守護者揃う
アリアの視線に入ってきた世界は寝室以上に素晴らしい世界だった。
床は同じ大理石だが、部屋の真ん中においてある机もソファも見ただけで高級な物だとわかった。毎日磨かれているのかソファも机もキラキラと輝いていて、壁にある本棚には色々な国の文字で記された本がギッシリとつまり、何が入っているのかわからないが、置いてある調度品は寝室の物とはまったくもって違い木で作られてはいるが見ただけで手残んだ作りで作った方はものすごい人間なんだということが元庶民のアリアでも見てわかった。
本棚の前には、床に白い羽が散りばめてあるように見える絨毯が敷かれている。部屋は真ん中で区切られており、部屋と部屋との間に扉はないが壁が少し出っ張り別の部屋であるということを教えてくれていた。
本棚がある部屋の壁には透明の扉と木で作られた扉が存在し、机とソファのある部屋には今アリアが入ってきた扉と外に出るための両開きの扉が壁に存在していた。
「 あの。ハーレ?向こうの部屋にある扉の向こうはどうなってるんですか? 」
アリアがそう問いかけると、ハーレは一つ頷くとアリアに説明してくれた。
「 はい。向こうのお部屋は今のアリア様でいうお勉強をするためのお部屋です。今聞かれました扉の向こうは入浴をする部屋。ガラスの扉はテラスとなっております。テラスには後で覗かれるとお宜しいかと。今は早い時間ですのでお風邪を目されては大変ですから。入浴ですが。各部屋には必ず入浴室が存在いたしますが、そのお部屋を使われる方はあまりいらっしゃいません。浴場がまた別でご用意されており、私めに言っていただければご用意させていただきます。そちらの方が広さもありますのでゆっくりとお入りになられますでしょう 」
そこまで言うと突然ハーレが『 あ!そうでした!忘れておりました…お許しください… 』と突然アリアに謝罪の言葉を述べ話を進めてきた。
「 アリア様、もしお部屋を出られるときは出られる理由を侍女である私にお伝えくださいね?行く場所の準備をするのも私の仕事。そして傍付きの侍女は一日中主と共にある者ですので私も一緒に行かせていただきますので 」
「 え!?一緒に来るんですか!? 」
アリアの言葉を聞くなりハーレは『 それが私の役目ですので 』と言いながらアリアにソファに座るように手で促した。
おそるおそるソファに腰かけると、やはり見た目どおりとてもフカフカしかソファはアリアが埋もれてしまうのではないかと思うほど柔らかかった。アリアがソファに腰かけるとハーレが紅茶を注ぎアリアの前の机の上に置いてくれた。
カップは白く美しく絵は薔薇の蔦とまだ蕾の状態の薔薇の絵が刻まれていた。アリアがカップに手を伸ばしおそるおそる口をつけると同時にアリアの目の前のソファの後ろに面した場所にある両開きの扉が鳴った。
ハーレが扉を少し開き外にいる人物が誰なのかを確かめると。一度扉を締めアリアの方に向き直り言った。
「 守護者様方がいらっしゃいました。お通ししてもよろしいですか? 」
と言われ、アリアは緊張まじりに『 は、はい! 』と答えた。
アリアの返事を聞くなりハーレは扉を開けてくれた。最初に入ってきたのは白い髪を肩まで下ろし眼鏡をかけたサクサスだった。いつ見ても美しい人にアリアはその場で立ち上がりじっと見つめてしまった。
その後から赤い髪を短く整えたセイが。そしてアリアより年下だろう黄色い髪に黄色い瞳の少年。そして、少年の後に黒い髪をセイと同じく短く整えたトウイ、水色の髪を腰下まで垂らした最初会った時女性だと思ってしまったルーセイが順番に部屋に入ってきた。
守護者達が部屋に入るとすぐにハーレによって扉が閉じられ。五人はソファと扉の間の空間で横一列になると突然床に片膝を付き頭を垂れた。そして、一番最初に言葉を発したのは真ん中のサクサスだった。
「 お目覚めとお聞きし。我ら守護者五名改めてアリア様にご挨拶申し上げたく参上いたしました 」
