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だらだら過ごしてるけど能力者ですから  作者: 長月シイタ
第一章 『超能力者』と書いて『一般人』と読む
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1話 彼らの日常

 地球上の人類の三割が超能力に目覚めた世界。日本では対策として47都道府県中23県に、超能力者だけを集めた街『超能力者特別保護区』を作って監視することにした。

 これは東京にある超特区に住む、とある高校生たちの日常―――――――――

 

「暑すぎんだろ!! ふざけんな地球!!!


 周りをビルで囲まれた街を歩きながら、俺、『風見緋色かざみひいろ』は思いっきり叫んだ。周り人がこっちをジロジロ見てきたが、暑さで疲弊していた俺には全く気に留めなかった。

 そもそも、ボサボサの手入れの行き届いてない黒い髪に、日本人なのになぜか赤い眼をしているという特異な容姿を持つ俺は、何もしてなくてもかなり目立つので、ジロジロ見られるのには慣れている。


「地球温暖化だからな。しょうがないだろ。というか地球にキレてもしょうがないと思うが?」

「それ以外にも高層ビルが多すぎるのも問題だと思うがな!」


 この街『超能力者特別保護区域東京庁』には超能力を持った学生、社会人がひとまとめに集められた街のため、限られた土地で、学校や会社などの場所を確保したため必然的に縦に伸びてしまい、高速ビルが乱立するという有り様になってしまったのだ。

 そのためこの第四区、もとい商業区などは涼しい風など吹かない


「しかしほんっと暑すぎるだろこれ……」

「静かにしろ。暑い暑い言うな。こっちまだ暑くなってくる」

「はー……こういう時、温度操作系能力だったら便利なんだろうなー……」

「お前の能力は電力調節エレキコントローラー念動力サイコキネシスだろう。そんな無駄なこと言ってどうするのだ?」

「分かってるよ! 分かってて言ってんだよ!!『わかってて言ってて虚しくはならない?』……………」

「ほら泣くな」

「泣いてねぇよ!!」


 この鋭いツッコミの主は『不知火しらぬい恭介きょうすけ

 中学の時からの友達なのだが、大のトラブル好きという困ったやつ……。中学時代『四強』などと呼ばれ、敬み恐れられていたうちの『知力』をつかさどる一人でもある。ちなみにあとの『能力』『人格』『裏性格』の三人も全員知り合いなのだが……。


「おっと。そうこう言ってるうちにもう家か」

「あー……もう着いたか」

 

 俺らが喋っている間に、いつの間にか元いたビル街を抜けて自分達の家がある第三区、通称住宅区に着いていた。こちらはビル街なんかと違って、高い建物といえばせいぜい集合住宅くらいのものだ。同じ街でも空気が違う。


「じゃあな緋色」

「おう。さーってと。俺も帰るか」




                       ★★★★★




「……ただいまぁー」


 誰に言うでもなく、小さな声で挨拶をしてドアを開けて玄関に入る。すると、たたたたたと階段を下りてくる足音が聞こえてきた。


「おっ帰りぃ! お兄ちゃーーん♥」


 と廊下の先から栗色のツインテールを揺らしながら妹の『ゆう』こと『風見優子(かざみゆうこ)』が走ってきて。


「おー……。よく聞こえたなゆう……」


 そのまま俺めがけてダイブしてた。


「あっぶねぇ!?」


 顔に当たるか当たらないかと言う寸前で、昔鍛えられていた反射神経をフルに使いなんとか間一髪でかわす。なんでこんな日常で、スポーツ漫画の覚醒イベントみたいな集中力を発揮しなければならないのか。ひとえにこの妹のお陰である。


