三人で合同のサークルを作ろう、という流れになった。


 名前はスリースタースタイル。

 そんなに凝った名前ではないが、相談した結果、これが一番良い名前だと皆んなが言って決まった。


『スリースタースタイルって何か良くない? 』


 サークル名を決める時に、後のークル主、綾瀬美奈(あやせみな)さんこと、みーちぇは言った。


『全部始めにスがついてるよ~。狙った? 』


 そう突っ込んだのは、姫島七海(ひめじまなつみ)さんこと、なつひめうみ。僕と一緒にみーちぇに誘われた。


『あ、ほんとだ~』


 とクスクス笑うみーちぇの姿はまるでお嬢様の様に洗練された動きで――――というより本物のお嬢様なんだよね。


『でも、なんかそれでいい気もするんだけれど……』

『そうかな……? 』

『いやいや、二人とも、もうちょっと考えよう? 』

『三月がそういうならもう少しだけ考えようか』

『まあ、他に良いのが無かったらスリースリースタイルに決定ね』

『結局それにはしたいのか…………』


 みーちぇこと綾瀬美奈は、容姿端麗、長い黒髪を腰までストレートで下ろし、当時の僕には想像出来ないような高級ブランドの品々を身につける超ハイパーお嬢様で、有名な企業の創業者の一人娘だと言う。


 イラストでも原画でも何でも描く、著名な絵師さんで、作業風景を見せに貰いにうみと祈と三人で彼女の家にお邪魔したことがあった。


 二人は僕より二歳年上だが、サークル仲間なんだから呼び捨てにしよう、というみーちぇの素晴らしくないアイデアが採用されたのであった。その都合で僕は二人をみーちぇとうみ、と呼ばねばならず、彼女らも僕のペンネーム、というより本名の三月と呼んでいる。


 話は逸れたが、彼女の家はもはや豪邸と言える広さであり、玄関からみーちぇの部屋まで家の中を移動するだけで五分以上かかった。


『広っ!? 』

『おお~』

『ミキ、ミキ、あそこに綺麗な絵があるよ……』


 一般家庭で生まれ育ったぼくや祈、うみはただただその広さと清潔さ、圧倒的なマネーパワーを感じる家に戦々恐々していた。


『私の部屋はこっちよ。付いてきて』


 そう言われ付いていくこと約数分。


 これもまただだっ広い部屋が広がっていた。


 それだけではない。部屋の物全てが高い高級品だった。


『!? これは……まさか…………』

『なになに?……ってこれって、ワ○ムの超最新モデルじゃん! それも凄い高いやつ! どうしたん、これ!? 』

『何って買ったんだよ~』

『買った!? …………これって確か企業向けしゃなかった? 』

『うふふ、ちょっと、ね♪ 』

『羨ましい……そんな機材僕も使ってみたいよ』


 さすが金持ち。企業向けの高性能液タブも自分で買うのか…………


 というか個人で買えるのか!?


 という密かな疑問もお見通しのように、にこにこと笑っているのであった。


 姫島七海(ひめじまなつみ)さんこと、なつひめうみは、コミケに出展しているような美少女ゲームメーカー等でで多数ストーリーが採用されている、業界では有名なシナリオライターだ。


 彼女はみーちぇみたいに金持ち、という訳ではない。


 むしろ、かなり生活がキツいと本人は言う。


 かなり儲けているはずなのだが彼女自信がかなりのオタクで、欲しいものをドンドン買ってしまう性格のせいで毎月収入のかなりをグッツに使ってしまい、生活が苦しくなってしまうそうだ。


 サークルに参加し、収入が増えた後にもその性格は直らず、


『もうこれは病気よね……』


 とみーちぇに哀れんだ目で同情された程だった。


『まあ、気持ちはわかるんだけどね』

『本当!? さすが三月、分かってるぅ~!!』


 増え続けたグッツの数々は、ついに彼女の実家の部屋を埋めつくし、二部屋目に入った所で家屋の倒壊が心配された為、みーちぇの好意によって彼女の屋敷の一部を借りれる事になった。


 二人の家はそれぞれ僕の家からも近く、サークル結成後、打ち合わせなどが頻繁に出来ることがかなり進行を早めた。


 メール等を使えばいいじゃん、と思うかもしれないが、実際に会って意見を出しあった方が良いのだ。


 結成したのは、冬コミ後の二月始め。

 かなり締め切りが迫ってきていた。


 そんな中、最初のような会話が繰り広げられた。


 その後特に別の意見や反対も無く、最終的にスリースタースタイルに決定した。












ここまでお読み頂き、ありがとうございます。


もうすこし回想が続きます。


ブクマ、ご感想、ポイント評価、ありがとうございます!

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