そんな五名の行動をハーレは当たり前のように見つめたままアリアの後ろで待機していたが。当の本人であるアリアは驚きでソファの前から移動すると守護者達にアタフタと自分の気持ちを伝えた。
「 み、皆さん!頭を上げて下さい!私は皆さんにそんな事をして欲しくてここにきたわけではありません。どうか、普通に普通に私と接してください 」
そう言いながら微笑むと不安そうな表情を見せているサクサスの後ろから可愛らしい声が上がった。
「 さっすが姫様だね!やっさしいなぁ♪ 」
そう言うと。声の主はそのままアリアの首に腕を回し抱きついたのだった。抱きついてきたのはセイの後に入ってきた黄色い髪の男の子だった。
「 あ、あの…貴方は…? 」
アタフタとしながら少年にそう聞くと。サクサスの方から声がしてきた。
「 ルキ。アリア様に失礼でしょう。いくらアリア様が許してくれたからと言って突然抱きつくなど…それに、まずは自己紹介をなさい。我々はもう済ませてあるのですよ 」
サクサスからそう言われると少年はアリアから離れ『 はーい 』と返事をするとまたもやアリアの目の前で片膝を付き、先程の少年とは思えない真面目な表情で自分のことを話し出した。
「 ご挨拶がおくれ申し訳ありません。お初におめにかかります。ルキ、と申します。黄色の守護者でございます。よろしくお願いいたします 」
先ほどとはうって変わってしまった少年の行動と顔つきにアリアは驚きを隠せずにいたのだった。
何秒かしてからアリアはルキと名乗った少年にある質問をしてみた。
「 あの。ルキ?貴方の…その…年はいくつ? 」
聞かれると跪いたままルキは笑顔で答えてくれた。
「 今年8月で10歳となります。姫様♪ 」
―――――――年下なんだ…守護者とか主人とかじゃなく、お友達になれるかな…―――――――
アリアがそんな事を考えながらルキを見つめていると、ルキの背後で膝まづいていたサクサスが立ち上がった。サクサスが立ち上がると、ルキその他守護者全員も後に続くようにして立ち上がった。立ち上がると、ルキは目を伏せゆっくりと元いた場所に戻った。
ルキが戻った事を確かめるとサクサスはアリアにソファを促し。アリアがソファに腰を下ろしたのを確かめるとアリアの方に向き直って言った。
「 それでは、アリア様。貴方様はまだ城へ来たばかり。来たばかりでお勉強~…というのはあまりにもアリア様が大変でしょうから。お勉強などを始めるのは2週間後とさせていただきます。各教科の教師は我ら守護者一名ずつが担当させていただきます 」
そこまで言われると、アリアはサクサスの言葉に驚きソファから立ち上がった。
「 え!?守護者様方が先生を!? 」
そんなアリアの驚きの言葉にサクサスは一つ頷くと冷静に言葉を続けた。
「 はい。私はマナーを、セイは立ち居振る舞いを、ルキとルーセイはダンスを、音楽の教養もルーセイが、この国の歴史、王族と貴族の間柄などはトウイが担当させていただきます 」
「 大丈夫だよ!姫様☆むずかし~~く考えずに、楽しくやっていこう?難しい事なんか一個もないんだしさ!それに、ダンスなんか特に楽しいよ!?僕、ダンス大好き! 」
サクサスに守護者全員から教えてもらうことを全て聞くと、アリアは目眩いをお起こしそうになってしまったが。ルキの発した言葉で少し元気をもらった。
「 はい!皆さんよろしくお願いします! 」
と、アリアが元気一杯の笑顔で返事を返すと守護者達は何も言わずに右手を胸に当て頭を下げた。
「 アリア様。お話はお済みでしょうか? 」
と、そこで後ろに控えていたはずのハーレがアリアのソファ横でアリアに問いかけてきた。
「 ?はい。おそらく、終わり…ました…が? 」
アリアが不思議そうに返事を返すと、ハーレはそのままアリアに告げた。
「 この後、現国王陛下であらせるルヴァン殿下がアリア様とお話をしたいと謁見の間にてお待ちでございます。お召し物を替えさせていただきたいのですが、守護者様方に退出をしていただいてもよろしいですか? 」
