16話 夕食と青春
四ヶ月ぶりってなんだよ! ふざけてんのか! ダメ作者おい!
……ほんと更新遅くてすみません。代わりと言ってはなんですがいつもよりちょっと長めです。
それと最後にちょっと重要な報告があるので、読み飛ばさないよう気をつけてください。
「そういや今日の飯はどうするつもりだったんだ?」
「え? 挽肉と野菜が残ってたから適当に練って餃――ハンバーグ」
「おい今餃子って言いかけたろ。無理に女子力取り繕おうとするな。ゆう、卵割ってかき混ぜといて」
そういうと、ゆうはいきなりなにか閃いたようで、冷蔵庫から出した卵を片手にくねくねしだした。
「えぇ~? 私ぃー女子力の塊だからひよこさんが可哀想で卵われな~い」
「何が女子力の塊よこの暴力バカ」
「なにか言ったか中二野郎」
「おい女子力の塊、卵握りつぶしてんぞ」
そんな物騒な会話が繰り広げられる午後六時。俺たち三人は夕飯の準備をしていた。俺が混ぜ、魅咲とゆうが包み、三人で作業を分担して餃子を作っていた。
「で、結局餃子にするのね。貴方ハンバーグ好きじゃなかったかしら?」
「ハンバーグ好きだけど、そうしたら餃子の皮余ってもったいないだろ。ハンバーグ好きだけどさ」
「お兄ちゃんて結構子供舌だよねー」
「美味しいもんは美味しいだろ。それの何が悪い?」
「い、今のセリフカッコいいわね……メモっとこう……」
「そう言われると途端に恥ずかしくなってくるからやめろ」
そんなことを言いながら俺達は淡々と作業をこなしていた。
「ん……なにこれ。不格好すぎない?」
魅咲がボロボロの餃子をひょいと掴み、文句を言いながら形を直す。
「あ゛ぁ? なんか文句あんのか中二野郎?」
「文句あるから言っているのだけれど。これじゃあ上手く火が通らなくってよ?」
「ぐっ、う……」
すごい。口調はアホみたいなのに言ってることはすごい普通だぁ。そんなことを思いながら俺は黙々と餃子のタネをこねていた。
「まったく。不格好なだけならまだいいのだけれど……バカは自分の力の調節もできないのかしら? 愚の骨頂ね」
「お前よく『くっ、封印されし右手の力が抑えられない……!』とか言ってなかったか」
「あ、あれは……! ……そ、そう! あの頃はまだ未熟だったから! 今は大丈夫よ。うん」
結局設定安定してないじゃんと思いつつ、ふとゆうの方を見ると、なぜかふるふると小さく震えていた。
「――だーれーがー……! 脳筋ブラコンヒステリックバカよ!」
そう叫ぶと、近くにあった餃子のタネが入ったボウルをグシャグシャとひしゃげさせて、その丸めたボウル、もといボールを高く掲げた。
「お、おいバカ! ていうかそこまで言ってねぇ!!」
「吹・き・飛・べ!」
投げ――いや、爆ぜた。
☆☆☆☆☆☆☆
「まったく……お前のせいでとんだ災難だよ。飛び散ったタネとボウルの破片片付けるのにどれだけ大変だったか」
「うぅ……」
「それに今日の夕食もなくなってしまったから」
「うぅ…………」
時刻は既に7時を過ぎていたが、まだ十分明るい。今のうちに外で食べるなり新しく買ってくるなりしないと思い、俺ら三人は外へ出ていた。
「で、どうする。外で食うなら俺がおごるけど……ゆうはもちろん自腹な」
「デスヨネ……」
「い、いいわよそれくらい自分で払えるわよ。……それにちょっと早いけど宿題手伝ってくれるお礼ってことで」
「そうか。じゃあラーメン食いに行くか」
☆☆☆☆☆☆☆
「俺タンメン」
「あいよ」
「えっと……じゃあチャーハンと餃子のセットを」
「あいよ」
「チャーシューめ……580円……あ、いや普通の360円のラーメンでいいです……」
「あいよ」
そんなわけで、学校と家の通学路の途中にある俺行きつけのラーメン屋に来ていた。
「ほんともうおなか空いたわねー」
「そうだな。どこかの誰かさんのせいで夕飯が遅くなったからな」
「うぅ……反省してるからもう言わないで……」
そう言ってゆうは恥ずかしそうに俯いた。感情的なバカだからすぐ頭に血が上っておかしなことをしでかすけど、時間が経てばバカなことしたというのは自分でもわかっているはずだ。
「すみません。そのラーメンチャーシュー麺に変えてもらえますか?」
「あいよ」
大将にそう言って注文を変えると、ゆうが『お兄ちゃん……?』とびっくりした顔でこっちを見てきた。
「……まぁ反省してるみたいだからな。ちょっとぐらいはいいだろ」
そう言うとゆうはパァっと顔を明るくして。
「ありがとう! お兄ちゃん大好きっ!」
「はいはい。お前の大好きは軽いな」
大好きと言いながら嬉しそうに抱きついてきた。その隣では魅咲が頬杖を着いてこっちを見ながら、はぁ……と溜息をついていた。
