第十二話 待ちに待った魔法!
こんばんは。五月雨葉月です。
今回は説明を交えながらの進行になります。
よろしくお願い致します!
僕と父とニルムさんの三人で、中庭に面した部屋の隣にある、学校の教室ほどの大きさの部屋に、床、壁、天井全てが黒い石で覆われている、窓もない暗い部屋だった。
王城の他の部屋に使われているようなシャンデリアなどの明かりはなく、ニルムさんが魔法で作り出した幾つもの光の玉が明かりの替わりだった。
部屋の中央に、大理石で出来た、重そうな机が置かれていた。
その中心には魔方陣が幾重にも重ねて刻まれた水晶玉が台座に置かれていた。
「この水晶玉が魔法の適正を調べるための物だ。まず個人情報を見せてくれるかい? 」
「個人情報? 何ですか、それ? 」
ステータスと言うからには、普通のゲームや異世界で見るであろう、HPやMP、技能やスキルなどの情報が書かれている物であろう、と予想できるが、この世界に来てから一度もその様なものを見たことがない。
「そう言えばまだルイスは二歳か。知らないのも無理はない。教えていないからな」
と言いながら、ハハハ、と笑う父。
(おい。笑えないぞ。)
心の中で突っ込むと、まさか聞こえたのかは分からないが、コホン、と咳払いをすると、
「普通はもっと大きくなってからだからな。個人情報と言っても、魔法の一種だから」
「さて、ルイス。私の言ったことを真似してごらん。情報開示! 」
ニルムさんの言葉を真似してみる。
「情報開示! 」
言い終わると同時に、身体の中から何かが何かがほんの少し、出ていく感覚がした。
そして同時に、目の前に、宙に浮かんだ光の板が現れた。
そこには、
『ルイス・レイ・ラ・シスタリア
年齢……二歳
性別……男
身分……シスタリア王族
魔法適正……不明
魔法ランク……不明
職業……王子・学者・天才』
と書かれていた。
思ったより情報が少ない。
HPやMPなどは書かれない様だった。
「個人情報は、自分の身分を証明すると同時に、様々な情報を表示してくれる物だ。職業などは、新しい事をすればその都度更新されていく。勝手に判断されるため、自分の思っても見なかったことが書かれたりする。また、ある程度の実力を持っていれば、書き換えも可能だ」
「書き換え? 」
「ああ。例えば自分の職業などを隠したいときなどに使える。ただし、Sランク以上でなければ使えない。まあ、早速適正を調べるか」
「あの、この不明の部分は? 」
先ほどから気になっていた、表示されない部分が何なのかを聞いてみた。
「ああ、それか。さすがの個人情報も、知らないこと、そもそも無いことを表示することは無いからな。これから調べて、そのあとで見ると表示されるぞ」
さすがの魔法も万能では無いらしい。
僕の表情からその事を読み取ったのだろうか。ニルムさんが、
「魔法と言っても、万能ではないさ。存在しないものは造り出せないし、存在するものを完全に消失させる事は出来ないんだ。だからいくら魔法でも死者を甦らせることは出来ないし、直接的に生者を殺めることは出来ない」
と言ってきた。王城の書物にも書かれていなかった内容だ。
「直接的に、ですか? 」
含みのある言い方をしてきたので聞いてみた。
「そうだ。魔法で直接生者を殺める魔法は存在しない、いや、存在出来ないが、間接的に魔法を使って殺めることは可能だ。例えば氷の槍を作り出して、それが生者を貫けばそれは死ぬ。そう言うことだ」
「なるほど」
「しかし、二歳と話す内容では無いが……まあいい。そこの椅子に座って、水晶玉に手を置いてみろ」
若干疑わしげな視線を向けられ、ドキッとしたが、取り越し苦労だったようだ。
言われた通り椅子に座――れなかったので靴を脱いで椅子の上に立つと、水晶玉に手を置いた。
置いたことを確認すると、ずっと出現しっぱなしだった光の玉がスッと消え、部屋が真っ暗になった。
「いま、その水晶玉が君の魔力を調べ、魔法適正を調べている。もう少ししたら、水晶玉から色々な色の、色々な大きさの光の玉が出てきて部屋を照らす。色によって適正を、大きさによって魔力を量ってくれる。大半の人の魔力は小さな豆粒ほどだが、たまに、私のようにとてつもなく多い魔力を持つ人がいる。ちなみに今の私は、水晶玉が乗った机程の大きさが八色。つまり相当の魔力と、全ての属性が使える、と言うことだ」
「八色? 」
「ああ、まだ言っていなかったな。属性によって、適正を表す色が違うんだ」
その後の話を要約すると、以下のようになる。
水属性……青色
火属性……赤色
風属性……緑色
地属性……茶色
光属性……黄色
闇属性……紫色
太陽属性……オレンジ
月属性……白色
属性によって大きさが違うと、得意な属性、苦手な属性が分かるらしい。
さらに普通、光、闇、太陽、月の四種類は出にくく、残りの四種類中の何種類かが出てくることが多い様だった。
と、いきなり水晶玉が淡く光だした。
「お、そろそろか? 」
とニルムさん。
いよいよか、と僕は胸を高鳴らせ、いつでもどんな属性でも大きさでもドンと来い! と手に力を加えた。
と、次の瞬間。
部屋の中で光の洪水が湧き起こった。
「うわぁ!? 」
「な、なんだ!? 」
「はは、はははは!! すごい、これは凄い! 」
僕、父、ニルムさんの順番で叫んだ。
僕は水晶玉に手を置いたまま、完全に固まって、周りの様子をじっと見ていることしか出来なかった。
そう。目の前の机より遥かに巨大な光が、きっかり八色。
青、赤、緑、茶、黄、紫、オレンジ、そして白。
ほぼ同じ大きさの光の玉が、部屋の中を猛スピードで飛び回っている様子を、僕は固まって、父は唖然と、ニルムさんは笑いながらずっと見続けていた。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます!
僕は特に、主人公最強伝説を作りたいのではなく、普通(と書いて普通じゃない)の冒険が書きたいです。(政治はどこいった……)
さて、なんと1700PVを突破致しました!!
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ブクマ、ご感想、ありがとうございます!