ハーレから言われた言葉をアリアは上手く聞き取れず頭の中でもう一度思い出してみた。何やらとんでもないことを言われた気がしたからだ。
―――――――ハーレは今…『現国王陛下であらせるルヴァン殿下がアリア様とお話をしたいと謁見の間にてお待ちでございます。』と言っていた…現国王…現国王!?――――――
「 げ、現国王様!? 」
考えがまとまると同時にアリアは驚きの声で叫びながらソファから立ち上がっていた。
アリアの周りでは、ハーレだけでなく守護者全員が突然のアリアの叫び声に驚き、目を丸くしてこちらを見つめていた。そんな周りの視線も気にせず、アリアはハーレにアタフタと何やら告げようとしている。それを見てとったハーレはアリアが落ち着くのを黙って待つことにした。いつまでも落ち着けないアリアは、テーブルの上にあったカップを取り紅茶を一気に飲み干した。そんなアリアの一気飲みに守護者のルーセイが何故か微笑みながら胸の前で小さく拍手をする。
紅茶を飲み終えると、ハーレが新しい紅茶を注ぎまたアリアの座っているソファ横に戻った。そんなハーレにアリアは一つ深呼吸をすると、ハーレの目を見つめ言った。
「 国王様が私にお会いになられるなんて、私はただの庶民です。何かの間違いじゃない? 」
そんなアリアの言葉にハーレは首を横に振るとアリアの質問に答えてくれた。
「 いいえ。アリア様は今は立派な貴族の仲間入りとなられております。だって、未来のこの国の女王陛下なのですから。どちらかと言いますと、イヴァン陛下の方がアリア様より下と思われておりますよ。1年後の引見を済ませれば、国民は皆アリア様を『陛下』と呼ぶことになりましょう 」
そんなハーレの言葉にアリアは聞き覚えのない言葉を見つけた。
「 引見? 」
アリアからの問いにハーレは難しい事を聞かれた感じもなくスラスラと答えてくれた。
「 引見とは、城の真ん中上の階にあります、引見のためのテラスに立ち、城の敷地に集まった国民にアリア様がどのような方なのかを見せるための物でございます。そして、引見後は貴族様方をお呼びした舞踏会がございます。アリア様が2週間後から始められるお勉強はそういった舞踏会にでるためのものとお思いください 」
そこまで言うと、ハーレは守護者の方ヘ立ち直り礼をした。
「 と、言うことですので。お召替えがございますので皆様方にはまた後ほどいらしていただきたいのですが 」
そう、笑顔で言われた守護者達は『かしこまりました。それでは、アリア様また後ほど』そうアリアの方ヘ向き直りたったまま胸に片手を当てて礼をすると五人同時に踵を返し部屋を出ていった。
「 守護者様方にはまた後でお会いになることになりますので 」
守護者が部屋を出ていくとすぐ、アリアの方ヘ向き直しハーレはそう静かに告げた。そして、続けて言葉を述べた。
「 さぁ!アリア様。お召替えをいたしましょう! 」
ハーレがそう告げると同時に外で待っていたのか数人の侍女が部屋へ入ってきた。手にはドレスや靴、宝箱のような物まで持っている。
「 ではアリア様。まずは入浴いたしましょう。長旅でお体も汚れてしまわれたことでしょうから。長旅でお疲れかもかもしれませんが、国王様にお会いした後は自由にしていただいて構いませんので 」
「 は、はい! 」
そうハーレに言われるとアリアは部屋に取り付けられた浴室に向かおうとするが、侍女の一人に止められてしまう。
「 姫様。ご入浴のご準備をさせていただきましたのはこちらの浴室ではございません 」
侍女がそう言うと、今度はハーレが口を開いた。
「 アリア様。そちらではなくもう一つの方で準備をさせていただきました。アリア様はお疲れの身、少しでも休まれますようにもう一つの方で準備をさせていただきました。参りましょう 」
「 もう一つって…さっき話してた拾い所…? 」
「 はい 」
ハーレの返事を聞くなり、アリアは城の中をこのような格好で歩いていいのかと悩んでしまうが、侍女が扉の前で待っているのを見て意を決して部屋を後にした。