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だらだら過ごしてるけど能力者ですから  作者: 長月シイタ
第二章 そして物語は動き出す
14/20

14話 夏の朝日ってあんまり好きじゃない

「結局深山は戻ってこないか……まぁいつものこと、いつものこと。じゃあみんなで作戦会議始めるか」

「もう私がバッと行ってバッと倒しちゃえばいいんじゃないですかね?」

「それさっきやめてって言ったよね? なに、そんなに眠いの?」

『はっ、夜ふかしは肌に悪いんだぞガキ』

「テメエは自分の肌の心配してやがれババア」


 大丈夫なんだろうかこれ……。


「はぁ……とりあえず誰か道具箱からメガホン持ってきて」

「おっ? アレですか!? 『おっかさんが泣いてるぞー!』ってやつですか!? あたしにもやらせてー!!」

「そうだけど違う。そうなんだけど違う」


 ……大丈夫かなぁ。俺はそう思いながらやじうまの最前列からゆう達を見ていた。



               ☆☆☆☆☆☆☆




 廃工場。昔はあいつを迎えによく来ていた工場だ。今のあいつは『姉御とつるむなんて死んでもゴメンだ』なんて口では言ってはいるが。頼りにされて、自分の意味を求められて、内心満更でもないんだろう。


「……なんだお前か」

「久しぶりですね姉御」

「こんな朝早くから……何か用か?」


 姉御は、何の機械だったのかもわからない物からと飛び降り首をコキコキと鳴らした。


「まぁはい。……長生蘭愛宕のことは知っていますね?」

「ん? あぁ、聞いたことはあるが……そいつがどうかしたのか?」

「いえ、聞いただけですよ。すみません、朝早くから」

「ん、いや。どうせなんだか眠れない夜だったからいいんだが……それだけか?」

 

 俺は一泊間をおいてから『それだけです』とだけ答えておいた。

 今は時間が惜しい。


「……さっぱり意味がわからんが。……変わったな。お前も」

「変わってませんよ。何も」

「確かに、そういうところは変わってないらしい」


 苺が呆れて笑いながら、元いた場所に戻ろうと機械に喉っている途中でふと足を止めた。


「そう言えばお前。なんであたいのいる場所が……」


 苺がそう聞こうと振り向くと、そこにはもう彼の姿はなかった。それをみて苺はきょとんとしたあと昔を思い出してふっと笑った。


「確かに。変わってないようだな」



               ☆☆☆☆☆☆☆





「それじゃあみんな。今日もご苦労様」

「ふわぁぁい支部長……帰ったらもうひと眠りしよ。お兄ちゃーん。かーえろー」

「ん、あぁ。うん、そだな……」


 この数十分、俺はただただボーっと見ているだけだった。ただでさえ化け物級のゆうの同僚というから、どんなものかと思っていたけれど案外普通の人たちで少し安心した。

 犯人の男の警察に引き渡しもとっくに終わり、周りに居た野次馬も既に跡形もなくなっていた。


「緋色さんもお疲れ様でした」

「いや、俺はなんもしてないですよ。ただボケーっとつっ立ってただけです」

「風見……妹さんを心配して来たのでしょう?」

「そうなのお兄ちゃん!?」


 ゆうは目をランランと輝かせて聞き返してきたが、普通違うので『いや、違います』と適当に否定しておいた。


「ちょっと……色々悩んでいて」

「そうなのですか?」

「……ひとつ聞いてもいいですか?」


 苦視にそう聞くと『僕でよければ』と少し笑って答えてくれた。


「目の前で人が死んだ経験って……ありますか?」

「あるよ」





               ☆☆☆☆☆☆☆



「――お兄ちゃん」

「……?」

「どうしてあんなこと聞いたの?」

「……なんでだろうな。……でもなんか、ちょっとだけ気が楽になったよ」

「そっか……」


 俺とゆうはとうに上へと登っている朝日の照りつけを受けながら、まだ人の少ない街道を通ってとぼとぼと家へ帰っていた。


「そっかーそれならよかったよ」

「お前も大変だな」

「お? わかってくれた?」

「お前の相手してる俺はもっと大変だけどな」

「もっといっぱい愛を注いであげてもいいんだよっ?」

「はっはっは。ぜってーお断りだ」


 妹とそんな馬鹿な話をしながら帰る道は、久々に楽しい気分になった。


「このあとあんな悲劇が待ちうけているも知らずに……」

「変なナレーションいれんな!!」

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