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だらだら過ごしてるけど能力者ですから  作者: 長月シイタ
第二章 そして物語は動き出す
15/20

15話 お互い無言でも辛くないっていうのも友達の証だと思う

タイトルが意味不明なのは仕様です

「あと一週間したら学校じゃねーか!!」

「うわびっくりした。急に叫ばないでよお兄ちゃん」


 ほうれん草を茹でている間。なんとなくカレンダーを見ていたら、夏休み終了まであとちょうど一週間を切っていたことに気がついた。どうりで最近涼しくなってきたはずだ……。


「なに、宿題でも終わってないの? 手伝ってあげようか? その代わりお兄ちゃんを一日自由にしていいよね? ね?」

「宿題は終わってる」

「チッ……」


 それで前に一回手伝ってもらって痛い目見てるからな。同じ轍は踏まないぜ。

 助かったーと思いながらほうれん草を水で冷やしていると携帯に電話がかかってきた。画面を見ると魅咲からだったので、一旦手を休めて電話に出ると魅咲のすすり泣く声が聞こえた。


「ひ、緋色ぉ……」


 こいつが()に戻るなんてなにかトラブルが……と思いどうしたと聞くと。


「あのね…………しゅ……」

「しゅ?」








「宿題が終わらないの……」




     

                   ☆☆☆☆☆☆☆☆☆






「何か言い残すことは?」

「ごめんなさい! 後で何かお礼はするから暴力はやめて!」


 そんなわけで桐島家に来ていた。来ていたって言っても窓から窓伝ってとなりに移動できるレベルの隣の家だが。


「はぁ……で? どれとどれが終わってないんだ?」

「全部」

「もう一回」

「……全部」

「帰っていいかな」


 ……もうなんか頭痛くなってきた。めんどくさがり屋の俺だって、さすがに一週間前になんにも終わってないとかありえない


「えっとね……全く手をつけてないってわけじゃないんだけど……時間がなかったというかその……」


 話聞きながら今気づいたけど、コイツ電話の時からずっと素に戻ってるな。ちょっとした時に素に戻ることはあったけどここまで長くはないし……なんか昔に戻ったみたいだと少し懐かしくなった。

 こんなん(中二病)になったのいつからだっけかなと一瞬考えたけど、中二からだったのを速攻で思い出した。


「はぁ……で、全部ってどれだ。選択科目とかもあっただろ」

「えっと主要教科の英語、数学、国語、歴史、物理、生物、能力学《、、、》と選択科目がドイツ語、心理学……」

「なに? お前ドイツ語喋れたの?」

「のわーる?」

「お前に聞いた俺が馬鹿だったよ」



     

                   ☆☆☆☆☆☆☆☆☆




 結局『お願いっ! 今度緋色の好きなラーメン屋さんで奢ってあげるからっ!』と拝み倒され手伝うことになったのだが。俺だって決して勉強できるわけじゃないし、二人でやるにはちょっと量が多すぎると思いあの二人(龍騎と恭介)に声をかけてみたのだが。


「悪いっ! 今日は炎熱系能力者の講習会があるんだ!」


 と断られた。ちなみにもう片方は。


「ほう。俺に貸しを作る気とは随分といい度胸だな緋色。よしきた。それじゃあこの前ちょっと拾った(、、、)薬の実験台に……」


 とかなんとか言い出したので、最後まで聞かずに電話を切った。


「ふ、ふふ……異界の女王(アウトオブクイーン)であるこの私にかかれば容易いが、今はこんなことに力を費やしている場合では」

「いいから黙ってやれ」

「うん……」


 というわけで仕方なく二人で地道に問題集を片付けていた。俺は一番得意(他よりましってだけだが)の国語を。あいつは自分の選択科目のドイツ語をやっていた。全然進んでる気配はないけど。


「……進んでる、か?」


 恐る恐る聞くとじわぁ……と目元に涙を溜めていた。じゃあなんで取ったんだよ……。


「だってだって……しゃべれるとカッコいいかなぁって思って……」

「そんなこったろうと思ってたよ……」

「こ、こうなったら……」


 そう言って美咲はポケットから携帯を取り出すと誰かに電話をかけ始めた。


「……あ、もしもし? えっと宿題……うん……うん……ほんとっ!? えっ……う……うん……わかった……じゃあ持ってきてね……うん……」


 何か約束をしたようで「じゃあまた今度ね」と言って電話を切った。


「? 答えでも見せてくれるって?」

「う、うん……まぁそうだけど……」

「ていうかお前同性の友達いたのな」

「破道の九十九……」

「詠唱破棄かよ」


 知らない人にはつまらないネットのノリを現実でやるのやめろ。白けるんだよ。


「ていうか失敬! 失敬失敬失敬!」

「いやだってお前普段が……ねぇ……」

「やめて! 哀れみの目を向けるのはやめて!」


 ……うん。昔はこう普通だったんだよ。それじゃ今は……いや、今は戻ってるんだけど……。とかなんとかどうでもいい話をしながらカキカキしていたら俺の家側の窓がガラッと開いた。


「ラブコメの破道を感じた!」

「破道の字が違うんだよ!」


 ゆうが入ってきた。確かにゆうも美咲とは幼馴染っちゃ幼馴染だが、流石に他人の家に窓から入ってくるのはどうかと思う。


桐島美咲きりしまみさきィ! なに人の兄ちゃんとイチャついてんだゴラァ!」

「その名は捨てたわ。今は嬢蛾院魅咲よ! あと別にいちゃついてないし!」

「うっせぇぇ! お兄ちゃんとの恋路を邪魔する奴は全員ブッ潰してやる!!」」

「はッ! ただの人間ごときがこの私に勝てるとでも思っていて!?」


 笑いながらブチギレモードに入って絶対防御範囲ノンキルレンジの構えを取るゆうに対抗して、美さ……魅咲もイラつきながら降り注ぎし闇から護りし剣(ただの黒いフリルの折りたたみ傘)を伸ばす。


「おい宿題終わらす気ねーのか」

「はっ、そうだった」


 一言で我に返ると傘を下ろして。それを見てゆうはなんのことかと首をかしげていた。


「……? あぁ、なに宿題やってなかったの?」


 そして数秒ほど考えたあと。理解してニヤッと意地悪い笑みを浮かべた。


「いや、でもそうすればお兄ちゃんを一日独占できる……!?」

「絶対手伝わない」


 だいたいお前とっくに終わってるだろ。


「で? お兄ちゃんもう夕方なんだけどお夕飯とかどうするの?」


 作業に戻ると、入ってきた窓を開けながらゆうが聞いてきた。


「あぁ、いいよ。今日こっちで寝るし」

「!?」

「!?」


 そう答えたらゆうと美咲が二人して頭にタライが降ってきたような顔をしていた。顔色はゆうが真っ青で美咲は真っ赤と正反対だが。


「いや、ゆうはわかるけどなんでお前まで驚いてるんだよ。お前が宿題手伝えって言ってきたんだろうに」

「い、いやっそうだけど私はそんなつもりじゃ……っ!」

「お泊まりイベントだとこの雌猫が……ッ!」


 ゆうはこめかみに青筋を浮かべながら、半分出ていた身体を戻して窓をピシャッと閉じると。


「私も泊まる!!」


 と言い出した。

 



 まためんどくさいことになってきた……。

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