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長い旅路

お隣の国と言ってもやはり行くのには幾日かかかるものだ。

ガタゴトガタゴトという音を周りに響かせながら馬車はマインド国とミーシュ国の間。まだミーシュ国には入らない道沿いを走っていた。

一緒に乗るのだと思っていた白の守護者サクサスは茶色いたてがみの黄金色の瞳をした馬に乗り馬車の横を歩いていた。

アリアは今までマインド国からミーシュ国側ではない反対方向の海沿いの町に住んでいたので、その町の外に出た事がなく瞳を輝かせながら初めて見る外の世界を堪能していた。

アリアの前ではそんなアリアをどこか優しく、でもどこか真面目な視線で赤の守護者セイが見つめていた。


少ししたところで突然馬車が止まりサクサスが窓の枠に手を置き中にいるアリアとセイに話しかけてきた。

「 今日はこの村で休みましょう。時期に暗くなりますので早いに越したことはありません 」

そう言われ、アリアは空を仰ぎ見てみるともう夕刻と言ってもいいような夕暮れ色に空が染まっていた。これからここらいったい真っ暗になるだろう。それまでに宿を取ろうと言うことなのだ。

アリア達は今、マインド国ミーシュ国の境目にある小さな村に来ていた。三人は今日一晩この村で過ごし明日、ミーシュ国に入り城に向かうのだ。

馬車から降りようとするとセイに手で制されてしまう。そして一言話しかけてきた。

「 アリアはまだ降りませんよう 」

そう言うと一人で馬車を降りると

しばらく辺りをキョロキョロと見回した後馬車の扉を開け外から中に手を差し伸べてきた。

「 アリア。お手を 」

そう言われセイの手に自分のそれをのせると乗った時同様今度は手を繋ぎながら馬車を降りた。

「 ねぇセイ?なんで馬車を降りてから周りを見渡したの?誰か探してたの? 」

馬車から降りるとアリアは先ほど何故セイが馬車から降りてすぐ辺をキョロキョロと見渡していたのかを聞いてみた。

「 あなた様は伝説の我が国の王。あなたが国に来ることで我が国は今まで以上に繁栄することでしょう。ですが、それは他の国にとってたあってはならぬこと、刺客を送って来る者もいるでしょう。そのための守護者です 」

「 ?? 」

セイの言っている言葉の意味がわからず顎に手を当て考え込む。

「 簡単に言いますと。我が国が美しい国になることを他の国の王は反対しています。我が国が繁栄しない…つまりアリア様が死ねば我が国に繁栄は来ないと言うことです。あなたを殺すために殺し屋を送り込んでくるかもしれませんからね。そして我ら守護者はそんなあなたを立派な王に、そして貴方を消そうとする者から守るために存在するのです 」

と、今までどこにいたのかサクサスがわかりやすく説明をしてくれた。

「 でも私は…! 」

「 えぇ。貴方はまだ王ではありません。あなた自身が決めて下さって構いません。それでも、伝説の王として生まれてきたのは貴方だけなのです。いつかきっと貴方は王になりうるでしょう。その可能性をまだ小さい芽のうちに紡ごうとしているのです 」

