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現場監督×異世界転生_異世界現場監督は勇者より優秀につき ~チート無しでも5大管理で魔王城を落とします~  作者: もしものべりすと


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第十四章 多種族の協働

リンドル平原。


 見渡す限りの草原が広がる、平坦な土地だった。


 誠司は、馬に乗って平原を横断し、地形を確認した。


 「ここが、防衛線を構築する場所か」


 「はい」同行した軍の測量士が答えた。「魔王軍がこちらに進軍してくるとすれば、このリンドル平原を通るルートが最も近道です。ここに防衛線を築けば、敵の進軍を遅らせることができます」


 「地形は平坦だな。塹壕を掘るには好都合だ」


 「土質は?」


 「調べてみましょう」


 誠司は馬から降り、地面を掘り返してみた。


 黒っぽい土。適度な粘り気がある。掘りやすく、崩れにくい。塹壕工事には理想的な土質だ。


 「よし。この土質なら、問題ない」


 「水はどうですか」


 「水?」


 「塹壕を掘ると、地下水が出てくることがあります。それが作業を妨げる場合があります」


 「なるほど。それも確認しよう」


 誠司は、さらに深く掘ってみた。一メートルほど掘っても、水は出てこない。


 「大丈夫そうだ。地下水位は深い」


 調査は三日間続いた。


 誠司は平原のあちこちを調べ、地形図を作成した。どこに塹壕を掘り、どこに馬防柵を立て、どこに投石機の台座を作るか。その配置を、地形を考慮しながら決定していった。


          *


 調査が終わり、計画の策定に移った。


 誠司は、野営地に戻り、詳細な工程表を作成した。


 「全体を三つのフェーズに分けます」


 誠司は、将軍たちの前で説明した。


 「第一フェーズは、塹壕の掘削。延長は約五キロメートル。深さ二メートル、幅一・五メートル。これを二週間で完成させます」


 「二週間で五キロメートル?」


 「可能です。人員を適切に配置し、作業を分担すれば」


 「第二フェーズは?」


 「馬防柵の設置。塹壕の前方に、木製の柵を設置します。騎兵の突進を阻止するためです。これに一週間」


 「第三フェーズは?」


 「投石機の台座と、後方拠点の整備。塹壕の後方に、投石機を設置するための台座を作ります。また、兵士が休憩するための施設、物資集積所、医療天幕も設置します。これに一週間」


 「合計一ヶ月か」


 「はい。スケジュール通りに進めば、予定通り完成します」


 将軍たちは、誠司の工程表を見つめていた。


 「人員はどれくらい必要だ」


 「最低でも二千人。できれば三千人」


 「三千人……」


 「塹壕の掘削は、人海戦術です。人手が多ければ多いほど、早く終わります」


 「分かった。手配しよう」


 セレスティアが言った。


 「人員は確保します。ただし、問題があります」


 「問題?」


 「人員の構成です」


 セレスティアは、リストを取り出した。


 「現在、動員可能な人員は、人間、ドワーフ、獣人の三種族です。それぞれ、別々の組織から来ています。互いの間には、歴史的な対立もあります」


 「……なるほど」


 誠司は頷いた。


 魔法学院の工事でも、エルフとドワーフの対立があった。しかし、今回はさらに規模が大きい。三つの種族が、一緒に作業をしなければならない。


 「対立を防ぐ仕組みが必要ですね」


 「はい。そこも、鷹野殿にお任せしたいのです」


 「分かりました。考えます」


          *


 工事開始の日。


 リンドル平原には、三千人の作業員が集まった。


 人間が千五百人。ドワーフが八百人。獣人が七百人。


 彼らは、それぞれ固まって立っていた。互いに距離を取り、警戒するような目で見合っている。


 誠司は、高台に登って全員を見渡した。


 「聞いてくれ!」


 誠司の声が、平原に響いた。


 「俺は鷹野誠司。この防衛線構築工事の監督だ。これから一ヶ月間、俺の指示に従ってもらう」


 作業員たちは、黙って誠司を見上げていた。


 「まず、一つ言っておく。この現場では、種族は関係ない。人間もドワーフも獣人も、同じ作業員だ。互いに協力して、一つの目標を達成する。それができない者は、今すぐ帰ってくれ」


 ざわめきが広がった。


 「そんなこと言っても、俺たちドワーフと人間は——」


 「知っている」誠司は遮った。「過去に何があったか、俺は知っている。だが、今は過去のことを言っている場合じゃない。魔王軍が迫っている。防衛線を作らなければ、王国は滅ぶ。人間もドワーフも獣人も、全員が死ぬ。そうなったら、過去の諍いなど、意味がない」


