8話 たまには緊迫したっていいじゃない。人生だもの
えーなんか次話投稿する作品間違えちゃいましたotz
とあるビルにあるとあるフロア。薄暗い研究室のようなところにその人物は佇んでいた。
床にはいろいろな機材や紙が散乱していて。周りには、どこかを映しているカメラやなにかのグラフを映している液晶画面や、コードが数十本繋がれた大きな機械などが手当たり次第に置かれていた。
「さて……そろそろ私も動くべき時かな」
その人物が喋るとそれに呼応するかのように一つのモニターがブゥンと起動し、辺りのスピーカーから幼い少女のような声が響いてきた。
『うん。あの能力がどういうのかしらべるんだよね?』
「あぁ。……さぁ、実験開始だ」
『よーしいっこぉ~!』
☆☆☆☆☆☆
今俺はゆうと一緒に徒歩で夕飯の買い物に行っていた。なんか天気もどんよりとしていて今にも降りだしそうだ。
今日は朝の占いでも運勢最悪だったからなぁ……。
「今日の夕飯は何にすっかー」
「そうですねー、あ! チャーハン食べたい。チャーハン作って! いや、作ってください!!」
「まぁ最終的には何が安売りになってるかで決めるんだけどな」
『それって聞く意味あったの!?』と勝手にビックリしてるがこっちは少ない仕送りでやりくりしてんだ。文句は言わせない。
ふと今何円持ってたかなーと考えて鞄の中から財布を取り出すと。
「入ってないし」
中身は319円。なにこの中途半端。
「あ、今月の金下ろしてないや」
「じゃあちゃっちゃと下ろしてこようよお兄ちゃん」
「今からー? めんどいなぁ……」
「ムリと疲れたとめんどくさいは人間の無限の可能性を潰すってお兄ちゃんの持ってる本に書いてあったよ?」
「いいんだよ、言いながらちゃんと行くんだからー……」
そんなわけでだらだらと歩きながら銀行についた。曇りだからか知らんけど人数もまばらで混むことはなさそうだ。
「えーっと手帳手帳……」
バッグの中をごそごそとあさって奥の方に入っている通帳を取り出す。
「お、お兄ちゃんちょっとお手洗いいってくるねー」
「ん。いてら~」
ゆうがトイレに行ってる間に口座からお金を引き落としていると、大きなリュックを背負った怪しい格好をした三人組が入ってきた。
(なんだあの変なカッコ? もしかして銀行強盗とかだったりしてなーはっはっはー)
と、心のなかで笑っていると三人のなかで一番背の低いやつがリュックを下ろして中から金属でできた塊を取り出した。
うん。どっからどう見ても銃ですね。本当にありがとうございました。
そして三人組の一人の太った男が。
「おぅい! 銀行強盗だぁ!! 大人しくしねぇとぶっぱなすぞぅ!!」
次占いで最悪が出たら家から一歩も出ないことにしよう。そう固く誓った瞬間だった。
☆☆☆☆☆☆☆
そんなわけで予想通り銀行強盗でした。未来予知でも覚醒したかな?