何かを叫ぶように言おうとしたアリアの言葉をサクサスが理解したかのように続けて言った。

サクサスの言葉に恐ろしさを感じたアリアは薄く涙を流してしまった。

「 大丈夫だアリア。我ら守護者がいつもついて守っている命にかえても 」

そう言いながらセイはアリアの額に口づけをした。突然のことで一瞬何をされたのかわからなかったアリアは数秒固まった後、顔を真っ赤にさせ後ずさった。

「 え…!?え!? 」

アリアが頬を真っ赤に染めながらセイを見つめているとコホンとわざとらしい咳を一回したサクサスにアリアとセイが視線を移した。

「 申し訳ございません。アリア様。突然のことで驚かれたでしょう。我が国ミーシュでは額に口づけをすることは相手に忠誠を送ると言う意味があるのです 」

そんなサクサスの言葉を聞くなりアリアはまだ薄く赤く染まったままの頬を両手で隠し俯いた。

―――――それでもなんだか恥ずかしい…あんな事されたこともない…――――――

と、ここでまたしてもサクサスが話を区切った。

「 さて、少し暗くなって参りましたし。そろそろ寒くもなるでしょう。宿に入りましょう。風邪を引かれては大変です 」

「 宿? 」

どうやらサクサスは馬を降りてすぐ姿を消していたと思っていたら村の宿屋に話を通し金を払っていたようだ。

アリア、セイ、サクサスはその後宿の方にまっすぐ向かい1階で暖かいスープ、パン、チーズを食した。

そしてその後休む部屋へと行くのだが…。

部屋に入ると、アリアは部屋の中を見渡し、ある事に気付いた。部屋の中にはベッドが一つしかなかったのだ。当然だ、アリアは女性、あと二人は男性なのだから隣の部屋で眠るはずだ。

「 皆さんは隣のお部屋に…? 」

それでもアリアは気になり二人に問いかけてみた。

「 我々には部屋はありません。私は部屋の外周りを、セイは部屋の前で警護をいたします 」

「 警護って、さっき言ってた人達から…? 」

「 あぁ 」

次にアリアの問いに答えたのはセイだった。

セイの返事後、先に口を開いたのはサクサスだった。

「 それではアリア様、明日お迎えに上がります。お休みなさいませ 」

先ほど、宿の外で自分が他国の王に狙われている事を知ったアリアはそれ以上何も言うことができず、ただサクサスの言葉に返事を返すことしか今はできなかった…。


カチコチッ、カチコチッ…。

「 ん… 」

布団の中で寝返りをうち扉の方を見つめるアリア。

―――――眠れない…―――――

扉の向こうにはセイがいるはず、どうしようか迷いながらもアリアは布団から這い出て扉の方に向かった。

カチャ。

扉をゆっくり開けると扉の横、アリアが覗いた目の前に壁に背をあずけてセイが床に座りこんでいた。

「 あの…セイ…? 」

おどおどと話かけると、それに気付いたセイがゆっくりとアリアの方に向いてくれた。そして優しく微笑み、アリアに話しかけてきてくれた。

「 アリア、どうかなさいましたか? 」

そんなセイにアリアは微笑み返し、彼の横に座った。

静かな廊下でただ二人、隣どおし沈黙が続いたが、それを最初に破ったのはアリアだった。

「 ねぇ。セイは私を最初見た時から「我主」って言ってたけど。セイは構わないの?私みたいななんの取り柄もないそこらへんにいるようなダメダメな娘が王になるとか言われて、挙句自分の主だなんて言われて 」

そんなアリアの問いにセイは前を見据えたまま静かに答えてくれた。

「 アリア。あなたはご存知ではないかもしれませんが、全ての国には必ず一人、我ミーシュ国より派遣された王に信頼されし者が暮らしているのです。そして、その者は自分の子孫に王より賜った使命を受け継いでゆくのです。その使命とは『必ずや、伝説の王、それを守るべし五人の守護者を見つけ出しわが国へ連れて来い』というものだそうです 」

ゆっくり、そして淡々と語られるセイの話をアリアもまた、前を見据えたまま静かに聞き入っていた。

「 私やサクサス殿を見ればおわかりになるかもしれませんが、守護者となるべき者はその力と同じ色の髪、瞳をしているのです。それは、この世界にはその色の者はたった一人しか存在しないという証でした。ですが、私が産まれたのは国と言われるほど大きくなく、村と呼んだほうが正確な場所だったのです。私はそこで髪や瞳の色が悪魔の落し子だと言われ恐れられ、誰一人として相手にはしてくれませんでした。いつしか私は『自分は本当に悪魔の落し子なのだろうか…?私の力は人を殺すためだけのものなのだろうか…?私を必要としてくれる人はいないのだろうか?』と思っていました 」

