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だらだら過ごしてるけど能力者ですから  作者: 長月シイタ
第一章 『超能力者』と書いて『一般人』と読む
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2話 嵐の前の静けさ

 

「………………ねむ」


 時刻は朝6時。朝早くで日差しはそこまで強くはないが、もうセミがミンミンと騒いでいた。

 ちょっとまだウトウトはしているが、思考は一応しっかりとしてる。

 いつもだったら11時くらいまで寝ているのだが、この日なぜか(多分疲労のせい)いつもより早く目を覚ました。

 じゃあ顔でも洗うかなと布団から出ようとしたら。


「……むにゃ」

 

 布団の中(もちろん俺ののベット)で幸せそうに寝息を立てている、ゆうが視界に入った。


「はぁ……」


 夜中に俺の部屋に忍び込んで入ってきたのだろうが、これはいつもの光景なので別段驚きはしない。


 けど、


「さっさとどけェェェええええええええ!!!」

「ブギャフ!!」


 勿論布団からは払い除ける。くたばれ。


「あれ、どうしたのお兄ちゃん!? 地震!?」

「『地震!?』じゃねぇ!! いい加減自分の部屋で寝ろっつてんだろ!!」

「だが断……『機動砲台(ファンネル)、|起動準備』ちょ! お兄ちゃんそれはシャレにならない!?」

 

 おれは腰につけたファンネルを飛ばす。

 ファンネルなんて大仰な名前をつけているが、ただの電池引っ付けた小型の放電装置を念動力(サイコキネシス)で浮かばせ、電力調整(エレキチェンジャー)で電池内の電気を放電させるという、何かと物騒なこの超能力者たちの街で安全を確保するために作ったものだったのだけれど、まさかベッドを陣取る妹を吹き飛ばすことになるとは。


「なろうとは。じゃないよ!? 本気で打つつもり!?

「早く出てかないとマジで撃つ」

「わ、分かったよ……」


 渋々といった感じで部屋を出ようとするゆう。

 だが、『スキ有りッ!!』と叫ぶと、ありえない速度で方向転換してそのまま俺の方に向かってに飛びかかってきた。


「なッッ!!?」


 恐らく能力を使って足にかかるベクトルでも操ったのだろう。ってそんな冷静に分析してる場合じゃない。


「えへへ。こうすればお兄ちゃんもファンネル撃てないよね♥」


 そのままギュウーっと抱きつきベットに押し倒される。髪の毛が頭にかかってシャンプーのいい狩りがフワァと……じゃないじゃない!


「離せゆう!!『いやだ! 絶対離さないもんね!!」はーなーれーろー!!」

「いーやーだーー!!」


 兄妹でベットの上でワーギャーワーギャ騒いでいると、ドアがいきなりバンっと開いた。


「ちょっと! 朝っぱらからなに騒いでるのよ!! こっちまで聞こえてきてるわよ!!」


 入ってきたのは隣の家に住んでいる俺の幼馴染『嫦娥院(じょうがいん)魅咲(みさき)』だった。

 黒く腰まで届く長い髪をツーサイドアップにしており、整った顔には右目に眼帯をしてる。本人曰く「『黒式極炎獄の終焉(ブラッディフレイメンツエンド)』の力を封印しているとのこと。これだけ聞けばただの中二病なのだが、魅咲は頑として自分の能力を明かさないので実際にそういう能力なのかもしれない。……多分違うと思うが。


「あ……」


 と口をぽかんと開ける魅咲。俺とゆうは、傍から見ればベットの上で絡み合っているようにしか見えない状態なのだ。


「ごめんなさい……お邪魔だったみたいね…………」

「ちょっと待てェェェえええええ!!!!」


 扉を開けて回れ右しようとしている魅咲を大声で呼び止める。


「な、なによ……。はっ! 私も交えて3Pでやるつもり!? そ、そそそそそそういうのはもうちょっと大人になってから……」

「誰もそんなこと言ってねぇよ!!?」

「ダメだよ! お兄ちゃんの心は私のものだから!!」

「お前も誤解を増幅させるようなこと言ってんじゃねェェえええええ!!!!」


 結局このあと誤解を解くのに一時間もかかった。

 いつもより数倍早く起きたこの日だったが、眠気は安全に吹き飛んでいた。



 

 そんでもって、ようやく昨日の夜恭介と約束した場所まで来ていた。昨日と同じ商業区にある、大きな交差点の前の巨大な宣伝用のテレビがある通称テレビ通りという場所だ。


「で? なんで魅咲まで来てんだ?」

「いいじゃないの。暇なのよ」

「まぁ、別にいいんだけど……」


 炎天下の中、魅咲は黒い男物の学生服のような服を着ていて、さらにどっかのお嬢様が持っていそうなヒラヒラしたフリル付き(だが色は黒)の小さな丸い日傘を持っていた。変な格好といえば変な格好なのだが……似合っている。

 一方俺は、半袖にジーパンという昨日と似たような格好。平凡こそ至高なのだ。どうせファッションセンスなんて物もないし。


「あいつ……人呼んどいて遅いなぁ……」


 とその時『ごめぇ~ん! まぁったぁ~?』と待ち合わせに遅れてやってきた彼女みたいな気持ち悪い声を発しながら、向こうから恭介がやって来た。


「その声ヤメロ。果てしなく気持ち悪い」


 時計を確認するともうすぐ午後一時。待ち合わせ時間は一時なので遅刻ギリギリである。


「いやぁ悪い悪い。凶夢が暑さ対策にあれもってけだの、これ持ってきだのうるさくてさ」


 実は恭介は世界の大きな騒動イベントの8割に関わっていると言われる『不知火財閥』の次男なのだ。

 『凶夢きょうむ』というのは恭介のところで働いているメイドさんの名前である。もちろん本名ではなく恭介の付けたあだ名。

 不知火家では自分の家のメイドにあだ名をつけることが家訓となっているみたいで、凶夢の由来は『コイツが来てから変な夢を見るようになった』からだそうである。

 凶夢は異常に恭介に執着(と言うより恋愛感情)を抱いており、あれやこれや、こうこうこーする複雑なお年頃(21歳)なのだ。


「ふーん……凶夢さんも大変だね。一人で家事全部やってんでしょ?」

「たしかにそうだな。今度プレゼントでもくれてやるか」


 プレゼントかぁ……あの人なら『じゃあご主人様!! 一緒にお風呂はいりましょう!! 一刻も早く入りましょう!! さぁ!!!』ぐらいのことなら言いかねないだろう。


「そういえば今日はどこに行くのかしら? 私はまだ聞かされていないのだけれど」

「仕方ねぇだろ。こっちだって聞いてねぇんだよ。で、どこに行くんだ?」

「ちょっとデパートに用事なんだ」

「ふーんデパートねぇ……」


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