アイナの日記
今日は、少しだけ落ち着いた一日だった。
船上野外訓練が終わってから、
体も心もずっと緊張していた気がする。
海の匂い、水の冷たさ、命綱の感触。
目を閉じると、まだ波の揺れを思い出す。
それでも――
ちゃんと、学園に帰ってきた。
陸の上で、息ができている。
それだけで、少し救われた。
最近、エルンストとよくベンチで会っている。
あの場所は、不思議だ。
騒がしい学園の中なのに、
そこだけ時間の流れが違うみたいで。
腕を引かれたり、
抱き寄せられたり、
眠ってしまったり。
……無防備すぎる自分に、あとから驚く。
でも、怖くはなかった。
むしろ、安心していた。
それが、いちばん不思議。
ヒロインとエルンストが絡まなくなった。
はっきりそう言えるくらい、見なくなった。
世界が、少しだけ静かになった気がする。
胸の奥に張り付いていたざらざらが、
薄くなったような……そんな感じ。
止まったのかな。
それとも、逸れただけなのかな。
分からない。
でも、今は考えすぎないようにしている。
今日は、エルンストをピクニックに誘った。
学園のお庭で、昼食を一緒に食べるだけ。
それだけなのに、
言葉にする時、すごく勇気がいった。
「ふたりで?」って聞かれて、
「ふたりで」って答えた時、
心臓がうるさかった。
断られなかった。
それだけで、今日は良い日。
明日が楽しみ。
ちゃんと、眠れるといいな。
……ピアス、つけていこうかな。
なくさないように、ちゃんと気をつけて。
今日は、ここまで。