セイのその言葉を聞き、以前アリアが海沿いの家で同じ事を考えた事があることを思い出していた。

そんなアリアに気付く事なくセイは話を続けていった。

「 そんなある日でした。森で同じ村の子どもたちからいじめをうけ涙を堪えながらも悔しがっていた私のところに一人の旅人が現れたのです。その旅人は言いました。『お前のその髪、瞳はもしや伝説の守護者か?もしそうならば私と共に来なさい、お前の主となるべき者がいつか現れる時まで、私がお前を鍛えてやろう』と、私はその言葉が嬉しかった。自分の力は人を傷つけるだけで守ことはできない呪われた力なのだと思っていたからこそ、彼のあの言葉はとても嬉しかったのです。そしてその時決めました。もし、もし私の守るべき主が現れたのなら全力でお守りしようと、この命我主に明け渡す覚悟で私は主の忠実なしもべになろう、と 」

最後のセイの言葉でアリアは何かに気付いたかのように勢いよくセイの方に向き直ると、セイもまたアリアの方を向いて微笑んでいた。だが、その瞳はとても悲しそうな瞳をしていた。そして、そのままアリアの手を握るようにして言った。

「 私は、10年間あなた様が現れてくださるのを心待ちにしておりました。我…主… 」

そう言うとセイはアリアの手を上に掲げ、口づけをした。

アリアは頬を真っ赤に染め上げながらも必死にセイに伝える言葉を探した。

「 そ、そんな事言わないでください…命を私に明け渡すだなんて…命はセイのものでしょう!?人にあげちゃだめ!せっかく持って産まれたたった一つの命を人にあげないで!私は!…わ…わたし…は…。セイと…セイと友達になりたいの! 」

セイにそう叫びながら胸の前で手を掲げながらそう訴えると、そんなアリアにセイは驚いたかのように目を見開いていた。

自分が突然叫んでしまった事に恥ずかしさを感じたアリアはそのまま『お、おやすみなさい!』と、それだけを伝えて部屋へ入ってしまった。

静かになった廊下に沈黙が落ちた。


翌朝。

コンコン

「 アリア様、お目覚めでしょうか 」

ゆっくりと戸を開けるとそこには昨日別れた時と何も変わりのないサクサスがいた。

「おはようございます、アリア 」

サクサスの後ろからゆっくりと静かにセイが挨拶をしてきた。

「 おはようございます。二人とも 」

そう言いながら二人を部屋の中へと促すと、二人はアリアに一礼して中へと入ってきた。

そのままサクサスは台所へ行き、セイは大きなテーブルの傍まで行き到着するとそこの窓から外を眺め出した。

アリアは台所へ向かうサクサスを呼び止めた。

「 あの、私がお茶入れますから… 」

そう言いながら台所へ入ろうとするアリアの胸に片手を当て動きを止めると。

「 貴方にそのような事させられませんので、お気になさらず。私におまかせ下さい。美味しいお茶をいれさせていただきます 」

そう言いながら微笑むサクサスを見ているとアリアは何も言えなくなり踵を返しテーブルに向かった。そして傍にある椅子に腰かけた。

しばらくすると台所からお盆にカップを三つ載せてサクサスがやってきた。そして、持ってきたカップをテーブルに並べるとポケットに手を入れ地図を出し机に広げた。

「 今日はここから北東に行きここにある森を通って行きます。城に到着するのは今日の夕刻の予定です 」

サクサスの指す方を目で追っていると確かに大きな森があった。

「 もう少しここから進むとミーシュ国の管轄外になります。我々に何かあったら助けが来るでしょう 」

「 何か…? 」

アリアがそう疑問の声をあげるとサクサスは一つ頷いてから説明を始めた。

「 えぇ。今日、通ろうとしている森は『魔の森』と呼ばれており異形の者がはびこっていると噂されている森です。一度入った者は二度と戻って来ない…と言われております 」

そう言われてしまうと怖くなりアリアが一歩後ろに下がると後ろから誰かに抱きしめられた。

アリアを後ろから抱きしめていたのはセイだった。

「 安心して下さい。アリアは私がお守りいたします 」

そう言うとセイはアリアを上から眺め微笑んだのだった。


一階で朝食を終えた三人はそのまま部屋へは戻らず昨日乗った城の馬車の迎えを待った。

馬車が来ると降りる時同様セイの手を借り馬車に乗り込み後でセイが馬車に乗り込むと扉がしまった。

やはり昨日同様サクサスは馬車の後ろで馬に乗っている。

「 森に入る寸前、カーテンを締めます 」

突然外を見つめていたセイがそう告げてきた。

「 ?どうして? 」

外を眺めたままのセイにそう問うとそのままアリアの方を見向きもせずアリアの問いに答えた。

「 魔の者には色々な者がいるからです。空を飛んで攻撃をするもの、我々守護者が使うような魔法を使って攻撃をする者もいると聞きます。この馬車にはサクサスによって結界が貼られております。カーテンを締めていなかったらその窓から魔の者は入ってくるでしょう。そのためにカーテンを締めるのです 」

