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初代の遺言と影の魔術師

第一節:初代の糸を断つ者

レンが二つの『銀の目』のペンダントを合わせた瞬間、時計台の機械室は、時空を超越した強大な魔力の光に包まれた。耳をつんざくようなノイズの中で、レンの目の前に、光で編まれた老人の姿が具現化した。

『よくぞ来た、継ぐ者よ。時は満ちた...』

その声は、レンの意識の奥深くに直接響いた。レンは、これが初代の『糸を断つ者』、すなわち天宮学園とシオン機構の監視システムを設計した創設者の霊的残留思念だと悟った。

「あなたこそが...」レンは口を開いた。

『聞け、神崎レン。我々「糸を断つ者」は、この国に潜む巨大な魔術的脅威、シオンのような、生命を糧とするシステムを監視し、均衡を保つために存在した。私はこの力を二つに分かち、一つを天宮学園の守護、もう一つを世俗での監視の鍵とした。力が一つに集まれば、その所有者は世界を支配するに足る。故に、私は力を分断し、継承者にしか再統合させぬよう、封印した』

老人の像は、レンの両手のペンダントを指した。

『その二つの瞳は、単なる魔力の鍵ではない。それは、多次元的な精神の結びつきと魔術的なエネルギーの流れを観測し、そして切断するための道具だ。お前は生まれつき、その能力を持っている。だからこそ、お前は狂っていると誤解され、そして、お前こそが選ばれたのだ』

「シオンは...なぜ生まれたのですか?」

『シオンは、この国に古代から宿る**「支配の根」が、人の叡智と結びついて生まれたもの。それを滅ぼすには、ただ破壊するのではなく、その根源を断ち、均衡を再構築する必要がある。お前はその第一歩を成し遂げた。しかし、力が一つになった今、お前は全ての魔術的勢力から狙われる標的となった。特に、シオンの原理を悪用しようとする『クロックワークの継承者』**にな』

老人の像は、レンに最後の警告を告げ、光の粒子となって霧散した。レンの脳裏には、二つのペンダントがもたらす、広大で複雑な世界の魔術的座標が刻み込まれた。

第二節:時計台の崩壊と監視協会の介入

幻影が消えると、レンはすぐに現実へと引き戻された。

真田サナダは、祭壇の隅に吹き飛ばされ、血を流していたが、まだ意識があった。彼は恨めしげな目でレンを睨みつけ、かすれた声で叫んだ。

「その力を...その力を私によこせ!私は、クロックワークの継承者に仕える者だ!お前などに、その価値はない!」

真田は最後の力を振り絞り、指を振った。時計台の巨大な銅製の歯車が、**ギギギ...**という異音を立てて逆回転を始めた。

「道連れにしてやる!この時計台は、私が崩す!」

時計台全体が激しく揺れ始めた。レンは、真田の精神に繋がる最後の支配の糸を、容赦なく断ち切った。真田は、糸を切られたことで完全に意識を失い、崩れ落ちた。

「カイ!」

「わかってる!脱出だ!」カイは真田を無視し、崩れ始めた螺旋階段を指さした。

レンは二つのペンダントを握りしめ、カイと共に、ガラガラと音を立てて崩れ落ちる階段を滑り降りた。彼らが時計台の地上階に飛び出した瞬間、背後で巨大な鐘が轟音と共に床に落下し、時計台の半分が塵と化して崩壊した。

二人が息をつく間もなく、崩壊した時計台の周囲を、複数の黒い影が取り囲んだ。彼らは、黒いスーツに身を包んだ、訓練されたエージェントたちだ。

そして、その中心に立っていたのは、アユミだった。彼女の顔には、冷徹な怒りが浮かんでいた。

「神崎レン。あなたは、監視協会の警告を無視し、二つの目を再統合させた。あなたは今、この世界にとって、最も危険な存在となった」

「あなたたちは、真田を止めようともしなかった」レンはペンダントを握りしめて言った。

「私たちの目的は、秩序を維持すること。真田のような過激派を排除することも必要だが、何よりも二つの目の回収と管理が最優先だった。あなたは、協会の計画を全て台無しにした」アユミは淡々と言った。

アユミの指示で、エージェントたちが崩壊した瓦礫の中から、気絶した真田を引きずり出した。

「真田は、協会の情報源として確保する。しかし、あなたたちに手出しはしない。初代の糸を断つ者の能力を完全に覚醒させたあなたに、ここで無駄な戦闘をする必要はない」

アユミはレンを厳しい目で見つめた。

「だが、覚えておきなさい。我々は、あなたが次に動く瞬間を監視している。そして、クロックワークの継承者も、あなたが生きていることを知ったわ。これは、一時的な休戦に過ぎない」

監視協会のエージェントたちは、真田を連れ、静かに霧の中へと姿を消した。

第四節:継承者からの挑戦状

レンとカイは、夜が明け始めた町の片隅で、全てを整理していた。

「初代の糸を断つ者...つまり、レン、君の祖母は、その力の存在を知っていたんだな。ペンダントを君に託したのも、この時のためか」カイは興奮気味に言った。

レンは両手のペンダントを一つに繋げた。二つの目は、今や互いに融合し、一つの強力な、光を放つ**「統一された銀のユニファイド・アイ」**となっていた。そのペンダントを身につけると、レンの『視る力』は、町の地下に流れる魔力の経路まで感知できるほどに強化された。

「僕たちの目的は、均衡の再構築だ。そして、次の敵はクロックワークの継承者」レンは言った。「真田が、その継承者に仕えていた。継承者は、シオンの復活を目論んでいる」

レンは、初代の遺言によって脳裏に刻まれた、古代語の解読を始めた。それは、初代がシオンを封印した時の記録だった。

『クロックワークの継承者は、統一された瞳を以て、五つの塔にてシオン機構を再構築せんとする。その塔は、魔力の奔流の交差点、古代の結界の柱なり』

「五つの塔...」カイが呟いた。「この継承者は、シオンを一つではなく、五つの拠点で同時に復活させようとしているのか?」

レンは首を振った。「違う。この『塔』は、地理的な場所じゃない。初代がこの国に敷いた、魔術的な防御システムの柱だ。五大結界、あるいは五大魔力源の交差点。継承者は、そこを一つずつ掌握し、シオンのシステムを再構築するつもりだ」

レンは窓の外を見た。統一された銀の瞳は、一つの強い魔力の光の筋を感知していた。それは、彼らが今いる桜ヶ丘町から、北東の遥か遠い方向へと伸びていた。

「次の場所が決まった。僕たちは、継承者より先に、五つの塔の一つを見つけなければならない」

レンは、新たな戦いの始まりを感じていた。普通の生活は、もう彼には訪れない。彼は、統一された銀の瞳を持つ、『糸を断つ者』として、この世界を旅しなければならないのだ。

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