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霧隠れの温泉と結界の根源

第一節:存在の根源への競走

市立図書館の地下で虚空の支配者の執行者を退けたレンとカイは、休む間もなく、次の標的へと急いでいた。執行者が残した手がかりは、この街の地下深くにある、純粋な霊的エネルギーの集積点、すなわち**『アンカー』。その場所は、古くから霊験あらたかとして知られる霧隠れの温泉地きりがくれのおんせんち**だった。

「この温泉は、ただの観光地じゃない」カイは、車を走らせながら解析結果を伝えた。「地質学的に見ても異常なエネルギー放出地帯だ。地球規模で見ても貴重な、**自然発生的な『存在そんざい』のネクサス(結節点)**だ。虚空の支配者がこれを喰らえば、この一帯の存在の法則が崩壊する」

「奴らは、世界を崩壊させるために、まずその基礎を破壊しようとしているんだ」レンは、守護の瞳を起動させた。瞳は、目の前の深い霧の向こうにある温泉地へと、一本の眩い光の糸を伸ばしていた。

温泉地は、その名の通り、深い霧に覆われ、幻想的な雰囲気に包まれていた。古びた旅館と、岩間から湧き出る湯気が、世界との境界線を曖昧にしている。

第二節:温泉の精霊と試練

二人が湯気の立ち込める源泉の中心部へと辿り着くと、そこには人影はなかったが、強大な霊的圧力を感じた。源泉のそばに立つ、巨大な岩の上に、水と湯気で編まれたような、美しい女性の姿が具現化した。

「立ちなさい、異分子たち」水と湯気の精霊、ミズハ(水葉)は、澄んだ声で言った。「この地は、いにしえより、世界の存在の根源を支える場所。あなたの瞳は強大だが、その力は混沌の匂いを纏っている。この聖域を乱すのなら、容赦はしない」

ミズハは、源泉の湯を操り、無数の熱湯の槍をレンたちへと放ってきた。それは、支配や記憶操作の魔術とは違い、純粋な大地の霊力だった。

「違う!僕たちは敵じゃない!」レンは叫んだ。

レンは、守護の瞳の力で、ミズハが操る水と湯気の存在の糸を『視る』。その糸は、優しく、強く、自然の法則に従っている。レンは、この糸を切断することは、自然を破壊することに繋がると悟った。

レンは、守護の瞳のエネルギーを、ミズハの糸へと同調ハーモナイズさせた。レンのエネルギーは、破壊の意図がないことを示し、ミズハの糸と共鳴し、その力を補強した。

ミズハの表情がわずかに和らいだ。

「...なるほど。あなたは、破壊者ではない。守護者。初代の糸を断つ者の血を継ぐ者よ。急ぎなさい。虚空の支配者が、既にネクサス・コアを狙っている」

ミズハは、湯の槍を収め、霧の中に消えていった。

第三節:虚空の執行者の再来とアンカーの危機

ミズハの警告は、すぐさま現実となった。

温泉全体の湯気が急激に冷え込み、湧き出ていたはずの源泉が、ゴボッという音と共に、黒い虚空の波紋へと変貌し始めた。ネクサス・コア(結節点の核)が、地表へと姿を現したのだ。

虚空の波紋の中から、以前レンが退けた虚空の執行者と、さらに巨大で、全身が時間の反転した光で構成された、エントロピーの先触れと呼ぶべき第二の存在が出現した。

『これが、アンカー...純粋な存在のエネルギー源...喰らい尽くす。そして、この次元を無へと帰す』

先触れは、レンの意識に、轟音のようなテレパシーを送りつけてきた。

彼らの目的は、温泉の湧き出す岩盤の奥深くにある、純粋な生命力の結晶であるネクサス・コアを完全に崩壊させることだ。コアが崩壊すれば、この街の現実の法則は、永久に虚空へと傾く。

「レン、奴らの攻撃がコアに達するぞ!」カイは、急いで解析装置を設置し、コアを覆う岩盤の、最も薄い部分を特定した。

第四節:存在の結界と共同作業

「僕たちは、このネクサス・コアのエネルギーを使い、虚空の支配者を封じるための**結界バリア**を織らなければならない」レンは決意を込めて言った。

「どうやる?」

「僕の守護の瞳の力を、コアに流れ込んでいる自然のエネルギーに逆流させ、そのエネルギーで、次元の裂け目を縫い合わせるんだ!ミズハの力が、その糸を繋ぐ手助けをしてくれるはずだ!」

レンは守護の瞳をコアに向け、全身の存在のエネルギーを集中させた。同時に、ミズハが操る源泉の湯気が、レンの周囲を巡り、純粋な自然の霊力をレンの瞳へと供給し始めた。

「カイ!僕がエネルギーを注ぐ点と、虚空の執行者が集中して崩壊させようとしている点を、正確に指示してくれ!」

「了解!一点集中だ!コアの右斜め上!今、奴らがエントロピーを集中させている!」

レンは、カイの指示と、ミズハの霊力を受け、守護の瞳の力で、ネクサス・コアの周囲に、眩い黄金色の**「存在の結界アサーション・シールド」**を織り始めた。

執行者と先触れは、レンの行動に気づき、激しく抵抗した。彼らは、空間をねじ曲げ、エントロピーの奔流を結界へと叩きつけた。

『やめろ!お前の存在は...不協和音だ!消えろ!』

しかし、レンの織りなす結界は、ミズハの純粋な生命力と、レン自身の強靭な自由意志に裏打ちされており、強固だった。レンは、最後に残ったエネルギー全てを結界へと注ぎ込み、結界を完成させた。

グワァァァァァァ!!!

強大な光と共に、結界はネクサス・コアの周囲を完全に包み込み、執行者と先触れは、結界に弾き飛ばされた。彼らは、恐ろしいテレポートな叫びを上げながら、収縮していく虚空の波紋の中へと押し戻され、次元の裂け目は完全に閉じた。

第五節:新たな管理者の出現

レンは、結界の維持によって、その場に倒れ込んだ。守護の瞳は、静かに光を放っている。ネクサス・コアは守られた。

しかし、その勝利の直後、霧隠れの温泉地に、静かなる脅威が現れた。

轟音を立てて山道を登ってきた複数の黒い車から、数十人の黒服の監視協会エージェントが、温泉地を完全に取り囲んだ。先頭に立っていたのは、アユミだったが、彼女の隣には、以前よりも遥かに厳格で、冷たい目をした、協会の最高幹部らしき男が立っていた。

「神崎レン。あなたは、またしても私たちの予測を超え、次元の扉を閉じました」最高幹部は、感情のない声で言った。「しかし、あなたの力は、制御不能な混沌です。協会の計画外の力が、これ以上、このネクサスを汚染することは許されない」

アユミは、レンに視線を送り、静かに首を振った。協会の本隊は、レンを英雄ではなく、危険な変異種として認識している。

「確保せよ。守護の瞳を、協会の管理下に置く」最高幹部の命令が、霧の中に響き渡った。

レンは倒れたまま、抵抗する力は残っていなかった。彼の守護の瞳は、今、彼を最も危険な存在として狙う、味方の脅威に直面していた。

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