第十三話 魔法の力
こんばんは、五月雨葉月です。
活動報告で書いたように、書き直し作業で投稿が遅れました。申し訳ないです。
その代わりと言う訳ではありませんが、今回若干文字数が多いです。
八色の巨大な光の玉の舞が演出されていた部屋は、ニルムさんの指から弾き出された明かりにより消え、今はもう黒く窓のない部屋が、煌々と照らされていた。
時間もたち、冷静さを取り戻した僕達は、部屋の中央にある大理石のテーブルを囲って椅子に腰掛けた。
「さて、ルイス。先程見た物が君の魔力であり、使える魔法の適正だ。ここにいる全員が見た、あの八色の巨大な光。全て君の持つ能力だ。あれくらいの魔力、私には無い」
とこからともなく出現した、紅茶の入ったティーカップを片手に説明し出したニルムさんは、言葉を切ると、一口紅茶を口に含んで説明を続ける。
ティーカップは僕と父にも用意されていたが、あまり飲む気にはならなかった。
未だに驚きが残っていて、理解し切っていないからだ。
「アーノルド。君の息子は天才、いや、それ以上の存在だよ。普通の噂で聞く勉学もそうだが、魔法もだ。さっき私が感じていた魔力以上の力を持っている。魔法ランクに直すと……そうだな…………まだ魔法を使ってみていないから分からないが、確実にAAAはある。魔法の能力次第では、いずれSSSにさえ届くだろう。こうして面と向かっている事がとても嬉しく、そして敬わしい」
そこまで聞いた父は、冷め始めた紅茶を一気に飲み干すと、真剣さを出して、ニルムさんに聞いた。
「それじゃあ、本当にルイスは天才なのか? さっき見たものは嘘ではないと? 」
しかしニルムさんは父を若干半眼で睨み付けて言った。
「私の話を聞いていたか? 天才以上の、そうたな。もはや神に見初められたと言ってもいいだろう。それくらいの実力だよ。私なんて、将来戦って本気を出されたら一秒も持たない自信があるね」
「そ、そんなに凄いのか……ルイスは」
「ああ。多分アーノルド、君の想像している以上に、な。二つ目の質問は、嘘では無い。まさかダニエル・テールズの作ったものを疑うのかい? 」
今は机の上で静かにしている水晶玉は、ダニエル・テールズが作った物らしい。そして父とニルムさんの会話から、疑えない程正確な魔道具(魔法を込めた道具)らしい。
「い、いや、疑えるわけじゃ無い」
「だったら見たものは全て本物だ」
そこまで言い終わったニルムさんは、まだ成長していない小さな手でちびちび紅茶を飲んでいる僕に向き直ると、
「よし、実力が分からないから、早速試しに魔法を使ってみようか」
と、なんとも信じられない、嬉しい事を言ってきた。
「ほ、本当に使えますか!? 」
ガチャっと危なげな音がする勢いでティーカップを机の上に置くと、真偽を確かめるように――聞こえなかった様だが――言った。
「そう言えば、魔法を使いたがっていたな……」
「ここここれから使うのですか!? 」
「ああ。だが、使える力があるのと使うのとは全く別物だ。少しずつ、そして確実に使えるようにしよう」
そこまで言ってニルムさんは、父に、
「出来れば、これから毎日、もはや私が貸切状態にしている中庭にルイスを連れてきて欲しいが……」
と言った。
「大丈夫だ。ちょうど最近、暇している様だったからここに連れてきたんだ。それでいいかい、ルイス? 」
と、父に聞かれたので、迷う事もせずに、
「はい! よろしくお願いします、ニルムさん!! 」
と即答した。
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少し時間が経ち、僕とニルムさんは、白く平らな岩が延々と広がっている庭の一つに来ていた。
父は、執務の続きがあると言って、一緒にいる、と言う父を半ば強制的にナーガさんに連れていかれた、いや、連行していかれた。