今強盗たちは銀行にいた俺を含めた数人を縄で縛り、人質として街の治安維持部隊『Aegis』と何やら交渉してるみたいだった。
この街には大きく分けて二つの治安維持部隊がある。
一つは『Aegis』。
もう一つが『雷電部隊』。
Aegisってのは外部から派遣された対能力者用の警察のことで、主にVIPの警護や今回のような危険度が高いと判断された事件の対応に当たってる部隊で、そのため対能力者用の特殊武装や特殊兵器を所有している。
雷電部隊はAegisと違いこの街の住人のみ。つまり能力者のみで構成されたという部隊である。部隊員は完全実力制で、元警察のおじさんだったり調子乗り始めた辺りの高校生など年齢も様々。仕事内容も探し物や落し物から不良グループの解体等幅広くこなしておりAegisよりこっちのほうが認知度が高い。
ちなみに各学校の風紀委員や姉御たちの天翔などのグループは雷電部隊の下部組織に当たる。
今回は相手が“銃器を所持している能力者”という危険度の高さからAegisの方が動いているのだろう。
「チッ! おいミルザム。あいつらはまだ渋ってやがんのかァ!? いくらなんでも遅すぎンだろ!?」
三人のうちの長身の男が、ミルザムと呼ばれた茶髪の小柄な体躯な(ロリロリしい)少女に怒鳴っていた。怒鳴られたミルザムはというと特に気にする様子もなく口元に手を当て何かを考えているようだった。
「確かに……アレは連中にはそれほどの価値があるものなのか……? おいシリウス、今すぐウルフェウスに連絡を取れ。奴らの無線を傍受して話の内容で渡す気がないようならやむを得ないがこいつらを一人ずつ殺す。ラウラ、お前は私と一緒に引き続きここで奴らを見張ってるぞ。いざとなったら外で待機しいてる奴らに加勢しに行く」
ミルザムが巨漢のシリウスと先ほど怒鳴っていた長身の男、ラウラに指示をすると二人は無言で頷きあって各々の行動を開始した。
話の内容から察するに外で銀行強盗(という名のテロリスト?)のお仲間たちがウルフェウスと呼ばれるやつがもう一人いるはずなんだが。どこかに隠れているのかその姿は見えない。そもそも来ていないだけでアジトとかそんなところにいるのかもしれないが。
(つってもこの状態じゃぁ俺にゃ何もできないんだけどなー。一人ぐらいなら奇襲でなんとかなったかもしんないけど三人もいるとなるとなぁ……)
などとパニックになっても仕方ないので冷静さを保ちつつ現状を打破する方法を考えていたら、携帯でウルフェウスと呼ばれる人物と話していたシリウスが叫んだ。
「ダメだミルザムぁ! 連中大人しく渡す気はないらしい!」
「そうか、ならば仕方ない。おい、そこの男を連れて来い」
ミルザムがあごでクイッとこちらを指してそれを見たシリウスがのしのしとこちらに近づいてくる。ここからじゃ指名された奴が誰だかわからんがマズイな……。このままじゃそいつが見せしめとして殺されちまう……何とかしてこの縄を解かないと……ッ!
とかなんとか考え込んでいたら急に襟をグイっと引っ張られた。
「えっ……俺ェェェェえええええええええええええ!!!???」
「でもなんでこいつなんだぁ? 見せしめとかなら女子供の方がやりやすいと思うんだがぁ?」
俺の全力の絶叫は無視して引きずったままシリウスがミルザムに聞くと、ミルザムはてくてくと引きずられたままの俺の頭の上に手をおき。俺だけに聞こえるようにボソッと。
「うーん……なんかすっごく可愛いから人質っていう体でお持ち帰りする」
そう呟いたミルザムは、部下に向ける高圧的な口調ではなく普段の少女らしき口調で、俺の顔を見てテロリストとは思えないほどの笑顔でニコッと笑った。どうも殺されはしないようで安心……。
「アジトに戻ったら何しようかなぁ……あ、もちろんナニはするんだけどねー。ふふっ……楽しみだなぁ……」
できてなかった。
「まぁとにかく今は人質として活用させてもらうわ。今後のためにも精々死なないでね」
口調をさっきの業務モードに戻して俺をズルズルと引きずって外に出ようとしていた。
「なぁぁぁああああああ!!! なんでもいいから誰か助けてぇぇぇえええええ!!!」
とその時奥のトイレでジャアアアアと水の流れる音がして、栗色のツインテールを揺らしながら最近話題(らしい)の服装に身を包んだひとりの少女が出てきた。
少女は縄で縛られながら引きずられている俺を見てこう言い放った。
「あれ? お兄ちゃんそんなところで何してるの?」
次回は銃撃戦(にできるといいなー)です