6話 暑い日にストーブつけてみろ? 死ぬぞ?
今日俺はまたもや友達と待ち合わせと言うベターな理由で炎天下の下にさらされていた。
「でぁぁ……いつまで待たせる気だあいつ……」
「おぉーーい! 緋色ーー!」
てな感じで待っていたら、向かい側の信号待ちの大勢の中に、杖を持ったおじいちゃんや銀髪の小さな女の子に混じって大きく手を降っている髪色が少し茶色がかっているイケメンが見えた。
待ち合わせ相手、宮本龍騎だ。
こいつは名門『私立清香学院』に通っているエリートであり、この街最強の能力保有者の一人でもある。
所有する能力はいたって普通の『炎熱操作』だがその操れる炎量、温度ともにこの街の炎熱操作の中では最強である。
しかも本人は優しい性格の上に見ての通り超絶イケメンである。これでモテない訳がない!
けど彼女は今まで一人もいないらしい。て言うか全部振ってるらしい。妬ま……じゃなくて羨ましいやつめ。
そんなうちに信号が青に変わって龍騎が俺のほうに走ってきた。
「いやー悪い。遅くなった」
「よし、まずは3時間の遅刻の理由を教えてもらおうか。返答次第によっちゃここでお前をしばく」
「それが、また愛宕先輩に見つかっちまって……」
「ほうほう。それで逃げ回ってたと」
「ああ。まあそういうことだ」
「ならしょうがないな」
「そうか許してくれるのか……ッ!?」
と言うと宮本は顔をぱぁあと明るくしたあとに一気に険しい表情に変わった。
「って許すかボケッ!! 3時間の遅刻ってなんだよ!! カップラーメンが六十個作れる時間だぞ……っておい!?」
俺の渾身のノリツッコミを無視されたと思ったら、龍騎に手を引かれてそのまま全力疾走でつれてかれてしまった。
「悪い緋色! 全力で行くぞ!!」
「え、ちょまっ――――」
次の瞬間龍騎の両手から炎が飛び出し速度がグンと加速した。
そのまま細い路地裏には入って、建物と建物の壁をどこかの配管工のおじさんさながらの壁キックで上っていき、建物の屋上に着地した。
「―――――っだァ……はぁ……~~~ッなんなんだよいったい!!」
手を膝につきながら荒い呼吸を繰り返す。
直接働いてはいないけどGとかいろいろきつかったんだよちくしょう……。
「いや、まだ追っかけられててな。あの先輩やっぱしつこ」
と、龍騎のセリフを遮ってズガガガガガガと銃声が鳴り響いた。
龍騎がいち早く気づいて俺を担ぎ上げながら横っ飛びにかわす。上を見るあげると逆光でよく見えないが少し小さな人影が見えたような気がした。
「爆散遮!!」
龍騎が手を横に振ると炎が相手の視界を遮るかのように囲んで、その隙にビルの下に飛び降りた。
あいつ自分の技名とか考えてたんだー……って……。
「えェェェええええええええええ!?!?」
どんどんと加速しながら目前に迫って来る地面。あぁ、俺の人生もここでおしまいか……。
「逆噴射ッ! ……っと」
もうだめだ。とか思ってたら直前で龍騎の手から炎が飛び出して速度がガクンと落ちて無事に着地できた。いやーよかったよかった。
「じゃねぇっての!! 何回言わすきだテメェ!? 死ぬかと思ったわ!『そんなことより緋色』そんなことより!?」
「俺はこれからあの先輩から逃げないとならん。でもさすがにお前を連れて逃げるのは無理だからここで別れよう。じゃあな! また今度遊ぼうぜ!!」
そう言うだけ言うとものっすごい勢いで走り去っていった。……いや、あれはもう飛んでるって言っていいな。うん。
その後に隆起を追いかけるような小さい黒い影も見えた。見えたっていうか視界を一瞬だけ通り過ぎてっただけだけど。
「……さて、帰るか」
こうして俺の貴重な毎日は無駄に過ぎていくのだった。
「はぁ……ただいまぁ……」
ガチャと玄関の扉を開けてまず警戒したのはゆうの攻撃|(?)こんな生活嫌だな……と思っていたらいつまでたってもゆうが来ない。
「あれ? ゆういないのか?」
リビングに入るとソファーの上でだらしない格好で寝転んでいるゆうがいた。
「うあーー……? あー……お兄ちゃんおかえりー……」
ぐでーっとのっそりと起き上がりながらギューッと抱きついてくる……はいはいいつも通りいつも通り……ん?
「お前……なんか熱くないか?」
「そりゃお兄ちゃんへの愛でいつも燃えがってるもん! いや、萌えあがってるもん!」
いつも通りだった。
「今日は……俺が料理担当か……じゃあ買い物行くけど……ついてくるか?」
「もっちろん! お兄ちゃんの右腕は私のものだよ!」
「誰のものでもないけどな」