3話 不知火の屋敷
「いやーいい買い物したな」
「そうかそうかそいつはよかった」
そんなわけで何故か男友達の服を買いについて来た俺は、特になにをするでもなく買い物を終えた恭介と共に店を出ていた。
「私もいいのが買えたわ」
「え? お前なんか買ったの?」
「き、聞くの!? えっと、私が買ったのは、あの……その……水着『じゃあいいや』なんで聞いたの?」
何故かショックを受けていた魅咲は放おって、恭介に話しかける。
「で、だ。これからどうする。かなり時間が余ったが」
「そりゃ男の服を買いにいくのに、時間を費やす必要性はどこにもないからな」
「俺の家に来るか? ここじゃ暑い。クーラーのあるところに行きたいし」
「じゃあ宮本のやつも誘ってみるか」
どうせならと思い、よくつるんでいる友達のひとりである、『宮本龍騎』というやつに番号に電話をかける。4コール目くらいでやっと電話に出たのだが。
「おう龍騎か?(ズガガガガガガ)今から恭介っ家……(チュイン! チュンチュンッ)んだけど暇だったら一緒に行かないか……(ドゴォォォォォン)何があった宮本!?」
と、向こうの電話からは物騒な銃声やら爆発音やらがめちゃめちゃ聞こえてきていて、どうも全く届いていないようだった。
「あ!? よく聞こえんが今日は無理だ!! ってついてこないでください愛宕先輩!!『うるせェー! 黙って俺に殺されろ!!』イヤですよ! そういうわけで悪い緋色!!」
と、そのまま一方的に切られてしまった。
「宮本はなんて?」
「例の先輩」
「あー……じゃあしょうがない。いくぞお前ら」
◆◆◆◆◆
そんでもって30分ほど歩いて恭介の家についた。
実家が金持ちなだけあってかなり大きいのだがこれを二人でしか使ってないのだから宝の持ち腐れだと思う。半分よこせや。
「おーっす……ただいm―――『おかえりなさーーーーーい、ご主人様ああーーーーーーーー!!!』グフッ!!?」
ドアを開けたとたん、とてつもない速度でダイブしてきたのは恭介のところのメイド『凶夢』さんだ。
綺麗な白髪に標準的なメイドの格好をしているキョウさん(凶夢だからキョウさん)はこのクソ広い屋敷唯一のメイドさん。恭介の専属というやつなのだ。
正直羨ましい。
「お帰りなさいませご主人様!!」
満面の笑みで迎えるキョウさんは、本当によく出来たメイドさんだと思う。うちにもこんなメイドさんがいたら、と思ったが妹の顔がよぎりブンブンと頭を振る。
ちなみにキョウさんはあくまでも不知火家のメイドなので、ご主人様と呼ぶのは恭介ではなく、不知火家現当主である恭介の兄なのはずだが。キョウさんだけは恭介のことをご主人様と呼ぶのだ。
「……分かったキョウ。とりあえずそこをどいてくれ」
「あ、はいすみませんでした」
パッと恭介の上からどいてうやうやしくお辞儀をして扉を開けるキョウさん。こういうところだけ見れば普通のメイドさんなんだけれど。
家の螺旋階段を上がり、恭介の部屋のある二階へと向かう。そして二階へ着きここは恭介の部屋の前なのだが……。
「何よこの南京錠……?」
「……こうでもしないとキョウの奴が勝手に入ってくるんだよ……。つけとかないと俺の貞操が危ない……」
「……大変ね」
「コイツも苦労してんだよ(棒)」
「(棒)ってなんだよ。絶対思ってないだろ部屋入れないぞ」
そう言いながらも南京錠をかけドアを開けると、そこにはいつも通りのクッソ大きい部屋が広がっていた。
……入った後恭介が、厳重に内側から鍵を掛け直してたのは言うまでもない。
「な、なによこれ!!??」
「ま、俺はさすがに見飽きたがな……」
大きい部屋と言われて想像する部屋ってどのくらいだろうか? 多分それの5、6倍は大きい。
二階のフロア全部ブチ抜いてる部屋なので、大きさはそりゃあもうとんでもない。
「基本的にこの部屋だけでなんでも揃ってるから。さてじゃあなにする?」
「んー……」
どうしようかとなにか悩んでいたら、後ろの方にコソコソと隠れるキョウさんがいた。キョウさーん、南京錠はどうしましたか。
とここでいいことを思いついた。
「あ、そうだ用事あるの忘れてたわー今日は帰るわ―」
そう言いながら魅咲の手をとって立ち上がり、扉の方へと歩きながら、キョウさんにウインクする。キョウさんも察したようでコソコソと移動を始めていた。
「? どしたの緋色……ってあぁ……」
「? いきなりなんだ……ひゃぅぅっ!? キョウ!? 何してんの!?」
後ろを振り返ってみると、恭介の腰のあたりに手を回して抱きついているキョウさんの姿が映った。
「そんなもの愛の力でぶち壊してきましたッ!!」
「お前はもう人間やめたのか!?」
「キョウさんさよならです」
「はい。お気を付けてお帰りくださいねー」
「何のんきに挨拶してるの!? 助けろよ!『さぁご主人様! 一緒にお着替えしましょう!!」誰かぁーーー!!」
日頃振り回されているお返しだ。せいぜいメイドさんとのイチャラブを楽しむんだな。
そんなことを思いながら、俺たちは恭介の断末魔の叫び声を聞きながら屋敷を出た。