第十四話 予想外の強さ
こんばんは。五月雨葉月です。
まず、2400PVを突破致しました事を、お礼申し上げます!ありがとうございます!
ダァンン!!!!
と、巨大な音と同時に、こちらも巨大な花火が、王都の空で花開いた。
あまりに大きな音に、王都中の鳥達が舞い上がり、警備の兵が鳴らしたであろう鐘の音や、魔法を使って声を大きくして避難を呼び掛けたり、街中の人々が何事かと騒ぎ出し、パニックになった―――という事にはならなかった。
咄嗟にニルムさんが、巨大な花火の周りに遮音魔法をかけたのだ。
自分達に聞こえたのは、魔法の展開の直前に花火が開いたので、少し音が伝わってきた様だ。
「…………」
「…………」
僕達は、あまりの規模の大きい魔法の威力に、言葉が出てこなかった。
時計の針が何週かした頃、二人は息を揃えて、お互いに確認を取った。
「あれって……僕の魔法です……か? 」
「あれって……君の魔法……だよね? 」
あまりの規模に、僕はニルムさんが直前に唱えた魔法だと思ったが、ニルムさんはニルムさんで、僕が唱えた魔法だと思ったらしい。
「私はあんなに大きな花火を打ち上げられない」
「僕は魔法を初めて使かったので分かりません」
「あれくらいの魔法にもなると、相当な魔力が要るんだ。私には足りない」
「そう言われても……僕の魔法だとしてもあんなに大きいのは無理ですよ」
「だがな………………」
「そう言われても………………」
しばらく平行線の会話が続いた。
しかし、これではらちがあかない。と言ってニルムさんが、僕にある魔法を唱えるように言った。
「直前魔法。これを唱えてみろ。これでひとつ前の魔法が再現される。魔法を唱えた者と、直前魔法を唱えた人の半径五メートル以内にいる人全員が再現を見ることが出来る。他には見れない。ただしこれは、大規模な魔法でかつ唱えた人が実力を持っている必要がある」
と、何やらそれなりにすごそうな魔法を使うようにと言われた。
不安になり、
「出来ますか? 」
と聞くと、当たり前の事を言うように即答が返ってきた。
「もちろんだよ! 私が認めたんだ。出来る」
有無を言わせぬ口調で言うと、僕のすぐ近くまで寄ってきて、ささっ、とジェスチャーも交えて急かしてくる。
仕方がなく、
「直前魔法」
と面倒がって小声で、どうとでもなれ、と思いながら言った。
すると――――――――何も起こらなかった。
「やっぱり何も――――」
「今、本気で魔法を使わなかっただろ? 」
ニルムさんが僕の言葉を遮って聞いてきた。
「は、はい」
怒られるのかな……と思いつつも正直に答えた。
しかし、予想外の言葉が返ってきた。
「そうだったな……ルイス、私が悪かった」
そう言いながら軽く頭を下げてきたので、えっ、どうしたの? なんで謝ってくるの? 何か悪いことをしてきたっけ? と疑問に思った。
しかしニルムさんが何故か満足げに頷いていたので、勘違いだった事を悟る。
「この事を言うのを忘れていたよ。魔法は、どういう風に発動させるかをはっきりイメージさせながら使わないといけないんだ」
そう言いながら、手を伸ばし、地面に向ける。
「今ここで、椅子が欲しい、と考えようか」
「はい」
かるく相槌をしながら話を聞く。このような話を聞いて損が無いことを知っているからだ。むしろ聞かない方が損をする。
「私と、ルイス。君のと、二つだ。ついでにお茶をするための机と紅茶、ティーカップも要るね。さっき言った通り、何も無いところからは造り出す事は出来ない。無限収納があるが、使うと意味がないから無視しよう。おっと、後で説明するよ」
無限収納? と軽く首をかしげた所に、質問が来ると思ったのか先手を打ってきた。なので開け始めていた口を閉じる。
「まずは私の椅子から。いつも使っている執務室の椅子を持ってこよう。瞬間取り寄せ」
すると、ニルムさんが手を向けていた方向に、背もたれが長く、木と様々な装飾品からでできた豪華な椅子が現れた。
「そして、君の。そうだな…………高めで小さい物かな。瞬間取り寄せ」よくわかりました
すると、王城で使われる、貴族の子供が使うような、少し高めで小さい椅子が、先程現れたニルムさんの椅子の向かいに、少し間を開けるようにして現れた。
「この二つの椅子は、同じ呪文だが、全く別の椅子が出てきたよな。私がイメージした通りに出てきたって事なんだ。口で言わなくても良いんだが、慣れないうちは言った方が確実に想像できる。何も考えずに唱えたら、瞬間的に考えたこと等が現れる」
人差し指で頭をコンコン、と軽く当ててから、もう一度、今度は二つの椅子の間に手を向ける。
「そして、今度は机かな。さっきの部屋にあった物にしよう。瞬間取り寄せ」
やはり今度も、さっきと同じようにして、二つの椅子の間にしっかりとズレもなく収まった。
先程の部屋にあった大理石の机だ。
「紅茶。瞬間取り寄せ」
ティーカップに入った紅茶が出てきた。
どこから来たのか不思議だったが、何も言わない。
ニルムさんが椅子に座って、出てきたばかりの紅茶を飲み始めたので、僕も遠慮せず、もうひとつの椅子に座って紅茶を飲んだ。
「ついでなら家も持ってこようか。瞬間取り寄せ」
とニルムさんがふざけた様に言ったが、何も起こらなかった。
「今のように、本気で言わないものは、イメージが働かず、魔法が使われない。だから私がルイスに魔法を教える時に魔法が発動しなかったんだ」
なるほど。同じ呪文を言っても、イメージと心次第、という事か。
「なるほど。よくわかりました」
と、飲み終わったティーカップを机の上に置き、立ち上がりながら言うと、一拍遅れてニルムさんも
「ならよかった」
と言いながら立ち上がった。
「仕組みが分かったところで、直前魔法を使おう」
「はいっ! 」
「よし。元通り」
そう言った途端、今まで座っていた椅子、空になったティーカップと机が、まるで元々何も無かったかのように、跡形もなく消え去っていた。
「いいぞ。使ってみろ」
そして、僕は手を空に向け、さっき見た大きくて綺麗な花火を思い出しながら、呪文を言った。
「直前魔法! 」
直後、僕とニルムさんの目には、何故か霞んでいるが、大きくて、先程みた通り、何の違いもない花火が夜空で開花した。
ここまでお読み頂き、ありがとうごさいます。
今回も多少説明が多かったですね。
次回はまだ何になるか分かりませんが、取り合えずもう少し魔法に重点を置いて進めたいと思っています。
ところで、先日、現在のルイス設定上の年齢、二歳の子供に会う機会があったのですが――――
小さすぎませんか(遅)? あれをルイスだと思って見たら、あの年で言葉はペラペラ計算大得意……
怖いですね。でも変えません。ややこしくなるので。
ご感想、ブクマ、ありがとうごさいます!