「ここは私達、国に所属する魔法使いが、魔法の練習をするために作られた庭だ。他の魔法使い達も使えるのだが、何故か誰も来ない…………。みんな他の小さな練習用の中庭で練習をしているんだ。私は構わない、と言うより一緒に練習がしたいのだが、何故だ……」
それは多分、ニルムさんに遠慮をしているのと、自分との実力差を改めて思い知りたくないからだと思いますよ。
とは言えず、
「な、何ででしょうね……」
微妙に棒読みになりそうだったが、知らないふりをした。
幸いニルムさんは考え込んでいて、ニュアンスの違いには気がつかなかった様だ。
「まあいい。さて、この下の石は、そこそこの魔法までは受け流してくれる不思議な力を持つ、魔耐石だ」
避雷針の様な物かな、と勝手にルイスは考えた。
この世界に避雷針があるかは分からないが、きっと無いだろう。
「そこそこの、ですか? 」
僕はニルムさんに、気になった事を質問した。
「ああ。私が半分程の力を出して魔法を撃つと、ほとんどの確率で壊れる。この石は受け流せる魔法の限界を超えると、粉々になるんだ。強い魔法を使いたいときは大量に魔耐石を重ねて使うんだ。魔法が使えるから乗せるのも一瞬さ」
本当に魔法と言うものは便利なようだ。しかし、これだけ敷かれていると、石の埋蔵量なども気になる所だ。
「これだけ石を使うと、すぐに無くなってしまいませんか? 削り出して魔法をいるのですよね? 」
その質問に、若干訝しげな顔をしたが、すぐに理解したようで、
「ああ、そう言うことか。大丈夫だ。この石は世界でも大量に取れるくせに使い道が少ない、世界で沢山余っている石なんだ。だから安く、さらに大量に取れるからいくら使っても大丈夫だ。調査でも、あと数千年は取れるだろう、と結果が出ている」
と言った。しかし、不思議だ。
「なんで魔法を受け流せるような石なのに使い道が無いのですか? い色々な物に使えそうですが……」
当然の疑問だ。安く、それも大量に余るほどの石に使い道が無いとは不思議だ。
「うーん、なんと言うか……魔耐石は加工がしづらいんだ。そこそこの魔法の腕を持つ石工が加工しないとすぐに壊れてしまうんだ。さらに、腕が良くても、複雑な形には切れない。だから、こんな風に」
下の地面を指差しながら続けた。
「四角く切るしか無いんだ。それだけなら良いが、特に今は石とかを使う事は無いからな……使われなければ意味がない、そう言うことだ」
つまり、この世界の文明レベルでは、多用に使いきれない物、という事らしい。
「本題からそれてしまったね。早速魔法を使おうか。念のため魔耐石をもっと、重ねて、と」
小さな声で魔法を唱えた途端、隅の方にまとまって置いてあった魔耐石が庭中に敷き詰められた。
「おお! 」
素直に僕が驚いていると、
「ルイスも直ぐに使えるようになるさ」
と言ってくれた。
「よし、ルイスの使う、最初の魔法だ。景気よく一発、大きなものをぶちかまそうか! 」
「はい! 」
よし、とニルムさんが頷くと、
「では、空に手を向けながら、私が言ったことを真似て。光の打ち上げ花火! 」
僕は空に向かって垂直に手を伸ばすと、
「光の打ち上げ花火!!!! 」
と叫んだ。
すると…………
ヒュルルルルル――――――――ダァンン!!!!
という音と同時に、日本で慣れ親しんだ花火の、
火薬ではなく、光バージョンの、街を覆い尽くすかのような大きさの花火がうち上がった。
た~まや~、と言いたくなる、綺麗な光景だった。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます!
いよいよ主人公が魔法を使い出しました。
次回からはもっと沢山の魔法が出てくるはずです。
ただ、作者が面倒がって出さないかもしれませんが……
GWも明けたので、次回から通常通りの投稿、毎週土日投稿予定に戻らせて頂きます。ただ、作者都合で変更になることがありますのでご了承くださいませ。
また来週も、(というかもう今週ですが)よろしくお願いします