セイにそこまで説明されると魔の者がどのような姿をしているのかわからないアリアは恐ろしさに体が震えだしてしまった。アリアは自分を自分で抱きしめるようにして俯いていると突然窓の方から声がした。

「 アリア様。大丈夫ですか? 」

声の主はサクサスだった。サクサスは心配そうにアリアを見つめると突然片手で拳を作り窓から馬車の中へと伸ばしてきた。

拳をアリアの前で止め、手の平が上を向くようにしてから手を開くと中から白く小さい手に乗るほどの大きさの女の子が出てきた。女の子はサクサスの手を離れフワフワとしばらく飛ぶと、アリアの存在に気づき嬉しそうに近づいてきた。

「 わぁ…!サクサス様この子は…? 」

サクサスは馬車の横で馬をかりながら馬車内を見つめていた。

「 その子は癒しと守りの精霊カルバです。我々守護者はそれぞれの瞳にあった魔法を使うことができると説明しましたね 」

そう問われるとアリアはうなづいてみせた。

「 それは我々が精霊と神に愛され選ばれて生まれてきたからなのです。精霊は属性によって姿も異なります。例えば…セイ 」

名を呼ばれると、アリアはセイの方に向きなおった。セイはサクサスに名を呼ばれると仕方なさそうにサクサスの時と同様拳を作り胸の前まで拳を持ってくるとまるで気を集中させるかのように目を閉じると少ししてから拳から赤い炎が立ち上り始めた。そして、そのまま拳を開くとそこには赤く燃え上がった小さい猫がいた。

猫はアリアを見つけると膝に飛び乗りゴロゴロと普通の猫と変わらぬ声を出している。

「 この精霊の名はファイ。このように炎は猫の姿をした精霊なのです。そして、精霊は力なき人間には懐きません 」

サクサスの話した言葉に疑問を持ちアリアはサクサスに聞いてみた。

「 力なき人間? 」

「 えぇ。力なき人間。それは私と貴方以外の人間の事です。お迎えに上がった日ご説明したはずですが。私達守護者は五名います。そして、我々の中心に立つ貴方はその五つの魔法全てを滑る力を持っていると言われております。だから、今その二匹の精霊も貴方に懐いているのでしょう 」

「 そ、そんな…私にそんなものありません…間違いです… 」

「 現に二人が懐いているので貴方には力がありますよ 」

そう微笑みながら言うサクサスにアリアはこれ以上何も言えなかった。

そのようにしてしばらく三人で会話しながら進んでいると馬車が突然止まった。

「 ? 」

アリアが不思議に思い窓から外を見ようとするとサクサスが窓の淵に手を起き馬車の前を真剣な瞳で見つめていた。アリアも恐る恐る覗いてみると、そこには森の入口があった。朝聞いた『魔の森』だろう。外から見るだけでも黒く淀んでいて恐ろしいオーラを醸し出していた。

「 アリア様ご安心をカーテンさえ締めていてくだされば貴方にはなんの被害もないことでしょう。少しの間申し訳ありませんが、中でセイと話でもしていてください 」

そう言いながら馬を走らせよとするサクサスにアリアは先程から気になっていた事を聞いてみた。

「 あの、サクサス様?サクサス様は中に入られなくてよろしいのですか? 」

アリアがそう聞くとサクサスはアリアの頭に手を起き微笑みながら答えてくれた。

「 私は癒しと守りを司る術者。馬車に近づく者が入れば排除するのも私の勤め馬車には御者もおりますので、御者を守るのも私の勤めです。御者がいなくなってしまうと馬車を運転できる者がいなくなってしまいますから 」



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