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モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまで  作者: ChaCha


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ヒロインが見詰める先

胸の奥が、ひり、と痛んだ。


理由は分かっている。

分かっているから、余計に逃げ場がない。


ヒロイン――カレンが、エルンストを見ている。


ただ見ている、というだけじゃない。

視線の置き方、追い方、離し方。

そのすべてが、痛いほど分かってしまう。


(……これ)


それは、かつての自分と同じだった。


授業の合間。

移動教室の回廊。

何気ない一瞬を装って、でも確実に彼を探してしまう視線。


アイナは、無意識に指先を握りしめていた。


どうして?


どうしてヒロインは、

隣にベルンハルトがいるのに、

エルンストを探すの?


魔術科と治癒魔術科、騎士科。

建物は並び、回廊は幾重にも交わる。


交わらない方が難しいくらいなのに、

それでも――視線は、選ばれる。


合同訓練が始まってから、特にだ。


汗を流す騎士たち。

張り詰めた空気。

動きの中で浮き彫りになる存在感。


その中心に、いつもエルンストがいる。


(……やめて)


心の中で、誰にも聞こえない声が漏れた。


今まで、アイナは応援していた。

桃色の恋。

銀色の隣。


ヒロインとベルンハルト。

正規ルート。

物語として、美しいはずの組み合わせ。


応援できていた。

本当に。


――相手が、エルンストじゃなかったから。


訓練所から、ふと視線を逸らした先。

魔術科の教室の扉近く。


そこに、ヒロインがいた。


そして。


(……また、見てる)


エルンストを。


心臓が、どくんと鳴った。


身体が、ほんの一瞬で冷える。

背中を、ぞわりと何かが這い上がる。


奪われるかもしれない。


そんな可能性を、今まで本気で考えたことはなかった。

考えないようにしていた。


乾いた笑いが、喉の奥で引っかかる。


――わかってる。


私たちは、恋人ですらない。


告白は、されていない。

言葉にした約束も、形も、ない。


それでも。


それでも、あの距離。

あの触れ方。

あの視線。


(……それでも、確証は、ない)


胸が、ぎゅうっと締めつけられる。

息が、浅くなる。


自分が何を怖がっているのか、分かっている。


ヒロインが、彼を好きになること?

違う。


彼が、選ばれること?


――違う。


「選ばれなかった」と、突きつけられる未来だ。


歩き出そうとして、足が一瞬もつれた。

何事もなかったように、姿勢を整える。


笑顔を貼り付ける。


大丈夫。

大丈夫だ。


そう言い聞かせながら、アイナは回廊を進む。


けれど、胸の奥に残った痛みだけは、

どうしても、消えてくれなかった。


恋をしているのは、私だけじゃない。


その事実が、

今までで一番、重くのしかかっていた。



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