「……ほんと、貴方は妹には甘いわね」
「俺はだれにでも甘いよ。……もちろん自分にも」
そう言いながら自分もため息を吐いた。……余計なことを言ったな。
「知ってるわよ……何年の付き合いだと思ってるのよ」
「それはそれで傷つくぞ……」
俺は未だに自分で自分が嫌いなんだな。そんな自己嫌悪に陥りながら、出された水をグイッと飲んだ。まだ暑さの残る外を歩いてきて火照った身体に、冷たい水が心地よく染み渡ると少しだけ気分が晴れた。
「はぁ……それにしてもこの後大量の宿題が待ってると思うとそれはそれで憂鬱だなぁ」
「だ、だからここは私が変わりにおごるんじゃないの……」
「わーってるよ。食った分はちゃんと働くよ」
そう言いながら残りの水を飲み干した。
☆☆☆☆☆☆☆
そうして夕飯を食い終わった俺らはまた魅咲の家へ戻って宿題を片付けていた。
「お風呂沸かしたけど先入る?」
「んや、今これやってるから後でいいよ」
そう言いながら手を動かす。チラっと宿題の方を見るとまだかなり貯まっていた。
こりゃ徹夜になるかな。と思い若干憂鬱になる。
「はーい。……私が入った後のお湯飲んだりしないわよね?」
「いらねー心配してんなら風呂冷めるから先はいるぞ」
「冗談よ」
『つまんないの』と言いながら部屋から出て行き、魅咲の部屋には俺とゆうの二人っきりになった。お互いには目もくれずただカキカキとシャーペンの音がだけが部屋に響いていた、
「お兄ちゃん覗きに行かないの?」
しばらくして、ゆうが英語の問題集を片付けながらそんなことを聞いてきた。
「女の子はお風呂長いって言っても、そろそろ出ちゃう頃だよ」
「お前もアホなこと聞いてないで手を動かせ。徹夜したいのか」
「え、お兄ちゃん異性の裸に興味ないの?」
「なんでそうなるんだよ……」
「もしかしてホモ!? 私弟のほうが良かった!?」
「今度それ言ったらぶっ飛ばすぞ」
「じゃあ……」
ゆうはそう少し置いた後、こっちを見つめながら続きをしゃべりだした。
「美咲さんには……興味ない。ってこと?」
ガタッと音がした。目線を下に向けるとさっきまで手に持っていたシャーペンを落っことしていた。
「そういう……わけじゃないけど……」
「じゃあ好きなの?」
「なんで二択なんだよ……」
そりゃあどっちかと言ったら好きだ。けどそれはlikeの好きであって決してloveじゃない。それははっきりしている。
けれどじゃあ異性として意識していないのかというと……。
「いや、興味ないのかも」
「オイ」
そりゃ友人としては好きだし、付き合いも長い。いや、なまじ付き合いが長かったせいだろうか。その付き合い自体も男友達みたいな付き合いだ。
「まぁ、可愛い方だとは思うけどね。中身はともかく」
「そうだね。中身はともかく」
「おまいう」
「おまいう?」
「お前とあいつだったら美咲選ぶってことだ」
「嘘っ!?」
ありえないとでも言いたげな驚いた表情で立ち上がる。その自信はどこから来るのか。けどすぐに何かを思い出したのか、いつもの得意げな顔に戻る
「ま、まぁ別にいいけどねっ! なんてったって私はお兄ちゃんのファーストき――」
と、そこまで言ったところでゆうが顔を真っ赤にして固まってしまった。
「俺のファーストなんだって?」
「な、なんでもないっ!」
なんだか少しだけ嫌な予感ってやつがしたが、ここは敢えて追求しないでおいた。世の中には、偉大な先人の遺した『知らぬが仏』という言葉があるのだ。
その時、部屋のドアが思い切りバァンッ! と開き。なんだか黒い負のオーラを身に纏った魅咲が現れた。
「優子さん? ちょーーっとお話があるのだけれど……」
「はひっ!?」
ピシっと別の意味で凍ったゆうは、そのまま黒いオーラを纏った闇の女王に部屋の外へと連れてかれていった。
ゆうが萎縮するとは珍しい。そんなことをボケーッと考えながら黙々と宿題を片付けていた。……ていうかあいつ、タオル一枚巻いただけの格好で出てきてたけど、あいつもオレのことなんとも思ってねぇんじゃないかな……。
突然ですが『しらばく小説の更新を停止』するつもりです。
……「なんだいつも通りじゃないか」みたいな感じなんですけど、理由としては「設定の見直し、固め」を行いたいからです。
(以下言い訳)この小説を書き始めたのはかのにじファンが終わった直後なのですけど、行き当たりばったりで始めたため設定がうまく固まってない部分が多くて、その部分でつまずいて更新が伸びることが多かったのです。 そのためちゃんと設定を固めてから、また更新を再開するつもりです。……さすがにまた4ヶ月とかは開かないとは思いますけど……多分……多分。