 「……」


 「俺は、お前たちに仲良くなれとは言わない。ただ、仕事をしてくれ。自分の役割を果たしてくれ。それだけでいい。仕事が終われば、好きに喧嘩すればいい」


 作業員たちの間に、苦笑が広がった。


 「さて、作業の分担を説明する」


 誠司は、地図を広げた。


 「塹壕の掘削は、五つの区間に分ける。第一区間から第三区間は、人間が担当する。第四区間は、ドワーフ。第五区間は、獣人」


 「なぜ分けるんだ」


 「効率を上げるためだ。同じ種族同士なら、コミュニケーションが取りやすい。作業もスムーズに進む」


 「じゃあ、結局は種族ごとに分けるのか」


 「作業区間は分ける。しかし、休憩場所と食事場所は共通だ。毎朝の朝礼も、全員参加だ。作業は分けるが、同じチームであることは忘れるな」


 誠司は、最後に付け加えた。


 「それから、毎日夕方に、各区間の責任者が集まって会議を行う。進捗を報告し、問題があれば共有する。この会議には、全ての種族の責任者が参加する。種族間の調整は、この会議で行う」


 「……」


 「質問はあるか」


 しばらく沈黙が続いた。


 「ないようだな。では、作業開始だ」


          *


 工事は、予想通りには進まなかった。


 最初の数日は、順調だった。各区間で塹壕の掘削が始まり、徐々に形が見え始めた。


 しかし、一週間が経った頃から、問題が発生し始めた。


 「監督! 第三区間と第四区間の境界で、揉め事が起きています!」


 報告を受けて駆けつけると、人間とドワーフの作業員が睨み合っていた。


 「どうした」


 「こいつらが、俺たちの区間に侵入してきたんだ!」


 人間の作業員が叫んだ。


 「侵入なんかしていない! こっちの区間の端を掘っていただけだ!」


 ドワーフの作業員が反論した。


 「境界を越えただろう! 俺たちの仕事を奪うつもりか!」


 「仕事を奪う? 馬鹿言うな!」


 誠司は、両者の間に割って入った。


 「落ち着け。両方とも」


 「監督、こいつらが——」


 「聞こえなかったか。落ち着け、と言った」


 誠司の声は、静かだが威圧感があった。


 両者は、渋々と黙った。


 「状況を説明しろ。順番に。まず、人間側から」


 「俺たちは、第三区間の端を掘っていました。そしたら、こいつらが隣から来て、俺たちの掘った溝を繋げようとしたんです」


 「繋げようとした?」


 「はい。俺たちの溝に、こっちの溝を接続しようと。でも、それは俺たちの区間なんです。勝手に入ってくるなって言ったら、喧嘩になりました」


 「分かった。ドワーフ側は?」


 「俺たちは、第四区間の端を掘っていました。そしたら、隣の区間との接続部分に来た。で、人間の溝と繋げようとしたんです。だって、最終的には一本の塹壕になるんでしょう? 繋げなきゃ意味がない」


 「……なるほど」


 誠司は、状況を理解した。


 両者とも、自分の仕事を一生懸命やっていた。しかし、区間の境界での調整ができていなかった。


 「これは、俺のミスだ」


 誠司は言った。


 「俺?」


 「ああ。区間の境界での接続について、事前に説明していなかった。誰がどこまで掘るか、どうやって繋げるか、決めておくべきだった」


 両者は、少し戸惑った顔をした。


 「じゃあ、俺たちが悪いんじゃないんですか」


 「お前たちは悪くない。むしろ、自分の区間を一生懸命掘っていたんだろう。それは良いことだ」


 誠司は、地面にしゃがみ込み、棒で図を描いた。


 「これからは、こうする。各区間の境界から五メートルは、『調整区間』とする。この区間では、両方の種族が協力して作業する」


 「協力……ですか」


 「そうだ。接続部分は、一緒に掘る。どうやって繋げるかは、その場で話し合って決める。それでいいか」


 人間とドワーフの作業員は、顔を見合わせた。


 「……まあ、それなら」


 「いいでしょう」


 「よし。では、早速始めてくれ。今日中に、この部分を繋げろ」


 誠司は、二人の肩を叩いた。


 「頼むぞ」


          *


 その夜の責任者会議で、誠司は「調整区間」のルールを正式に発表した。


 「各区間の境界五メートルは、調整区間とする。この区間では、隣り合う種族が協力して作業する。接続方法は、現場で話し合って決める」


 「それで、うまくいくんですか」


 獣人の責任者が疑問を呈した。


 「うまくいくかどうかは、やってみないと分からない」誠司は正直に答えた。「しかし、やらなければ、もっとうまくいかない。境界での揉め事が続けば、工事全体が遅れる」


 「確かに……」


 「それから、もう一つルールを追加する」


 誠司は、新しい紙を広げた。


 「毎日の作業開始前に、各区間の責任者が集まって、その日の作業内容を確認する。特に、調整区間での作業については、両方の責任者が合意してから開始する」


 「毎朝、確認するんですか」


 「そうだ。面倒かもしれないが、事前に確認しておけば、作業中の揉め事を防げる」


 責任者たちは、顔を見合わせた。


 「……分かりました。やってみましょう」


 「頼む」


 このルールが導入されてから、境界での揉め事は激減した。


 そして、意外な効果も生まれた。


 毎朝の確認作業を通じて、異なる種族の責任者同士が会話を交わすようになった。最初はぎこちなかったが、徐々に打ち解けていった。


 「お前んとこ、掘るの速いな」


 「そっちも、仕上げが丁寧だ」


 互いの仕事を見る機会が増えることで、相手の能力を認めるようになった。


 誠司は、その様子を遠くから見守っていた。


 「これが、チームになるってことだな」


 誠司は呟いた。

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