「グギャブ!!」


 廊下で加速してからの全力のダイブを俺にかわされたゆうは、そのまま玄関のドアに向かって派手に激突してそのままずるりと倒れた。


「てめッ! あぶねぇな!! 今俺がかわしてなかったらどうするつもりだったんだ!?」

「いった~い! お兄ちゃんなんでかわしたの!?」


 にもかかわらず妹はすくっと立ち上がって涙目になりながら逆ギレしてきた。まぁ涙目も演技だろうけど。  

 こいつの能力は『速度操作(ベクトルチェンジャー)』はその名の通りベクトルを自由に操れる能力で、自分の身体にかかる負荷を減らしたり重力の力の向きを操って宙に浮いたり、今みたいに扉にぶつかった衝撃を細かく散らしたりとかなり汎用性の高い能力だ。

 さらには所持者本人の身体能力も高く。能力を使わなくても一般的な男子高校生くらいなら3人くらい相手取れる(本人談)らしい。多分脳みそを筋肉の方にまわしたに違いない。

 性格も明るく、友達も多い。言っちゃぁ自慢の妹なわけなのだ。


「逆になんでかわさないと思ったんだよ!」

「せっかくそのままお兄ちゃんを押し倒して15禁程度じゃ言えないあんなことやこんなことをするつもりだったのに~……ギャフン!!」


 この重度のブラコンを除いては。さえなければ。


「安心しろゆう。今ならショック療法で治るかもしれない」

「ざ、残念だね! 私のお兄ちゃんへの熱い思いは、たとえお兄ちゃんであろうと止められはしないのだッ!!」

「クソッ! 俺はどこで育て方を間違ったんだ……ッ。父さんや母さんがいればこういうことにはならなかったのか!?」

「逆にこんなカッコいいお兄ちゃんに惚れないほうがどうかしてると私は思うけどね。とりあえずお兄ちゃん早く玄関から上がりなよ」


 そういやまだ玄関に立ってたっけ……。そう思いながら靴を脱ぎ玄関に上がる。


「まったく……誰のせいだと思ってるんだ……」


 ためいきをこぼしながら二階にある自分の部屋へと上がった。




                         ★★★★★




 夜10時、俺は風呂に入り終わり、寝る支度をして布団に入っていた。


「はぁ今日も疲れた……。明日はゆっくり休もう…………」


 そうは言っているが、家に帰ってからはゲームとパソコンしかやっていないのでそんなことを言う資格はないかもしれない。そして布団をかけていざ寝ようと思ったその時。狙ったかのように携帯の着メロが鳴った。


「……なんだよ……寝ようと思ってたのに……」


 携帯をとると、やはりというかなんというか恭介からだった。こっちは眠気爆発なのだが、大事な用事かもしれないので渋々通話ボタンをオンにする。


「この話を聞いたあなたには、三日後に不吉な目に遭うでしょう。回避したくば同じ内容の話を十人に――」


 続きは聞かないでそのまま通話を切り、パタンと携帯を閉じてを机に戻して布団に戻る。


「さて寝るか……」


 ピルルルルル。


「一体何がしたいんだよお前!!」

「いきなり切ることはないだろう?」

「こっちは眠いんだよ!! お前のおふざけに付き合ってられるか!!」

「悪い悪い。それで要件だけどさ明日空いてるか?」


 一応は謝ってはいるが、すぐに別の話題に切り替えるあたり全く悪いと思っていないだろう。悪い奴じゃないんだが、こいつはこういうところが一々癪に障る。人を苛つかせる天才とでも言うべきか。

 ……おそらくは狙ってやっているのだろうが。


「……空いてるけど何か?」


 こっちは不機嫌度MAXなのだ。次あっちが何か言ってきたら変なことを言って困らせてやろうとか思っていると。


「ならばいい。一時に駅前の大型液晶の前で待ち合わせだ」


 そう早口で自分の要件だけを伝えるとすぐに切られてしまった。自分も早く寝たいので助かるといえば助かるのだが、やはりムカつく。


「はぁ……明日も忙しくなりそう……」


 とりあえず今は来るべき明日に備えて早く寝よう。そう思い布団に潜った。

 今日はいい夢は見れなさそうだ。



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